「気になる10代名鑑」21人目は、入管問題と向き合う大学生、宮島ヨハナさん(19)。高校3年生のころから、弁護士や政治家、アクティビストらとともに「入管問題」に向き合い、難民・移民支援に関する活動に取り組んでいます。牧師の父の下で育った彼女のルーツや価値観、今後についてお話してもらいました。
■宮島ヨハナを知る10の質問
Q1. プロフィールを教えてください。
「静岡県出身、19歳。中高はインターナショナルスクールに通い、現在は国際基督教大学に在学しています。海外にルーツを持つ子や帰国子女の友達とよく遊ぶので、友達との会話はJapanglish (日本語と英語のミックス)で話すことが多いです。
高校3年生のころから入管問題、つまり日本へやってくる外国人の出入国管理についての探究や発信をしています」
Q2. 入管問題に興味を持ち始めたきっかけは?
「当時通っていた高校で、卒業研究をするにあたって、論文のテーマを探していたんです。ジェンダーや教育…どんな社会問題を取り上げようかと思っていたときに、入管問題を選びました。
父が仮放免者(一時的に収容を解かれた人たちのこと)の保証人をしていたこともあって、幼いころからそういう方々と接する機会がありました。日本の入管では、日本とは思えないような人権侵害があるという事実を知って、すごくショックを受けて。そこから、これを機に調べてみようと。ちなみに、当時の校長先生が私の論文指導をしてくれました」
Q3. 難しい問題ですが、どんなことを大切にして向き合っていますか?
「誰に対しても偏見を持たないようにすること。不法滞在者全員が犯罪者ではないのに、そう感じてしまうように、誰しも『潜在的なバイアス』をもっていると思うんです。
私自身、潜在的バイアスを測定するテストを受けて、自分でもまったく気づいていないバイアスをもっていることを自覚しました。まずは自分の潜在的バイアスを認識し、そこから偏見を解いていくことが重要だと思っています」
Q4. 勇気を出して声をあげ続ける原動力はどこからきますか?
「それまで何かのアクションに参画したことがなかったので、最初は怖かったです。しかも、いろいろな考え方の人がいるので、批判的なコメントをしてくる人も少なくない。それでも、近くにいてくれる友人や先生、家族に背中を押してもらっています。
それから、黒人差別への反対運動に取り組んでいたアクティビスト、ローザ・パークスさんの “You must never be fearful about what you are doing when it is right.” (正しいことをしているのなら、決して恐れてはいけない)という名言に、何度も勇気をもらいました」
Q5. これから、どんな社会になってほしいと思いますか?
「どんなバックグラウンドやアイデンティティの人でも、お互いの違いを尊重し、お互いを愛しあえる社会になってほしいです。
入管問題っていうのは、日本人からすると他人事に聞こえるかもしれません。だからこそ、当事者意識を持つことが大事なんじゃないかな、と。『自分がもしその立場だったら』って、その人の立場になって考えてみる必要があると思っています。
きれいごとに聞こえるかもしれないけど、社会が変わるために必要なことは『愛』だと、私は信じています。ひとりひとりが、それぞれの違いを抱えながら、自分は愛されるために生まれたということを知ってほしいです」
Q6. どんなときに生きがいや幸せを感じますか?
「日常的な些細な出来事に幸せを感じます。例えば、友達と夕日を見ているとき、ひとりで大学のキャンパスの紅葉を眺めるとき、家族と映画を見るとき…。映画はだいたい洋画を観ます。1歳下の妹とは、一緒に旅行に行ったり、クリスマスにお菓子を作ったりするぐらい今でも仲良しだし、友達とはキャンパスの近くにある井の頭公園でピクニックしたり。
自然の中で過ごす時間や自分にとって大切な人と過ごす時間が、私にとっていちばん幸せだなぁと感じます」
Q7. 宝物を教えてください。
「日記です。小学1年生のときに、父から5年分の日記帳をプレゼントしてもらって、そこからずっと書き続けています。殴り書きする日もあれば、『眠い』ってひと言書いて終わる日も。
日記を書いていてよかったなと思うことは、後で読み返したときに、そのときはすごく悩んでいたことも全然ちっぽけなことに思えて、自分の成長を実感する瞬間。あと、1年前の今日はこんなことしてたんだぁって、読み返すときが楽しいですね」
Q8. 生きるうえでのポリシーはなんですか?
「私、クリスチャンなんです。クリスチャンとして、『神を愛し隣人を自分のように愛しなさい』という言葉をすごく大切にしています。ここでの隣人は、自分の周りにいる日本人だけではなく、在留資格のない外国人やホームレスなど、弱い立場にいる人のことも含まれていると思っていて。
クリスチャンとしてのアイデンティティがあったからこそ、今こういった活動ができているんじゃないかな」
Q9. 今後の展望は?
「起業とか、NPOの立ち上げにすごく興味があります。大学に入学して、難民移民支援サークルを学内で立ち上げたんですが、マネジメントする難しさと日々向き合っているところです。
でも正直、今はいろいろなことに興味がありすぎて、はっきりと『これがしたい』っていうのが決まっていなくて。学生のうちにいろんな分野の方と関わっていく中で、何らかの社会問題の解決に取り組みたいし、弱い立場にいる人たちの支えになれるような活動を続けていきたいと考えています」
Q10. 同じ時代を生きる10代にメッセージをお願いします。
「社会問題に対して声をあげるということはとても勇気がいること。初めは、周りの目だったり、批判されることに対して怖くなってしまうと思います。でも声をあげることで、救われる人や勇気づけられる人が、絶対にいます。
今の時代、特に10代の人には、InstagramだったりTwitterだったり、発信するプラットフォームは山ほどあります。社会に対する違和感を誰かひとりでも発信したら、連鎖反応的にちょっとずつ広がっていく。そうやって問題意識を広めることで、解決に一歩でも近づけると思っています」
■宮島ヨハナの今日のファッション
「今日のファッションのポイントは、古着屋さんで見つけたコートです。ブレスレットはカンボジア支援に取り組んでいる友人からのプレゼント。お守りのようにつけています」
■宮島ヨハナのSNS
Photo:Eri Miura
Text:Ayuka Moriya
Edit:Takeshi Koh