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現地人よりも豊かな生活を送るウガンダの「お金持ち難民」。その実態をアフリカ在住のZ世代ライターがレポート【Steenz Breaking News】

現地人よりも豊かな生活を送るウガンダの「お金持ち難民」。その実態をアフリカ在住のZ世代ライターがレポート【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今回は、アフリカ在住のライターによる、アフリカの難民キャンプの実態についてのレポート第2弾として、ウガンダの「お金持ち難民」についてご紹介します。

多様化する難民

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の発表によると、相次ぐ紛争や迫害などで、住む場所を追われてしまった難民や国内避難民は、2023年9月末で1億1400万人を超えており、この10年間でなんと2倍以上に増加しています。その44%がアフリカの人々であり、アフリカにおける難民問題がいかに深刻か、わかるのではないでしょうか。

一般的に「難民」と聞いて想像するのは、前回の記事でご紹介した、ブルンジの難民キャンプに住むような人々なのではないでしょうか。しかし近年、アフリカにおける難民の姿は多様化しています。今回は、難民キャンプのレポートの第2弾として、ウガンダに住む「お金持ち難民」の実態についてお伝えします。

アフリカの難民キャンプってどんなところ? ブルンジの難民キャンプをアフリカ在住のZ世代ライターがレポート【Steenz Breaking News】
アフリカの難民キャンプってどんなところ? ブルンジの難民キャンプをアフリカ在住のZ世代ライターがレポート【Steenz Breaking News】
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難民大国、ウガンダ

東アフリカに位置するウガンダは、人口約4700万人の国です。難民は約156万人と、全人口の約3,3%を占めています。日本が難民認定制度を導入した1982年から受け入れた難民数は、たった1171人。ウガンダが受け入れている難民数がいかに多いかがわかるでしょう。

ウガンダは、近隣国の南スーダンやコンゴ民主共和国、エチオピアやエリトリアからの難民を多く受け入れています。このような国からの難民は大きなコミュニティを形成しており、その国の難民ばかりが住む町ができあがっています。

筆者の住む首都のカンパラにある街は、エリトリアやエチオピアからの難民が多く、近所のスーパー、カフェ、バーは、エチオピア人かエリトリア人が経営者であることがほとんどです。彼らは、お店を所有せず、ストリートで物売りをしているウガンダ人よりも経済的に豊かなことも多く、現地人から「お金持ち難民」と認識されています。

お金持ち難民が存在するワケ

なぜウガンダには、こうしたエチオピア人やエリトリア人のような「お金持ち難民」が存在するのでしょうか。

理由のひとつとして考えられるのは、ウガンダの難民政策です。ウガンダの難民政策は、雇用や教育、移動の自由だけでなく、起業する権利も保証しています。また政府としても、難民が農業をしたり避難所を建設したりできるように、土地の提供をおこなっています。

また、もうひとつの理由として考えられるのが、難民となる背景です。というのも、エチオピアは政府と反政府勢力の対立により難民になる人が多く、エリトリアは「アフリカの北朝鮮」と言われるほど国外の情報が遮断され、自由を求めて難民になる人が多くいます。南スーダンやコンゴ民主共和国の難民が紛争や虐殺による貧困から逃れてくるのに対し、エチオピアやエリトリアでは、政治的な背景から難民になる人が多いのです。そのため、ほとんど財産を所持しない他の難民に比べて、経済的に余裕のある人々が多くいます。

こうした難民の中には、医師、弁護士、大学卒業生といった高いステータスをもった人々も存在します。難民とはいえ、社会的地位も高く、経済的に困窮したウガンダ人よりも、豊かになる機会がある人たちなのです。

難民を受け入れる利益とは

ウガンダの政治家は「自国の伝統の文化であるおもてなしを全員に」というビジョンを掲げて、積極的に難民を受け入れています。ただ実際は、別の理由も存在するようです。

2018年にウガンダは、難民受け入れのための支援金として、国連から82億ドルもの資金を提供されています。しかし、ウガンダは政治的に腐敗していて、賄賂が蔓延しているため、その支援金を政治家が悪用しているのではないかという指摘も出ています。

彼らにとって難民受け入れ政策は、経済的な「うまみ」のあるものだといえそうです。

格差によって広がる難民への嫌悪

こういった難民の状況には、現地人から「不公平だ」と嫌悪感を抱かれていることも稀ではありません。難民受け入れ大国としてウガンダが評価される中、現地の人々は、貧困にあえいでいます。だからこそ生まれる分断であり、その構造も大変複雑です。

日本でも、ウクライナでの戦争をきっかけに、メディアで耳にすることが増えた「難民」という言葉。みなさんは、こうした状況についてどう思いますか。

References:
Africa Center「Record 36 Million Africans Forcibly Displaced」
DataCommons「Uganda」
ReliefWeb「UNHCR Uganda Factsheet – June 2023」
Statista「Ranking of the largest refugee-hosting countries as of 2023」
外務省「国内における難民の受け入れ」
United Nations「Uganda stands out in refugees hospitality」

TextHao Kanayama

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Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

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