
「気になる10代名鑑」の895人目は、卯木遥奈さん(19)。中学時代の経験をきっかけに、教育問題をテーマにした弁論活動に取り組んでいます。悩みを抱える子どもたちが豊かに学べる環境を作っていきたいと語る卯木さんに、弁論活動への想いや活動の中でのエピソードを伺いました。
卯木遥奈を知る5つの質問
Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「教育問題をテーマに、弁論活動に取り組んでいます。弁論活動とは、自分の意見を言葉にして、発表する活動です。
昨年は、日本弁論連盟が主催する『文部科学大臣杯全国青年弁論大会』に出場し、不登校の生徒に対する支援をテーマに弁論しました。与えられた時間は、7分間。その中で、審査員の表情や頷き方をみながら、言葉の抑揚、表情に変化をつけ、いかにわかりやすく伝えられるかを意識しました。
弁論で大切にしていることは『ひとりでも多くのひとに届けたい』という気持ちです。自分自身の心情と向き合いながら、約半年間かけて弁論の練習をしてきました。入賞は逃してしまいましたが、今回の大会はとても心に響く、新たな経験ができた大会でした」
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「生徒会長をつとめていた中学3年生のころ、コロナ禍でさまざまな学校行事が縮小されてしまって。生徒たちの思い出のために何かできないか、教員にかけあっていたのですが、なかなか取り合ってもらえませんでした。
教員と全校生徒の思いの狭間で押しつぶされていたとき、母が『文部科学大臣杯全国青年弁論大会』のことを教えてくれて、『生徒会長として、多くの人の前で堂々と発表できることが、遥奈の強みじゃない?この大会は、文部科学省や教育者へ直接思いを伝えるチャンスかもしれないよ』と、言葉をかけてくれたんです。
その言葉をきっかけに、弁論活動に取り組むようになり、高校1年生の12月に初めて大会へ出場しました」
Q3. 活動をしている中で、印象的だった出来事は?
「高校3年生のときに出場した弁論大会で、同志のように活動を共にしていた友人から『感動しました。すごくかっこよかったです』と言ってもらえたことです。
前の年に入賞を経験していたわたしにとって、高校生最後の弁論大会での全国大会出場が目標のひとつでしたが、その夢は叶いませんでした。悔しさが込み上げていたとき、彼から言われた一言がすごく嬉しくて。
賞を獲ることにとらわれてしまっていたわたしに、『ひとりでも多くのひとに届けたい』という気持ちを思い出させてくれました」
Q4. 活動をする中でつらかったことは?
「弁論活動を受け入れてもらうのに時間がかかってしまったことです。
高校へ入学したら弁論活動を始めようと意気込んでいましたが、通っていた高校には弁論部がありませんでした。弁論大会は、高校代表として出場するため、学校長からの許可が必要だったんです。ほかにも、原稿の推敲や添削、交通費など、学校からのサポートは難しいと言われてしまいました。
それでも諦めずに、独学で表現方法を勉強して先生たちの前で発表したら、正式な出場許可を頂くことができたんです。ただ、弁論活動を受け入れてもらえないこともあるという現実が、わたしにとってはすごく生きづらく感じました」
Q5. 将来の展望は?
「悩みを抱えている子どもたちが、学びのある豊かな学生生活を送れる環境を作ることが、人生の大きな目標です。
教育現場には、教員や生徒同士の関わり方で悩む子どもたちが多くいます。かつては、わたしもそんな生徒のひとりでした。自分の意見をはっきりと伝えることができ、やりたいことを実現できる、そんな学びのある環境を作っていきたいです」
卯木遥奈のプロフィール
年齢:19歳
出身地:福島県いわき市
所属:桜美林大学 教育探究科学群
趣味:読書、食べ歩き
特技:アナウンス、書道
大切にしている言葉:辿り着いた者しか見えない景色は在る
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Photo:Nanako Araie
Text:Serina Hirano