タイムリーな話題から、カルチャー、さらには社会問題まで、さまざまなテーマについて、リアルな10代の声を聞くシリーズ「10代リアルVOICE」。
今回のテーマは『本との関わり方』について。「若者の読書離れ」と言われていた時代もありましたが、それは90年代後半のこと。若い世代の読書率は年々、回復傾向にあるのだそうです。昨今では、紙の本に加えて、電子書籍やオーディオブックなど、さまざまな形で本に触れられるようになりました。毎日を忙しく生きるいまの10代は、読書とどう向き合っているのか、どんなツールを使っているのか、そもそも本に興味はあるのか。今回は、4人のティーンに『本との関わり方』について聞いてみました。また、最近増えつつある、本屋とカフェが合体した「ブックカフェ」への興味についても、合わせて質問してみました。
1. 棚澤直さん「読書は趣味のひとつ。本を読んでいるときの紙の音や本の香りが好きなんです」
「読書は、僕にとって趣味のひとつです。
最近では、村上春樹さんの『ノルウェイの森』が印象に残っています。さまざまな性格の登場人物や、主人公が多くの人との関わりの中で自分の居場所を見つけようとしている姿、それとなく情景が示されている巧みな描写に、夢中になって読み進めました。つい没頭してしまって、本の中に入り込んでいくような読書体験でした。
本を読んでいるときの紙の音や匂いが好きで、心が落ち着きます。紙の本の方が、読んでいて心地いい気分になれるので、電子書籍はあまり使いません。本屋さんにもよく行っていて、おもしろい本と出会える『本屋 B&B』が特に好きです。
公園やテラスで読んだり、お風呂で湯船に浸かりながら読んだりすることもありますが、本だけに集中できそうなブックカフェにも興味があります。いつか行ってみたいです」
2. 松澤光春さん「SNSのレビューや友達からのおすすめが、お気に入りの本と出会うきっかけになっています」
「最近読んで面白かった本は、赤羽雄二さんの『ゼロ秒思考』です。
A4サイズの用紙に1枚1分のスピードで素早くメモ書きをしていく『メモ書き』という手法が特に印象に残っています。1日10枚書いていくことで、頭の中が整理され、意思決定のスピードが上がり、アイディアが浮かびやすくなるそうです。
自分の思考をより深く理解し、問題解決能力や創造力を向上させるため、さっそく試してみようと思います。
普段、本を探すときは、SNSでのレビューを参考にすることが多いです。友だちから紹介してもらった本が、思いがけずお気に入りになることもあります。
図書館や本屋さんにはときどき行きますが、受験対策や勉強が主な目的です。ブックカフェには、まだ行ったことがなくて。でも、コーヒーの香りでリラックスしながら読書ができるってすごく魅力的だと思うので、受験が終わったら行ってみたいです」
3. 手島美月さん「本に直接ラインを引いたり、書き込んだりしています。借りるよりも、買うほうが多いですね」
「本は、1か月に1~2冊、多いときは5冊くらい読んでいます。
地元の地域を盛り上げる活動をしているので、社会科学や地域・郷土に関する本がほとんどです。小説は、ストーリーを読むのが苦手で、あまり触れていなくて……。ただ、おもしろい作品にいつか出会ってみたいと思っています。
本に直接メモを書いたり、マーカーを引いたりしながら読むので、基本は自分で買った本を読んでいますね。図書館に行くこともありますが、本との出会いは本屋さんのほうが多いかもしれません。でも、ブックカフェは気になっていて、家の近くにあればぜったい行っていると思います」
4. 松澤智朗さん「集中力があまり長く続かなくて、本を読むことはほとんどありません」
「本を読むことは、ほとんどありません。あまり集中力が長く続かないタイプで、読んでいるうちに登場人物が誰なのか分からなくなることが多いんです。伝記や啓発本も、数日経つと内容を忘れてしまったり、最初から読み返して時間の無駄だと感じてしまったり。
ただ、これは本を読むときに、自分自身の感覚を十分に使えていないからだと思っていて。普段から、気になったことや疑問に思ったことは、自分で体験して学ぶことを大切にしているんです。五感を最大限に活かしながら、経験することで、自分のものになっていくんじゃないかなと。本も、感覚を大切にしながら読めるようになったらいいなと思っています」
読書が趣味という回答が多く見られ、ほとんど読まない、という10代も、読書自体に興味はあるようでした。小説や自己啓発本など、読んでいるジャンルはさまざま。本屋をはじめ、図書館、SNSのレビューなど、本との出会いもそれぞれ異なり、自身のスタイルに合わせて、うまく読書を生活の中へ取り入れているようです。中には、自分のこだわりを持って「紙の本」を選択している10代も。SNSや動画配信サービスが普及したいまだからこそ、読書をして、自分と向き合う時間を大切にしていきたいですね。
Photo:Nanako Araie
Text:Serina Hirano