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「投票してもムダ」と10代が思わないためにできることを考えてみた【TEEN’S CHIT CHAT#10】

「投票してもムダ」と10代が思わないためにできることを考えてみた【TEEN’S CHIT CHAT#10】

東京・青山のとあるカフェ。そこから聞こえてくるのは、ティーンたちが繰り広げる、ちょっと真面目な「政治と選挙の話」。話しているのは、以前「気になる10代名鑑」にも登場してくれた、金杉龍吾さん(19)と、その友人のあずみさん(19)、ゆうぜんさん(19)です。普段から政治談義に花を咲かせているという3人のおしゃべりを聞いてみましょう。

今回のテーマ:「どうしたら10代の投票率は上がる?」

左から、松尾ゆうぜん・山田あずみ・金杉りゅうご

ティーン世代が選挙に足を運ばないのはどうして?

あずみ:前に友達が、自分の一票じゃ何も変わらないじゃんって言ってて。投票してもしなくても、どうせ結果は決まっているし、自分が投票したところで意味ないって思う子はきっと多いよね。

龍吾:確かに。投票前の状勢分析とか見ると、余計にそう思っちゃうよね。

あずみ:私が岐阜出身だっていうのもあるのかなぁ。地方だと、そういう考え方がより強い気がするんだよね。

ゆうぜん:そういう「行ってもムダじゃん」っていう意識って、どうやったら変えられるんだろうね。

龍吾:確かに、僕らはたまたま政治に興味があるけど、ひとりひとりが熱量を持つような状況にするのは、簡単なことじゃないよね。教育の話にも言えることだけど、いまの政治を行う側というか、社会全体が、そもそも僕らの世代に、興味を持たせようという意識も少ない気がするなぁ。

ネットで投票ができたら解決する?

ゆうぜん:よく言われる話としては、ネット選挙が実現するかだよね。ずっと前から言われているけど、なかなか議論も進んでないような気がする。

あずみ:ネットで投票できるとしたら、ホントありがたい。私もそうだけど、上京組は住民票を移してないこともあるから、今住んでるところで投票できなくて……。この間の衆院選なんて、投票のために新幹線でわざわざ帰ったからね(笑)。

ゆうぜん:投票のためだけに帰るのは大変だね~。

龍吾:僕は、上京してからはずっと不在者投票してる。でも、地元の役所に書類請求をして、今住んでるところの役所までいかないといけないから、ちょっと面倒くさい(笑)。

ゆうぜん:ネット投票は便利だと思うけど、不正をどうやって防ぐのかとか、本人確認はどうするのかとか、やっぱり課題はけっこうあると思うな。あとは、情報漏洩とかもありそうだし。

選挙割ってどう思う?アリ?それともナシ? 

龍吾:ネットとかで選挙に行きやすくする他にも、「行ってもムダ」っていう意識を変えるために、投票することに対してインセンティブをつけるっていう考え方もあるよね。例えば「選挙割」ってあるよね。あれってどう思う? 

ゆうぜん:けっこういろんな企業が参加してるみたい。確かに、政治に興味なくても、お得になるなら、選挙に行こうかなってなる人は増えそう。

あずみ:でもさ、選挙割のために選挙に行くってのも違う気がするんだよね。やっぱり関心をもって、結果として投票行動につながるのが基本でしょ。

龍吾:じゃあ、あずみは選挙割には反対?

あずみ:反対っていうわけじゃないけど、なんか複雑な気がする(笑)。あとはインセンティブとはちょっと違うけど、いっそ制度として義務にしちゃうとか。

ゆうぜん:大胆な意見(笑)! 確かにそれだと投票率は上がるよね。

あずみ:ベルギーとかスイスとか、シンガポールとかオーストラリアとかは、投票が義務になっていて、行かないと罰金を払う国もあったりするんだよね。そうするともちろん、投票率は絶対100パーセントに近くなるけど、だからといってみんなが政治に関心があるわけじゃない。だからそれはそれで、やっぱり複雑な気持ちになるけど(笑)。

選挙情報はどうやって収集してる?選挙に役立つSNSの使い方とは

ゆうぜん:みんなはどうやって情報収集してる? 僕は候補者それぞれのパンフレットを見てる。マニュフェストもそこに載っているから、けっこう見やすかった。

あずみ:私はYouTubeで演説を見たり、候補者のFacebookを見たりしてるかな。あと、Instagramで最近見つけたんだけど、同年代の子が運営してる政治関連のアカウントが意外と多くて、けっこうチェックしてる! 小さいころは実家で新聞を取ってたから、自然と情報が入ってきてたんだけどね。

ゆうぜん:そうだよね。新聞を読む機会って、すごく減った気がする。ニュースはもっぱらSNSで見てるから。とはいえ、自分で情報を選ぶから、偏りが出ちゃいそうで少し怖いけど。

龍吾:僕はスマホのウィジェット機能を使って、スマホを開けばすぐに政治関係のニュースを見られるようにしてる。ニュースって、あんまり取捨選択しないで、強制的に入ってくるようにするのも大事だと思う。だからテレビとかもやっぱり重要だよね。うちにテレビないけど(笑)。

あずみ:テレビの選挙特番って、投票日しかやらないのってなんでだろう。結果がわかったときに、政策の話を聞いて、「この人、こんな主張してたんだ」ってそのとき知ったりするよね。

ゆうぜん:投票の1週間くらい前にはやってほしいよね。そうすれば、マニフェストに書いてある以上に、いろいろ理解できるし、「よくわからないから投票しない」みたいなロスも防げるのかなって思う。

政治の話をするときの、中立性について…

龍吾:テレビの報道もそうだし、こうやって友達とかと政治のことを話すときもそうだけど、中立性について、みんなはどう考えてる? 僕は、バランスをとって中間のスタンスを探ることが、中立だって思わないんだけど……。

あずみ:私もそう思う。考え方が偏っていることって、それ自体は悪いことじゃなくて、ちゃんと違う意見の人とも話ができて、お互いの考えを知ることができればいいんだと思う。ヘンに真ん中を意識したり、バランスとろうとするのって、無理だよね。

龍吾:中立かどうかよりも、多角的かどうかが大事なんじゃないかな。前に学校で、「新聞も考えに偏りがあるから、4つは読んだほうがいい」って言われたことがある。

ゆうぜん:でもさ、現実としては、バランスも気になるよね。もしバランスを気にしないで自分が意見を言って、それが友達と真逆だったら、人間関係に影響が出ちゃいそう……とか、僕は気にするかな。でも確かに、議論したり、考えるときに中立であることは大事だけど、結果として、絶対に中立である状態を目指さなくていいと思う。

龍吾:そもそも、あんまりガッツリ話す場所がないんだよね。対立したときの解決法を知らないまま、大人になっちゃう。だから、政治の話がどんどんタブー視されていくんだと思うな。

ゆうぜん:批判をすると確かにぶつかるかもしれないから、ポジティブなことだけでも、もっと話せるといいのにね。

龍吾:僕が通っていた高校に、友達と日ごろのモヤモヤを共有するっていう授業の時間があって。そこから派生して、政治とか、社会全体のこういうところがおかしいよねって話したり。そういうモヤモヤとか疑問を一度もきちんと話したことがなかったって人が意外と多くて。

あずみ;そうだね。授業でそういう経験をするのはいいかもね。そういう経験をしないと、自分の意見をどんどん言えなくなって、人に合わせることばかり覚えちゃいそうだし。

龍吾:こうやってカフェで雑談をする感覚で、モヤモヤとか、世の中のおかしいと思うこととか話せたら、もっとみんな自然と投票にいくようになるのかなって思うな。

今回のカフェは・・・Off coffee stand (青山)

東京メトロ銀座線・半蔵門線、都営地下鉄大江戸線の青山一丁目駅から徒歩5分。2022年3月にオープンしたばかりの、おしゃれなコーヒースタンド。おすすめは、長野県産の「オブセ牛乳」を使ったカフェオレ。4種類のジェラートも人気です。

Off coffee stand
住所:東京都港区南青山1-10-3
営業時間:月〜金7:30〜17:00/土12:00〜18:00 日曜定休
Instagramアカウント:https://www.instagram.com/offcoffeestand/

Photo: Kaori Someya
Text:Sayuri Otobe
Edit:Atsuko Arahata

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Atsuko Arahata

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