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SNS活用から被選挙権まで…10代が政治にコミットするためには?自民党青年局長・小倉將信さんと10代が語り合う

SNS活用から被選挙権まで…10代が政治にコミットするためには?自民党青年局長・小倉將信さんと10代が語り合う

2021年衆議院議員選挙での投票率は、全体で55.93%。10代の投票率に目を向けると、総務省の調査によると43.01%でした。「若者の政治参加」「投票率アップ」が叫ばれる中、Steenzでは、「まずはこの全体平均へのビハインドをなくそう」という目標を掲げ、「12.92ポイントの壁」を超えるためのシリーズ記事を発信しています!

この「10代の投票率」、現役の国会議員はどう考えているのでしょうか。そして、上げていくための戦略は? そこで、過去にSteenzに登場した10代と国会議員の対談企画を実施し、ギモンをぶつけてもらいました。

与党議員と徹底討論!10代の投票ハードルの正体とは?

選挙が近づくと声高に叫ばれる「若者の投票率の低さ」。若者ばかりに責任を押しつけられている気もどこかでするけど、だからといって無関心を装ったり、スルーしたりするのがいいワケじゃない。「意志をもって社会をいい方向に変えていく」アクションをしている10代を応援するSteenzでは、まずは目の前の投票率を上げることも重要だと考え、投票率について、いろいろな意見を集めたり、伝えたりしています。

そこで今回は、若者の投票率の問題について、未来の日本を創るため、自民党の45歳以下の政治家が集結する「自民党 青年局」の局長を勤める、小倉將信まさのぶさん(41)=自民、東京23区=に聞いてみました。

インタビュアーは、中高生の教育事業を提供する株式会社ISHIZUE代表取締役のハクさんと、幼少期をスウェーデンで過ごし、現在は筑波大学に通う松本英愛さんのふたりです。

若者が投じる一票の意味ってなんだろう

ハク:「若者の投票率が低い」とよくメディアで言われていますが、僕としては、SNSなどを見ていても、徐々に若者の政治的関心は上がってきていると思っていて。でも、それでも全員が関心を持てる状況になっていない、投票に行かない人がまだまだいるように感じます。

小倉:我々政治家にとっては、より多くの方が投票所に行き、より多くの票数をいただいて、国民の負託を得て、国会で仕事をさせてもらうことがいいちばん重要なポイントなんです。だから、投票率が低いことはとても残念なことです。

特に、一般的に言われているように、若い人たちの人口が高齢者に比べて少ないうえに、投票率も低いとなれば、ますます政治の場で、若い人の声を反映することが難しくなってしまう。だから、若い人たちの投票率が1ポイントでも上がるような努力を、政治家側もしっかりやらなければ、と考えています。

ハク:でも、そういった人口のデータが示すとおり、たとえ若者全員が投票したところで、政治に反映されるのは、総票数の多い高齢者の意見でしょ、って思ってしまいます。それがひとつの心理的ハードルになっているとも感じます。

小倉:そういう一面も確かにあるでしょう。ただ、我々は選挙のために、数の多い人たちだけに向けた政治をやっているわけではありません。

例えば、普段の政治活動や集会など、そういったところに足を運んでもらって、意見を言ってくれる人たち声というのは、すごくやっぱり真剣に受け止めます。でも地元で集会をやっても、来るのほとんど50代以上で。10代20代って、ほとんどいないんですよ。

松本:確かに。なかなかハードル高いですね。

小倉:だからおふたりみたいな若い人が、そういった場に足を運んでくれて、直接政治家や候補者に対して意見を伝えてもらえば、それは選挙で投じる一票以上に、しっかりと政策に反映されて、それで世の中が変わるかもしれない。

数字だけ見て「意味がない」って諦めるのじゃなくて、むしろ積極的に現場に足を運んだり、集会などに参加して政治家と話してみたり、そういったことをやってもらいたいなと思います。

10代が感じる政治家との距離…最適なコミュニケーションの方法は?

松本:私は昔スウェーデンに住んでいたんですけど、スウェーデンでは、選挙の時期になると、街中にスタンドが建ち並んで、いろいろ配っていたり、政策を知るチャンスがありました。でも日本だと、なかなかそういう場所も機会も少なくて。そもそも若者はどこに意見をもっていけばいいんでしょうか。

小倉:例えば、政治家のホームページには、だいたい問い合わせフォームがあります。ただ、日本の国民性なのかな。若い人だけじゃなくて、ほとんどそういうので、ちゃんとした意見は来ないんですよね。

ただ、例えば僕だったらツイッターをやっていて、リプライとかも、基本的には自分で全部見ています。批判めいたもので心が挫けそうになるときもありますけど(笑)、やっぱり匿名の意見であっても、なるほどって思える内容であれば、それはちゃんと受け止めます。

松本:確かに、テレビを見ないという同世代は多いので、Twitterのほうがよく見ていると思います。

小倉:あとは先日、自民党の青年局で、メタバース空間で演説会を開いたんです。やっぱりリアルだと、街頭演説に足を止めてずっと聞いてるのが難しかったり、政治家に声をかけづらかったりするかもしれないけど、メタバース空間なら、匿名のアバターで参加できるし、コメントも書き込める。

どこまでうまくいくかわからないけど、こういう新しいプラットフォームもつかって、若い人たちに気軽に政治参加してもらえるような機会もつくっていいきたいな、と試行錯誤しながらやってます。

ハク:政治家には高齢の方が多いので、SNSの発信などに弱い印象があります。最近だとYouTubeショートやTikTok、Instagramのリールとかのショート動画に触れることが多いし、政治家の方の演説なども切り抜かれて、10代も見ていると思います。もっと効率よくSNSを使っていけば、若者の意見を取り入れられるんじゃないですか?

小倉:確かに、そのとおりですよね。

でもその一方で、ネットの世界って、一生懸命やっている議員が叩かれやすかったりするんですよ。「私はこれがやりたいです」って言っていて、頑張っていても、100%望み通りの結果がつくれないと、批判されてしまうし、当然、明確な方針を示すと、それに反対する人は出てくる。

有権者にとってみれば、政治はものすごい力を持ってると思うかもしれないですけど、政治はあくまでも、いろんな立場の人を公平に扱わなきゃいけないから、0か100かの世界じゃない。納得できる「100」にならないことも多くて、今回は20とか30だよねっていうのが、政治の世界ではほとんどで。

そうすると、100期待してた側からすると、やりますって言ったくせにに20、30しか進んでないじゃないか、となって「ぜんぜんダメじゃないか」、「期待外れだ」って思われてしまうんですよ。

松本:なるほど。結果だけを求められがちだからですね。

小倉:自分たちが困っていて「やってほしい」と思っていて、その「やってほしい」ことに対して、100点の答えをしてほしい。政治になじみがない人ほど、そう思っちゃうんですよね。

でも政治ってそんな完璧じゃないし、白を黒に変えたり黒を白に変えたりとか、そんなすっきりしたものじゃないんです。泥臭い営みで、なかなか前に進まないながらも、今日より明日のほうが良くなるとか、今年の状況よりも来年が良くなったって思ってもらえるのが政治。そこを評価をしてくれる若い人が増えたら、政治の質もすごく良くなるんじゃないかなと思います。

松本:政治家のイメージがなんだか少し変わりました。

小倉:ドラマとかだと、政治家って裏で悪いことをしていて、ヒール役で出がちだけど、実際は本当に朝から晩までずっと仕事して、それでもお叱りを受ける。もしかしたら明日、解散があって選挙があるかもしれない。来週には職をなくしているかもしれない。

でもみんな、この国の将来を憂えていて、変えていかなきゃなっていうのが心のどこかにあるから。もし日本が変な方向に行ったとき、それでいちばん被害を受けるのは、70代、80代ではなくて、みなさんの世代ですよね。どうやってこれからの経済を成長させていくのか、教育はどうするか、他国との関係をどう維持し、どう国を守っていくのかっていうことを、みんな真剣に考えています。

ただ、私も青年局長とはいえ、41歳です。おふたりからしたら、お父さんお母さんの年代。だから、どうやって若い人に接していいけばいいか、意見をしっかり聞けるのか、正直わからないと思うこともあります。

被選挙年齢が下がったら、日本の政治は変わる?

ハク:でも政治家というのは、年齢的な縛りがある数少ない職業ですよね。25歳や30歳にならないと、政治家になる権利が得られないという制度は、すごい気になります。

小倉:本当にそうだよね。我々も、超党派の若者政策議員連盟っていうのを作っていて、被選挙権年齢の引き下げと、供託金の金額をもっと下げるっていうのを、ずっと訴えています。

世界的に見ても、選挙権年齢と被選挙権年齢が違う国って、そんなに多くない。だから、我々の考えとしては、投票ができるほど人間として成熟した年齢であれば、評価される側に回ってもおかしくないだろう、と。

18歳で被選挙権年齢に達するっていうのが自然だと思うし、さらに今は、それなりの供託金を納めないと選挙に出られないけど、そのハードルも下げて、蓄えがない人でもチャレンジできるような選挙制度にしたいと思っています。でも一方で、今の状況では、若い人にいきなり政治家になることを勧められないとも思っているんです。

ハク:どうしてでしょうか。

小倉:日本の場合、一度政治家になると、色がついてしまって、特定の主義主張を持った人間だと思われてしまうことが多いんです。だから、一度足を踏み入れると、政治以外の世界になかなか行きづらいという現実もあって。

中には25歳から政治家になって、50年以上も政治の世界で生きている人もいる。でも、それってどうなのかなって思うんですよ。25歳で特殊な世界に入って、他の世界を知らないまま50年も同じ場所に続けたら、変えることもできない。

例えば、政治をやった人がNPO法人や民間企業に行ってもいいし、国際機関に行ってもいい。そうやって視野を広げて、政治の世界に戻りたかったらまた戻ってきて、蓄えた知見を活かして活躍する。そんな政治キャリアの仕組みを作ることができれば、もっといい政治ができるんじゃないかなって、ずっと思っているんです。

ハク:流動性が大切なんですね。確かに、20歳から立候補できるんだったら、自分の友達も立候補する人もいるだろうし、自分自身もするかもしれません。

小倉:20歳の政治家が誕生したら、若い人たちはすごい政治を身近に感じてくれると思うので、私は大賛成ですね。

最近では少しずつ、政治家を辞めてから大学の先生になったり、民間企業の取締役になったりする人も増えています。これが続いていけば、質の高い政治家が増えてくるし、政治の世界で蓄えたネットワークや経験が、いろんな世界に還元しやすくなる。そんな国になるといいな、と期待しているんです。

松本:小倉さんはこれからどんな政治をしていきたいと考えているんですか?

小倉:私が若い人たちと接していて思うのは、ふたりもそうだけど、今の若い世代って、すごく自然体で、家族やコミュニティ、自分の生活を大切にしていて、社会のことを本気で意識している。それに、社会課題を解決したいという、内に秘めた熱い思いを感じます。我々政治家の役割は、そういった熱い思いを、しっかり引き出すことだと思っています。

具体的にどうすればいいかについては、我々も正解がわかっているわけじゃないので、むしろ共に歩んでいくというか。今日みたいに実際に会って話して、試行錯誤して、自分たちの想いが政治に反映されているな、と若い人たちに感じてもらえるような、そういう政治をつくっていきたいと思っています。

お話を聞いたのは・・・

小倉將信さん

1981年5月30日東京都多摩市生まれ。東京大学法学部卒業後、日本銀行へ入行。オックスフォード大学大学院を経て、公募候補から国政に挑戦。2012年12月に実施された第46回衆議院総選挙で初当選し、衆議院議員4期目。現在、第52代自民党青年局長、税制調査会幹事などを務める。

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Photo:Eri Miura
Text:Ayuka Moriya

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Ayuka Moriya

エディター

1999年生まれ、秋田県出身。東京外国語大学 国際社会学部在学時よりライター・エディターとして主にインタビュー記事の執筆、ディレクションに携わる。Steenzでは、2021年ローンチ当初より「気になる10代名鑑」のコンテンツ制作を担当。

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