「美術館」「ギャラリー」って聞くと、ちょっと大人な印象を受けちゃう? いやいや、10代が楽しめるアート展やデザイン展って、実はたくさんあるんです! ということで、10代にしてプロのデザイナーとして活躍する工藤俊祐さん(18)が、今いちばん気になっているという展示に突撃し、その感動をレポートしてくれました。
今日の主役は、作品ではなくデザインです
こんにちは、工藤俊祐です。都内の美術大学で勉強をしながら、グラフィックデザインやウェブデザインのお仕事をしています。
今回訪れたのは、有楽町のギャラリー「GOOD DESIGN Marunouchi」で開催されている「漫画とデザイン展」。私が興味のある分野が、印刷物やタイポグラフィ(活字を適切に計画・配置・配列することで文字の体裁を整える技芸)であることから、訪れたかった展示のひとつでした。
実は私、恥ずかしながらしっかりと読んだことのある漫画作品は『ブラック・ジャック』くらいしかありません。逆に、これまであまり触れる機会のなかった漫画を取り巻く世界が、どのようになっているか知りたかったことも、この展示に惹かれた一因です。
実際に展示を見て、最初に感じたのは、展示を企画した方々の、漫画とデザインに対する熱い思い。実際に、印刷を疑似体験できるようなコーナーや、装丁を手掛けるデザイナーの方々への貴重なインタビュー、事細かに解説された作品に施されている工夫や企てなど、とてつもない情報量からも、漫画とデザインへの愛が伝わってきます。
特に、具体的にどんな紙が使われているのか、印刷方法、印刷加工の種類まで解説されていたことに関しては、印刷物好きなのもあり、嬉しさで声を出してしまいそうになりました。
解説を読みながら、実際に漫画を手に取れる!
会場では、解説されている漫画を、実際に手にとって見ることができるんです。解説されている作品のほとんどを実際に見ることができて、「漫画」という媒体であるからこそ生まれる価値や魅力を、展示を訪れた人自らが体験することができます。
私自身も、実物を手に取りながら中に散りばめられた「企て」を見つけるたびに、それを手掛けたデザイナーや編集者、作家の方々が喜ぶ姿が浮かんできました。また「このデザインはこのような効果を狙ってなされているのではないか……」など、探偵のような気持ちで読み漁っていました。
視覚と触覚の両方から物語を語りかけてくるような、魅力的な作品の数々を手にすればするほど、デジタル書籍にはない漫画本の沼にハマっていきます。本来は1時間ほどの滞在を予定していたのですが、夢中なあまり気がついてみれば2時間半も経過していた……(しかも、それでも飽き足らずに、日を改めてもう一度伺いました)。
「漫画的な仕掛け」満載の展示空間も魅力
またこの展示の魅力は、圧倒的な情報量や体験だけにとどまりません。空間そのものに施された「企て」にも、終始惚れ惚れしていました。
特に興奮したのが、漫画デザインの歴史紹介コーナー。解説している年代の作品の特徴に合わせて、パネルのデザインや文字まわり、紙の焼け具合までが設計されていました。企画チームの方々の圧倒的情熱を、ここでも感じます。ここまで充実した展示を無料で見られるなんて、夢のようでした。
漫画におけるデザインの難しいところは、作品を邪魔しないで、いかに魅力的な形へと落とし込むか。この展示を通して、デザイナー自身も内容を熟知し、作品の世界観やコンセプトを最適な方法でデザインに落とし込んでいるからこそ、受け取り手である我々の目に、作品が輝いて見えるのではないかと感じました。
作品に施された、人に語りたくなるような創意工夫によって、単に漫画を読むという行為が、一連の「体験」として昇華される……。読者と作家をつなぐ架け橋がデザインの役割なんだなと、改めて考えさせられました。
そんな奥深い世界を、みなさんもぜひ体験してみてはどうでしょうか。
Text&Photo:Shunsuke Kudo
漫画とデザイン展 概要
会場:GOOD DESIGN Marunouchi
住所:千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル1F
会期:2022年2月28日(月)〜3月31日(木)
開館時間:11時〜20時 ※最終日のみ18時閉館
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工藤さんも参加する、9人の武蔵美生によるグループ展(3月25日〜3月27日)も要チェックです。