タイムリーな話題から、カルチャー、さらには社会問題まで、さまざまなテーマについて、リアルな10代の声を聞くシリーズ「10代リアルVOICE」。
今回のテーマは「倍速視聴」。メディアなどで、作品の再生スピードを1.5倍や2倍にしたり、シーンを10秒スキップしたりする「倍速視聴」をする若者が増えていると言われていますが、実際のところはどうなのでしょうか。そこで、6人のティーンに、視聴スタイルの実態について聞いてみました。
1. 向井涼一さん「アニメ作品以外は、効率重視で2倍速で見ています」
「アニメ作品以外を見るときは、基本的に2倍速ですね。僕自身が早口というのもありますが、そのほうがテンポがいいし、時間短縮のためにも、早く聞いています。
でもアニメは娯楽だし、僕にとっての楽しみでもあるので、通常の速度でゆっくり見ています。だけど、ニュースなどの情報をインプットするなら、2倍速のほうが便利だと思います」
2. SERUCHOCOさん「日本語の番組は基本的に倍速視聴で見ています」
「普段カナダにいることもあって、日本語の番組を見るときは、基本的に2倍速で見ています。そのほうが短時間で楽しめるから。私自身はあんまり見ないけど、ドッキリなどの番組は倍速視聴はしないほうがいい気がしますが……。いつも見ている英語の番組は、倍速だとまだまだ理解が追いつかないので、普通の速度で見てます。
学校が休講だった時期の授業動画や、YouTubeでみる学習動画も、倍速で見ます。最初に倍速で見て、内容をざっくり把握して、わからなかったところだけ戻って普通の速度にします。なぜかって、やっぱり効率を求めているからだと思います」
3. 中村眞大さん「最近、倍速視聴の便利さに気づきました」
「実は、最近まで倍速視聴という行為を軽蔑していました。というのも、僕は映像をつくる活動をしているので、心理的に倍速視聴という行為をあまり良いものとして捉えていなかったのです。
しかし、最近どうしても忙しくなってしまい、倍速視聴を始めました。そうしたら、とても効率よく情報を得られるので、どうしてもっと早く始めなかったんだろうと思って。頻繁にするようになってしまいました。食わず嫌いで避けていたものを食べておいしかったときのような気持ちですね。
個人的には、YouTubeの動画、特にトークがメインとなる動画は、基本的に倍速で観ています。バラエティ番組でもその機能を使うことがあります。ですが、映画やドラマ、音楽系の動画は、倍速視聴しません。じっくり味わって観ています」
4. 住井奏太さん「授業を受けるときは、いつも倍速視聴しています」
「大学の授業を受けるときは、いつも倍速視聴です。逆に、授業以外ではほとんど使いません。大学の教授の話すスピードがかなり遅く、ひとつの授業を聞くだけで90分間を使うのは、もったいないからです。また倍速で聞いても、問題なく理解できるし、課題に取り組むことができているので、いまのところ倍速にするデメリットはありません。
バラエティを見るときに倍速を使わないのは、間が台無しになってしまって、おもしろさが激減すると思うからです。情報を得ることが目的のときは倍速、楽しむことが目的のときは普通に再生しています」
5. ユウカさん「感情移入しづらいし、スピードが変わるだけでまったく違う作品になってしまう気がします」
「自分自身は倍速で見ようとは思いませんが、親はバラエティやニュースを倍速にして見ていますね。一緒に見ているときは気にならないけど、自分が選んだ動画は、どんなものでも倍速にしたいとは思いません。
再生速度を変えると、例えばドラマだと感情移入しづらいし、内容は一緒だとしても、好きだなと思う映像の流れ方や音楽、言葉のテンポがまったく違うものに感じるからです。だから私はやっぱり作られた速度で見たいし、本来感じることができるはずの感情を見逃したくないですね」
6. 林太陽さん「シーンに込められている思いがわかるからこそ、倍速視聴はできません」
「僕は映像をつくっていて、それこそワンシーンごとに気持ちを込めて撮影・編集をしてひとつの作品に仕上げています。どんなシーンにも制作者の気持ちが詰まっていると思うので、倍速視聴という行為は、制作者に対して非常にリスペクトを欠く行為だと考えています。だから、自分自身では倍速で映像をみることはないし、これからもないと思います」
インプットを目的とした授業やニュースを倍速視聴するという声は多く上がりましたが、映画やアニメ、ドラマなどは通常の速度で見るという人が多いよう。コンテンツの内容や見る目的に応じて速度を調整して、限られた時間を、適正な時間をかけて使いたいという気持が強いようです。
Photo:Eri Miura
Text:Ayuka Moriya