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なぜ生きるの? 「3.11」のあの日から抱き続ける疑問と戦う映画監督【遠藤百華・19歳】

なぜ生きるの? 「3.11」のあの日から抱き続ける疑問と戦う映画監督【遠藤百華・19歳】

「気になる10代名鑑」の350人目は、遠藤百華(19)さん。大学で映像や芸術について学びながら、自主映画の制作をしています。東日本大震災で被災し、その後の考え方に大きな影響を与えたと話す遠藤さんに、創作活動に込めた思いを語ってもらいました。

遠藤百華を知る5つの質問

Q1. いま力を入れている活動は?

「デジタルハリウッド大学で映像や芸術全般を学びながら、短編映画を制作しています。いまは初めての作品『死にたがりの君へ』を撮影中です。私は脚本と監督を担当しています。20歳という節目で、何かを残したいと思って。

昔から映画に興味があったというわけじゃないんです。高校の文化祭で、クラスでひとつの映像作品をつくることになって、たまたま監督と撮影を担当することになりました。みんながやりたがらないから、仕方なく引き受けたのに、それまでに経験したことないくらい夢中になってしまって。それがきっかけで、映像の道に進むことを想像し始めました

 

Q2. なぜ活動を始めたんですか?

『なんで人は生きているんだろう』という考えがずっと根底にあって、その思いを、表現活動で消化させるため……かな。

小学1年生のとき、東日本大震災があって。そのときから、『簡単に死んでしまうのに、なぜ生きる?』という疑問をなんとなく持っていて。コロナ禍と、進路を決める時期が重なっていたのもあって、高校2年生のとき、それまで蓋をしてきたその思いが爆発してしまったんです。

人に弱音を言える性格じゃなくて、当時は消化しきれない思いを絵にぶつけていました。泣きながら手に絵の具を付けて描いたりしてましたね(笑)。いまは乗り越えましたが、当時は、この世からいなくなってもいいかなって、本気で思っていました」

 

 

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Q3. 伝えたいメッセージは?

「短編映画『死にたがりの君へ』は、自分の人生との向き合い方や目に見えないものをテーマに撮りました。シンプルだけど、生きていたほうがいいということを、ぼんやりとでも感じてもらいたいです。

死にたい時期を乗り越えた自分だからこそ、『本当に生きたほうがいいよ』『先の不安ばかり見ないで、いまを大事にしていればなんとかなるよ』っていうことが、何となくでもいいから、観てくれた人に伝わったら嬉しいです。

この作品は、自分のための映画でもあって。高2のつらかった時期の記憶や感情を忘れないためでもあるんです。あのときのことを思い出すと、目の前のことを大事にしようって頑張れるんです」

Q4. 創作活動を通して、考え方に変化はありましたか?

「脚本を書くためにひとりでカフェに行ったのに、結局ボーッとしてしまって少しも進まずに帰ったり、『死にたがりの君へ』の制作をきっかけに仲良くなった先輩たちと、人生で初めてカラオケに行ったりしました。

いままでは無駄だと思っていたことが、意外と自分にとって大事なことなんじゃないかと思えるようになって。無駄じゃないかもって思えるようになってきました」

Q5. 新しく挑戦していることはありますか?

「震災をテーマにした、新しい映画をつくっています。脚本はほとんど完成していて、来年の3月11日の公開を目指しています。

当時6歳だった私も、あの日に何が起こったのか理解できるようになって。いまも『3』や『11』という数字を見るといろんなことを思い出したり、考えてしまいます。でも福島から上京してみたら、震災の記憶はかなり忘れられているように感じて……。

10年が経ったいまでも苦しんでいる人は多い。忘れたいつらい記憶だけど、でも、そういう人たちのことが忘れられてしまうのは、なんか違うなって思う。だから、これからも震災のことや、自分のつらかった気持ちを、映画として残していきたいと思います」

遠藤百華のプロフィール

年齢:19
出身地:福島県
所属:デジタルハリウッド大学、東京学生映画祭
特技:早く歩くこと
大切にしている言葉:メメント・モリ(死を想え/ラテン語)

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Photo:Eri Miura
Text:Minori

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Minori

ライター

2000年生まれ、神奈川県出身。明治学院大学社会学部在学中よりインターンとしてライター活動を始める。Steenzでは「気になる10代名鑑」のインタビューと記事執筆を担当。また、大学在学中にモデル活動を開始。広告や映像作品への出演、ライフスタイルの発信に力を入れている。

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