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アート好きでも成績は1。ティーンが求める美術の授業は“アートを作らない”授業【TEEN’S CHIT CHAT #18】

アート好きでも成績は1。ティーンが求める美術の授業は“アートを作らない”授業【TEEN’S CHIT CHAT #18】

清澄白河にある東京都現代美術館で、11月5日まで開催中の「あ、共感とかじゃなくて。」で、おしゃべりに興じているのは、アート好きなティーン・溝口元太さん(15)望月春希さん(16)、キキさん(15)です。

前編では「アートがもっと身近になってほしい」というビジョンを語り合った3人。そのおしゃべりは、普段からアートに触れている現役高校生ならではの「美術の授業」に関する話に展開していきます。

今回のテーマ:「学校の美術の授業、ぶっちゃけどう?」

あ、共感とかじゃなくて。」展(東京都現代美術館)にて。

キキ:そもそも、ふたりがアート好きになるきっかけって、何だった?

元太:家族の影響が大きいかな。初めての家族旅行が直島で。そこで美術館めぐりをしたんだよね。当時はアートを見に行っているっていう感覚は全然なかったんだけど、生活の近いところにアートがあって、必然的に好きになっていった感じがする。

春希:素敵だね! 僕の場合、生活のなかから感じ取っていったら、それがアートになったっていう感じかも。

元太:めっちゃわかる。風の音が心地良いBGMになったり。その感覚はすごく大切だよね。

春希:水や草、空気に触れて暮らしていったら、自分なりのアートの価値観が自然とできていった!

キキ:僕も、車が走る音だったり、鳥や虫の声が、実はアートを楽しむうえで大事な要素なんじゃないかって思っていて。

音楽の話になるんだけど、僕はイヤフォンのノイズキャンセリングの機能があんまり好きじゃないんだよね。自分と音楽の間にある生活をカットしちゃうっていうのは、 その音楽に近づくっていうより、むしろ遠くなっちゃう気がして、すごくもったいないなって。

元太:本当にそうだね。美術館は、誰かがいいなと思ったものを見せてもらえる場所だけど、日常のシーンだって、自分と対話しながら、自分がいいと思えるものを集められる。感覚は違うんだけど、同じアートだと思うんだよね。

キキ:うんうん。身近な環境っていうレイヤーを通して作品を見ると、美術館に行かなくても頭の中にいいものがインプットされていく気がする。

春希:日常だとインプットしているって意識があまりないけど、実は生活のすべてが表現につながっているんだよね。

美術の成績、どうだった?

元太:でも正直、学校で受ける美術の授業は、アートを感じることができてなくて……みんなはどう?

春希:僕は、ルールやテーマに縛られて表現していくのが我慢できなくて、授業ではお題と関係ない自分の顔ばっかり描いてた。だから評価は1か2(笑)。

元太:僕は美術部なんだけど、正直なところ、貸しアトリエを無料で借りれてラッキーって気持ちで所属していて。割り切ってる部分があるかな。

キキ:美術以外の時間もずっと落書きばっかりしていた人間だから、「絵を描いてても怒られない時間」ってくらいしか思ってなかった。あ、でも1回、「なんでこんな素晴らしい絵が、評価5じゃないんですか?」って先生に言ったことある(笑)。

元太:すごいね(笑)。ほとんどの人って、評価のためにとりあえず提出できればいいって考えだから、だいたい流れ作業みたいになるから……。

キキ:規律を守ろうとする人が大半だよね。僕の場合、直談判した結果「現代美術を取り込まないでほしい」って言われた(笑)。でも、そこで自分がつくるものを変えたらアートじゃなくなるから、とりあえず評価が低い理由だけを理解して、結局はそのまま提出したな。

春希:うちも。自分のことしか考えてなかったから、評価はあんまり気にしてなかった(笑)。認めてもらうまでは「これがアートなんで」って貫き通して行くしかないよね。

元太:僕は、小学校のころに、「〇〇ちゃんの絵はすごくきれいでしょ? ああいうふうに描くんだよ」と言われたことがあって。そのときにハッとしたというか、ここではきれいに描くことが求められているんだって気づいて。

ふたりとはちょっと違うけど、そこから、課せられた制限の中でどれだけいいものをつくれるかっていう、ある種ゲームをやっている感覚で、美術の時間は“乗り越える”ようになったな

キキ:じゃあ、どっちにしろ目いっぱい遊べる時間ではない?

元太:うん。楽しい時間、ではないかも。

美術の授業でもっとディスカッションしたい

キキ:どうしたら、もっと楽しくて有意義な授業になるのかな。

元太:制作に入る前に、ディスカッションとか、ディベートとかができたら、最高じゃない?

春希:わかる! 「あなたはどういう子なの?」とか「何が好きなの?」とか、自己紹介の時間を設けてもらえたら、制作するのも楽だったと思う。

元太:そもそも自分の中にアイデアがないのに、さあ1時間で制作してくださいって放り投げるのは早すぎるんだよね。

とりあえず、いろいろなものに触れるための時間を美術の時間でつくってほしい。美術館に訪れる機会をもっと増やしたり、アートにまつわる映像を見たりしたい。

キキ:人間の頭は、中学と高校の間がいちばん吸収できるって前に聞いたことがあって。いまは何にでもなれる状態だからこそ、ゴールを決めずにいろいろなものを見て触れて学びたい。

元太:そうだね。特に、公立の中学だったら偏差値関係なく地域の子が集まるから、それぞれの生活とか考えを知る機会がもっとつくれたら、アートにもいい影響がありそう。

キキ:あとは美術の時間だからテーマは一応あるけど、そこから外れてもOKみたいにしたら、いろんな人の才能が発掘されそう。学校だから評価をしないわけにはいかないけど、評価がすべてじゃないって、先生が伝えてくれたらなぁ。

春希:いいねそれ! そしたら、自分の顔ばっかり描いてても怒られないかな(笑)。

「あ、共感とかじゃなくて。」開催概要

会期:2023年7月15日(土)~11月5日(日)
休館日:月曜日(7/17、9/18、10/9は開館)、7/18、9/19、10/10
開館時間:10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
会場:東京都現代美術館 企画展示室 B2F
観覧料:一般1300 円 (1040円)/ 大学生・専門学校生・65 歳以上900円 (720円) / 中高生500円 (400円) /小学生以下無料
※( )内は20名以上の団体料金

Photo:Kaori Someya
Text:Sayuri Otobe

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Atsuko Arahata

エディター

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