「気になる10代名鑑」の256人目は、武田智生さん(17)。中学の授業で学んだ児童労働に衝撃を受け、学校中を巻き込んだプロジェクトを立ち上げるなど、早くからさまざまな活動を行ってきました。「学校に通う」という常識を疑い、16歳で高卒認定資格を取得するなど、自分の道を切り開いてきた武田さんに、過去と未来について詳しく聞いてみました。
武田智生を知る5つの質問
Q1. これまで、どんな活動をしきましたか?
「中学1年生のときに、アフリカの児童労働をテーマにした『チョコプロジェクト(チョコプロ)』を立ち上げました。
児童労働を扱うNGOを訪問して勉強したり、学園祭でポスターを貼り出して発信したり、駅で募金活動をしたり。児童労働のリアルを知ろうということで、カカオ産地での児童労働を収めたドキュメンタリー『バレンタイン一揆』を上映したこともあります。バレンタインの時期には、フェアトレードのチョコレートも販売したことも。学生っぽいでしょ(笑)。
そうして地道に活動していくうちに、学校内のみんなが児童労働問題を認識しているくらいのレベルになりました。でも、何かを解決できている感覚にはならなくて……。学校内の閉ざされた活動ではなく、社会にインパクトを与えたいと思って、横浜のクイーンズスクエアで『中高生×未来のためのSDGsマーケット』という啓蒙イベントを行いました。近い活動をしている学校とご縁があったので、一緒にクラウドファンディングで65万円集めて、ゼロから創り上げました。中学2年生の終わりごろの話です。
チョコプロでの経験は、自分の土台になっていると感じます」
中1の時に、思い立って立ち上げた児童労働PJ「チョコプロ」。
今でも、仲間が続けてくれてて、本当に感謝!#チョコレートの裏側 pic.twitter.com/G3rCVGd7Zo— Tomoki Takeda@学校にいかないという選択 (@tomoki_takeda) February 6, 2022
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「地理の授業でアフリカの児童労働問題を知ったこと。
自分たちが食べているチョコレートを作っているのは、実は小学生や中学生なんだよっていう、わかりやすい切り口から授業が始まって。狭かった自分の世界が、一気にグワァっと広がった瞬間でした。ただひたすらに衝撃で。
いろいろな社会問題を学んだんですけど、児童労働は特に身近に感じたんです。『何かしたい!』と思い立って、学年のみんなに声を掛けたら、40人くらいの生徒が集まってくれて。児童労働の真実って、それだけ、みんなにとっても衝撃的だったんだと思います」
Q3. いまはどんな活動をしていますか?
「チョコプロを立ち上げたあと、中学校に通うのをやめたんです。活動を通して、いろいろな大人と話しをする中で、ビジョンを語る前にしっかりとした土台を作らなければならない、そのためには教養と英語力が足りないって感じたんです。がっつり勉強したいなと。
そう思ったときに、学校で勉強する以外の選択肢もあるんじゃないかと思って、中学校に通うことをやめて。そのほうが効率がいいし、好きなカリキュラムを自分のペースで進められるって思ったんです。
でも、やっぱりモチベーションを保つのが難しくて。だから目標をつくろうと思って、高卒認定資格を受験資格最年少である高校1年生で取ることを目標に、家でひたすら勉強しました。誰かに『お前、不登校だろ』って言われたときに、『いや、もう高校卒業したし』って言いたかったのもあるかな(笑)。それから『次は英語だな』と思って、去年の夏から1年間、アメリカに留学ていしました。
ここからの1年間は、中2のときに足りないと感じ、ここ2年間で学習した教養と英語を武器に、社会に出て試したいです。面白いことに触れてみたり、働いてみたり。いまはブランディングを行う会社でインターンをしたり、全世界210か国の国旗を買って、各国の人にサインをしてもらう『フラッグプロジェクト』も始めました」
高卒認定試験合格しました!
最年少!?!?(16歳からしか受けられないので)これで、いくらでも、グレれる〜
(今は、しっかりアメリカの学校へ通っています笑)支えてくれてありがとうございました!家族、友達、先生! pic.twitter.com/Eaiuqfcdcx
— Tomoki Takeda@学校にいかないという選択 (@tomoki_takeda) January 25, 2022
Q4. 悩みや壁にぶつかることはありましたか?
「日々何かをしていないと、どこまででも落ちていってしまう不安を感じてることがあります。
よく『学校に行ってなくて楽しそうだね』って言われるんですけど、実際はそんなに簡単なものじゃなくて。何をするのも自由だから、どこまでも落ちることができるし、逆にどこまでも上がれる状況にあるんです。自分でプランを立てて、日々何かをしないと危ないっていう不安があるのは、この生活をやめたいと思うほど、つらいです。
それでもこの生き方を続ける原動力は、友達や家族のサポートによるところが大きいです。何かあっても、助けてくれるだろうという安心感。これがないと続けられなかったと思う。
それと、『一度外れた以上、戻れない』っていう感覚もあるかな。中1でプロジェクトを立ち上げて、学校に通うことをやめて……。メディアに取り上げられたこともあって、会う人会う人から『期待してるよ』とか『日本をよろしく』って言ってもらって。『ムリムリムリ』『重たい』って思っちゃう部分がある一方で、そんな期待も、自分にとっては原動力になっています」
Q5. 今後の展望は?
「大学に行くなら、海外でビジネスを学びたいと思っています。チョコプロを通じて、結局のところ、世の中を動かすのはビジネスマーケットであり、資本主義だって痛感したんです。
チョコプロでは、消費行動までは変えられなかったことがすごく悔しくて。スーパーに100円のチョコと350円のチョコがあったとき、やっぱりみんな100円のチョコを買いますよね。自分だってそうします。
理想はいくらでも語れるけど、それはもう、自分たちにはどうしようもない範囲。だったら、資本主義社会であること受け入れて、その中でどう生きていくか考えたいんです。内側から変えていくために、まずは社会の仕組みを理解したいと思っています。
『将来、こういう職に就きたい!』『こういうことをやりたい!』っていう具体的なビジョンはないです。昔から人を喜ばせることが好きで、ずっとそれをしていたい。これ以外に生きるモチベーションがないって思うくらいです。それを実現するためには、手段にこだわりはありません」
武田智生のプロフィール
年齢:17歳
出身地:神奈川県
趣味:ピアノ
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Photo:Eri Miura
Text:Risa Naito