Fasion&Culture

観て触れるプロトタイプに興奮が止まらない。企画展「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」展を人間拡張工学を学ぶ高校生がレポート

観て触れるプロトタイプに興奮が止まらない。企画展「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」展を人間拡張工学を学ぶ高校生がレポート

2024年8月12日(月)まで、六本木・21_21 DESIGN SIGHTにて「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」が開催中です。未来に思いを馳せながら、試行錯誤が繰り返されているクリエイティブ・サイエンスの現場。その設計図やプロトタイプなどを通じて、見たり、触ったりしながらその具現化にいたるまでの道のりを追うことができます。

今回は、そんな展示内容とも関わりの深い「人間拡張工学」を学んでいる高校生・シードリームさんが、展覧会をレポートしてくれました。はたして、どんな「未来のかけら」を見つけることができるのでしょうか。

シードリーム(17)。通信制の高校に通いながら、人間拡張工学という分野を学ぶ。

夢はテクノロジーの力で人間の暮らしを助けること。プログラミングや学外活動で学びを深める【シードリーム・16歳】
夢はテクノロジーの力で人間の暮らしを助けること。プログラミングや学外活動で学びを深める【シードリーム・16歳】
「気になる10代名鑑」の411人目は、シードリームさん(16)。通信制の高校に通いつつ、人間拡張工学という分野を通して、体に不満を感じていたり、身体的な苦痛を持っていたりする人々を支えたいというビジョンを抱いて活動してい […]
https://steenz.jp/11134/

設計図やプロトタイプから想像してみる「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」

こんにちは。海より大きな夢の持ち主、「シードリーム」こと石井海夢です。

現在は17歳で、今年成人になります。通信制高校で起業について学びながら、義手や義足、パワードスーツといった、テクノロジーで人間の能力を拡張する「人間拡張工学」に興味をもち、独学で学んでいます。特にいまは、ユーモアとエンターテイメントを兼ね備えた、筋電義手のモデル作成とプロトタイプ制作に注力しています。

今回は縁あって、六本木の「21_21 DESIGN SIGNT」にて開催されている『未来のかけら: 科学とデザインの実験室』を観に行ってきました。

記事を読んでいるみなさんも、これまでに一度くらいは、『ドラえもん』に描かれているような未来の世界に、憧れをもったことはありませんか? この展示には、そんな夢のようなデザイン、ロボット、人間拡張の作品・プロトタイプがたくさん展示されていす。パッと見じゃ仕組みが理解できないような、ワクワクさせられる作品たちを見てきましたので、さっそく紹介していきたいと思います!

キリンの足の骨を「組み立てる」!

まず僕が飛びついたのは、キリンの足の骨の標本です。キリンを解剖した後、最先端の3Dプリンターを駆使して、再現されたものです。

関節部分に磁石が搭載されていて、目の前にある実寸大の骨を参考に、パズルのように組み立てていきます。付けたり外したりを繰り返していくうちに、骨の形や接続を詳しく見ることができました。

この標本の可能性を語るとするならば、特に、医療の分野に活躍するのではないかと考えます。人間の骨でも同様に、人を解剖せずとも、骨の仕組みを研究することができるはず。さらに、医療以外でも実証実験をリスクなくおこなえる可能性も見えてきますね。みなさんには、いったいどんな可能性が見えてくるでしょうか。

設計図に「入り込める」空間も

自分自身がまるで設計図の中に入っているような錯覚を生み出す、「ON THE FLY」。

展覧会のテーマとは少しズレますが、特に気になったのは、その展示の仕掛けです。中央のテーブルに、4枚の設計図が置かれています。正確には、設計図を映し出すための“白紙の紙”で、どんなに激しく紙を動かしても、設計図が必ず映し出されるようになっているんです。さらに、いま動かしている設計図によって、テーブルの画面がそのプロトタイプのイラストに切り替わるという仕掛けもありました。

その仕組みが気になって、あたりを見渡してみると、真上のプロジェクターには、何らかのセンサーが設置されています。設計図に穴が複数空いていたことから、その穴の位置を読み取って、テーブルに投影されているのではないかと考えました。

そして、そのテーブルの前には大きなスクリーンが設置されています。これも好奇心をかき立てられました。

部屋の後方に設置された、柱状のようなマルチタッチの装置と、前方の大きなスクリーンがリンクしていて、設計図が3Dに映し出されています。マルチタッチの装置を触ってみると、前の大きなスクリーンが、操作にあわせ動くんです! このドデカいスクリーンを贅沢に独り占めして、立体的で迫力のある設計図を縮小拡大しながら、隅から隅まで楽しむことができました。

プロトタイプ製品を発表するときに使えば、会場が盛り上がるエンターテイメントにもなりそう。さらに創造を膨らませるならば、建築分野などでも、見取り図を投影して関係者で閲覧するのに、非常に便利だと考えました。

阿修羅のような複数の手…

ウェアラブルシステム「自在肢」は、個人的に、この展示のいちばんの目玉といっても過言ではないほどの作品でした。

発明したのは、世界初の「透明マント」を開発したロボット工学の第一人者であり、東京大学先端科学技術研究センターに所属する、稲見昌彦教授です。実は、僕が初めて人間拡張工学に興味をもったのも、この稲見教授がきっかけでした。

まさか、憧れの発明家の作品が展示されているとは夢にも思わっておらず、推しを目の当たりにするかのように、心の底から感動しちゃいました!

これは「山中研究室+稲見自在身体化プロジェクト」による作品で、「超スマート社会に適応可能な『自在化身体』を構築する技術基盤を確立する」ことをめざすものだそうです。

僕は以前から、「人間がロボットやAIと『人機一体』となり、自己主体感を保持したまま行動することを支援し、人間の行動の可能性を大幅に広げる」ことに惹かれていました。(稲見自在化身体プロジェクト・公式HP)。

まさか人間が、阿修羅のように複数の腕を生やしている光景を、誰が想像したでしょうか! さらにそれを実現させたこと、そしてデザインのスマートな美しさ……。初めてこの作品を目にして、開いた口が閉まらないほどの衝撃を受けました。

今回の展示では、主に芸術的な視点で語られている印象を受けますが、実用的にも、今後どう発展していくのかを考えてみることにします。

複数の腕は、災害や物流など力仕事の現場で、パワーギアとして活躍する可能性を見ました。僕が真っ先に頭に浮かんだのは、『スパイダーマン』に登場するスパイダーアームのオートモード形態の形状です。それも踏まえ、災害時の救助の場面でも活躍することが可能なのではとも考えられます。

10年後の「未来のかけら」はどうなる?

「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」は、学びと創造とワクワクと、全身に刺激を受ける展示でした。このような作品たちがどこから着想を得たのか。そして、その実現までの過程や苦難……そのすべてに興味をそそられました。

僕もいつもぼんやりと過ごしていますが、その視界には数えられないほど、アイディアの種と可能性が詰まっています。当たり前がなぜ当たり前になったのか、要素を分解して分析してみると、また新しい枝分かれが生まれる。この化学反応は、生涯を終えるまで楽しめるのだと考えると、武者震いが止まりません。

現在、僕が取り組んでいる人間拡張工学も、同じく“理想”からその実現のための“創造”というプロセスがあります。この展覧会では、理想が創造されて、実現に至るまでの過程を観ることができました。実装のヒントもたくさん得られたので、自分の活動にも反映させたいと思います。

みなさんもこの展覧会を通して、日常の中の変化や可能性、創造性に着目して、10年後の未来がどうなっているのか、いまある「未来のかけら」が10年後どうなっていくのか、想像してみてはいかがでしょうか:

「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」概要

会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
住所:〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
会期:2024年3月29日(金)〜8月12日(月・休)
休館日:火曜日
閉館時間:10:00 – 19:00(入場は18:30まで)
観覧料:一般1,400円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料

Text:SEADREAM

SNS Share

Twitter

Facebook

LINE

Atsuko Arahata

エディター

View More