「気になる10代名鑑」の638人目は、吉田莉恩さん(19)。病気の子どもたちにも十分な教育の機会を提供したいという思いで、『病弱教育』に焦点をあてて活動しています。社会にある“くくり”をなくして、ひとりひとりが生きやすい社会をつくりたいと語る吉田さんに、活動を始めたきっかけや今後の展望について、詳しく聞いてみました。
吉田莉恩を知る5つの質問
Q1. いまいちばん力を注いでいる活動は?
「継続的な治療を必要とする子どもたちへの『病弱教育』に関する活動をしています。
いまは特に、高校生の教育問題に課題意識をもっています。通常、ケガや病気のために長期入院が必要になると、病院内の院内学級等に所属できます。しかし、それらは義務教育の対象である小中学生が対象となっているため、高校生は入れない場合が多いんです。だから、入院中の高校生も学習できる環境をつくりたくて。
また昨年末には、『スポーツ×教育』ビジネスをおこなうSwimmy株式会社のCFO(最高未来責任者)に選任していただきました。
具体的には、データの収集や学習、キャリアのサポートをおこなったりしています。ただ、データが収集しづらいこともあり、病弱教育について、あまり知られていないのが現実で……。課題感をわかりやすく具体的に課題を伝えるために、現在はアンケートを作成して、SNSで協力してもらっています」
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「小さいときから科学館などによく行っていた影響もあって、自然と医療分野に興味をもつようになりました。また、小児がんを患っている友人がいたこともあって、小児医療に関するいろいろな講演会に参加するようになりました。
参加していくうちに、病気であるという理由だけで、教育を受けられない同世代が多くいる状況に気がつきました。そこから、教育を受けられることが当たり前ではないということを痛感し、自分に何かできることはないかな、と思うようになったんです」
Q3. 課題に対するアクションの、最初の一歩目は?
「まずは情報収集をしようと思って、たくさんの講演会に参加しました。専門家の方に話を直接聞くことで、自分なりに感じた課題や変えていきたい点の抽出ができました。
なかでもいちばん最初に参加した講演会は印象に残っています。その講演会で、発達途中の子どもに強い薬を使うと、病気が治った数年後に合併症を発症してしまう『晩期合併症』があることを知って。治療を受けているときにはわからないリスクが存在するため、子どもの病気にはもっと長期的で安心できるフォローが必要だと思ったんです。
他にも、子ども病院で外来受付のお手伝いをしたり、入院中の子どもの学習サポートボランティアに参加したりして、直接関わる機会をもつようにしています」
Q4. 最近、新しく始めたことはありますか?
「手話ダンスを始めました。もともと手話に興味があったんですけど、どこから手をつけていいかわからなくて、踏み出せずにいたんです。そんなとき、近所のスポーツセンターに手話ダンス会のポスターが貼ってあるのを見つけたんです。
参加してみて、手話に触れることも楽しいし、手話とダンスのつながりを実感できました。そのダンス会には、聴覚障害がある人も参加しており、簡単なあいさつでも、手話が通じるととてもうれしいです。聴覚障害についても、もっと知りたいと思うきっかけにもなりました」
Q5. 今後の展望は?
「まずは、病気の子どもたちをキーワードとして、病弱教育の事業を実現させたいです。そして、病気の子どもたちが生きやすい社会づくりを行いたいです。
また、社会には貧困や病気の子どもなどの、“くくり”が存在していると思っていて。私が体調を崩したとき、高校の先生が、既存の型や価値観にあてはめずに、ひとりの存在として受容してくれたことがとても救いになりました。なので、そういった型やくくりをなくしていきたいとかんがえています。
病気だから支援するではなく、ひとりひとり、環境が違う子どもをサポートできる社会にしていきたいと思っています。ひとりひとりが生きやすい社会をつくるために、自分が貢献できることは何かを模索しながら生きていきたいです」
吉田莉恩のプロフィール
年齢:19歳
出身地:東京都豊島区
所属:人間総合科学大学通信課程、株式会社Swimmy、#SASS2023「大学生による中高生のためのSDGs/サスティナビリティアワード」
趣味:ルービックキューブ、文作成
特技:筆アート
大切にしている言葉:“When life gives you lemon, make lemonade”(人生が酸っぱいレモンを与えるのなら、それで甘いレモネードをつくればいい)
吉田莉恩のSNS
Photo:Eri Miura
Text:Chikiri Kudo