
「気になる10代名鑑」の1021人目は、外所もみじさん。起立性調節障害や不登校といった自身の経験を原点に、子どもたちが安心して学べる環境づくりを目指しています。行政への働きかけや当事者支援など多方面で活動中。その活動の背景や込めた想いについて、くわしく話を聞いてみました。
外所 もみじを知る5つの質問
Q1.いま、いちばん力を入れている活動は?
「起立性調節障害(OD)や不登校の子どもたちが学びやすい環境を整備するための活動をしています。
おもな活動は、群馬県政に対する政策提言や制度づくりのための伴走支援、共同代表を務める任意団体『Kaede._かえで。』の当事者支援、N高グループ内でのコミュニティづくりです。
行政、NPO、その他の民間等からアプローチしており、活動の軸には病気や置かれた状況に関わらず、誰もが自分に合ったペースと方法で学べる社会にしたいという思いがあります。
また、これらの支援を継続しておこなえるように、ビジネスの視点でもアプローチを模索中です。いまは、デザインを中心に新規事業開発について、インターンや業務委託を通して学んでいます。」
Q2.活動を始めたきっかけは?
「小学4年生で起立性調節障害を発症し、『学校に行きたいのに体が動かない』という辛さを経験をしました。
その後、小学6年生のときには、友人からの心ない言葉がきっかけで不登校にもなって……。病気や不登校に対して社会の理解が乏しかったり、頼れる大人も少なかったりして、支援体制が整っていないと感じました。
このふたつの経験がきっかけとなって、『過去のわたしと同じように苦しんでいる子どもたちが、安心して過ごせる場所やつながりを持てるようにしたい』という強い思いが生まれたんです。
通信制の中学への進学を機ににパソコンを使える環境になったことを機に、まずはこれまでの経験を発信することからスタートしました」
Q3.活動の中で、悩みがあれば教えてください。
「『集めた声は、当事者全体の声を代表していると言えるのか』ということです。
これまで不登校という表記の見直しや、誰もが自分の課外活動を伝えられる土台をつくることといった内容について、行政に提言してきました。ですが、政策や制度に反映させるためには、個人的な体験だけでなく、より多くの当事者の声を収集して、そこから共通する課題やニーズを見出す必要があります。
しかし、現状ではそれを導き出すには十分なデータを集められているとは言えず、これが大きな課題だと感じていて……。
どうすればより広く、継続的にさまざまな状況にある当事者の声を集め、客観的なデータとして分析・活用できるのか、その仕組みづくりについて日々考えています」
Q4.活動を通して、実現したいビジョンは?
「ODや不登校の子どもたちが、安心して自分らしく学べる社会をつくりたいです。
病気や状況によって学びの機会が制限されるのではなく、一人ひとりの特性やペースに寄り添った多様な選択肢がある社会を当たり前にしたいと考えています。
そのためには、学校という物理的なかたちだけでなく、オンラインや地域のリソースを活用するなど、自分に合った学び方を選べる柔軟なシステムが必要であると感じていて。
このビジョンの達成のために、教育関係者、行政、企業、そして当事者やその家族といったさまざまな立場の人びとと連携して、社会全体の意識と仕組みを変えていけたらと思います」
Q5.今後の展望は?
「これまでの活動で得た知見や課題意識をさらに深掘りして、具体的な社会変革に繋げていきたいと考えています。
特にいまは、より多くの当事者の声を集めて、それをデータとして分析・活用する仕組みを構築することに注力しています。
また、ビジネス活動を通じて得た収益やスキルを、教育支援事業に還元できるようになりたいです。
ひとつの肩書きに囚われず、ビジネス、行政、団体など、あらゆる手段を柔軟に活用しながら、わたしのビジョンである『学びやすい社会』の実現に向けて活動を続けていきたいと考えています」
外所 もみじのプロフィール
年齢:17歳
生年月日:2007年9月18日
出身地:群馬県高崎市
所属: 角川ドワンゴ学園S高等学校 株式会社笑下村塾 インターン 任意団体 Kaede._かえで。 代表
趣味:カメラ、寝ること。
特技:デザイン
大切にしている言葉:成れば、成る。
Photo:Nanako Araie
Text:Taisei Sawamura