
「気になる10代名鑑」の958人目は、山崎陽菜さん(19)。NPO法人のメンバーとして、稲城市で放課後学習教室を開校するなど、教育支援に関わっています。ミクロネシアでの滞在が“支援”とは何か考えるきっかけとなったと話す山崎さんに、行動範囲の広さの理由や原動力について、詳しく伺いました。
山崎陽菜を知る5つの質問
Q1.プロフィールを教えてください
「児童福祉や貧困問題に関心があって、いまはボランティアや留学を通じて、さまざまな境遇のひとと関わっています。
長い間、NPO法人BORDER FREEのメンバーとして、経済的ハンデを抱える子供たちに学習支援をしています。そこでは放課後学習教室事業部のリーダーを務めていて、先日、稲城市に放課後学習教室を開校しました。
承認を得るためにプレゼンの準備をしたり、施設を借りるために交渉に行ったり、リーダーとして全体の流れを調整したり……責任も大きかったですが、昨年11月からの一大プロジェクトだったので、いまはひと区切りついて達成感を感じています」
Q2.活動を始めたきっかけは?
「受験勉強をしていたときに、インドのカースト制度の問題を知って衝撃を受けました。同じ人間なのに、生まれが違うだけでその先の人生がこんなにも変わるのかと愕然としたことを覚えています。
わたしは中高一貫校に通っていたこともあって、周りの環境も変化が少なかったし、経済環境も似通ったひとが多かったです。身近なところでは差別の存在に気づかなかったけれど、歴史を知ったとき、それを教訓としてアクションを起こすべきなのではないかと考えて。大学進学のタイミングで活動を始めました。
わたしは、自分でもかなり行動力がある人間だと思っているんです。失敗を恐れずチャレンジできるのは、上手くいかなくても必ず学びがあると考えるようにしているから。高校で演劇部の衣装リーダーを務めたときも、辛かったけれど、終わってからは成長できたなっていう達成感があって。そういう成功体験の積み重ねと、受験期に自分のやりたいことをじっくり考えた結果が、いまのわたしにつながっています」
Q3.活動をしている中で、印象的だった出来事は?
「今年の3月にミクロネシア連邦のヤップ島に10日間滞在して、現地でホームステイをしました。
家は土の上に木で枠組みをつくって、上から草をかぶせて屋根にしています。食べたバナナの皮だって、そのまま地面に捨てて循環させる生活だったんです。彼らの伝統的で持続的な文化は、とても魅力的だったんですが、先進国から送られてきた洗剤をそのまま地面に流していたり、プラスチックごみを分別せずにゴミ山をつくっていたりする景色も目の当たりにして……。
制度やリサイクルの概念が確立される前に物資だけを提供することはいいことなのか、そもそも“支援”とは何なのか……そんなことをを考える貴重な機会になったと思います」
Q4.活動の中で、悩みがあれば教えてください
「支援の対象となるひととの距離感や関わり方について悩んだことがあります。『当たり前』や『幸せ』はひとそれぞれなので、ときどき自分の行動が余計なお世話になってないかな……と思うこともあって。
カフェで無料の昼食を提供するボランティアに参加して、ホームレスのひとや移民のひとと関わる機会があったのですが、そのときに彼らが必要としている以上に干渉してしまいそうになっている自分に気づきました。
ボランティア活動は、こちらが上に立って、そのひとのことをどうにかしてあげるっていう構図になりがちだと思うんです。でも、そのひとにはそのひとの意思や選択権があるから、『選択肢をひとつ増やす手伝い』をするという認識で行動するようにしていますね」
Q5.将来の展望は?
「海外を拠点に、社会問題にアプローチする職に就くのが目標です。といいつつも、『ケーキの切れない非行少年たち』という本を読んだことで、社会的擁護が必要な子どもへの気持ちが強まったので、日本の要保護児童や非行少年の更生と社会復帰といった児童福祉にも関心があります。まだ細かいビジョンは定まっていません。どの道に進むにせよ、生まれに人生が左右されない社会を実現したいです。
でも、ヤップ島で学んだように、一律でその場限りの支援では、問題の根本的な解決には繋がりません。だからこそいまは、いろんな社会問題と向き合い、ボランティアでの交流を通じて、多角的な支援の在り方を学びたい。今年の秋、スウェーデンに留学して、現地の福祉制度の長所と短所を学びたいと考えています。これからももっともっと、経験と学習を積み重ねていきたいです」
山崎陽菜のプロフィール
年齢:19歳
出身地:東京都
所属:早稲田大学文化構想学部、NPO法人BORDER FREE
趣味:英会話、プレゼン作り
特技:初対面でも躊躇いなく話せる
大切にしている言葉:したい人、10000人。始める人、100人、続ける人、1人(中谷彰宏さん)
photo:Kaori Someya
text:Yuzuki Nishikawa