
『ひなた、少し前まであんなに俺のこと好きだったのに、彼氏出来たんだね。』
なんてずるいセリフなのだろう。腹が立つ。わたしがあんなに好きって、会いたいって伝えていたのに全く反応を示さなかったのはそっちじゃないか!友達伝いでダルがっていたのも知っているんだぞ。今更なんなんだよ!結構好きだったんだぞ!
彼のことを好きだったのは、わたしがまだ学生だった頃。彼のを好きだった理由は、今考えてもよくわからない。なんとなく側にいたい人で、気がついたら目で追ってしまっている自分がいた。時折見せる弱い姿、なんだかムダに儚く見えていた。放っておけないタイプの人だった。
女の子はそういう男に弱い。心配させられて、うまく頭の余白に入り込んでくる。うまいけど狙っているわけではなく、なんだろう。きっと人を惹きつける「何か」を持っていて、その「何か」が女の子たちを魅了しているんだろうか。つまり彼はミステリアスだった。
ミステリアスな男とは?
わたしは「何か」を感じる人が好きだ。その「何か」が一体全体何なのかは分からない。分からなくていい。分からないからいいまである。
きっとわたしは、恋愛を小説のように妄想で楽しむことが好きなのかもしれない。
どういうことかって、ミステリアスな男は、「考える余白」を与えてくる。だから恋がしやすくて、惹かれやすい。人は何を考えているのか分からない相手こそ、何を考えているのか自然と考えてしまう。無意識に彼のことを考えてしまって、特別なキッカケもなく、気づいたら恋してしまっている。
そのくせ、彼らは自分に気があるとわかると少しダルそうにする。連絡も雑になる。そしてわたしはまたムダに彼のことを考えてしまう。変なループにハマってしまうのよ。
だから「何か」を持っているミステリアス男子は、危険なタイプが多いとわたしは思う。というか多かった。
彼にとって意味のない優しさが、わたしたちにとっては意味のある優しさになってしまう。
わたしが思うその危険なタイプは、恋愛においてもっとも罪深い行為、「思わせぶり」をする人でもある。
彼にとっては意味のない優しさが、わたしたちにとっては意味のある優しさになってしまう。そこに感情のズレが生まれて、埋まることのない溝ができてしまう。ミステリアスな男子は、自分も思わぬうちに恋をされていて、あまりにも自然な優しさが女の子の恋心に拍車をかけてしまうのだろう。
私も最初はただ気になるだけだったのに、気がついたら本気で彼を追いかけてしまっていた。毎日彼からの連絡を待っていたし、何をしていても、「ここに彼がいたらなあ」と思っていた。
だけど、わたしたちが忘れてはいけないのは、本人たちは全く思わせぶりをしているつもりが無いところ。(もちろん人の気持ちを利用する人だっているから気をつけてね)。
そういう人たちは言うだろう、「そんなつもりじゃなかった」と。何度このセリフであっけなく振られたことか……。考えると悲しくなるけど、仕方のないこと。彼らは毎回本気じゃなかったのに、わたしは毎回本気で追いかけていた。入り口はなんとなく好きなだけだったはずなのに、最後は本気で好きになっていた。
そして、本気で恋をすればするほど傷つくし、流す涙の量も増えていく。でも傷ついて泣いて立ち直るまでが一つの恋。結ばれたとしても、結ばれなかったとしても、恋をした以上、大なり小なり傷はつくものだと思うから。
本気で恋するってかっこいい
こうやって書くと、本気で追いかけてしまっていたことが恥ずかしいように読めてしまうかも知れないけれど、わたしはそうは思わない。誰かを好きになって、本気で追いかけることを、わたしは、カッコいいと思う。
相手が自分に本気じゃなくたって、何も恥ずかしくない。
気持ちを伝えて砕けるのは、一瞬のこと。数行で終わってしまうメッセージだったり、数分で終わってしまう会話かも知れない。だけど、その数行、数分を実行できる人はなかなかいないし、勇気のある行為であることに変わりはない。意外といないんだよ、砕けられる人って。
だから、本気で恋をして振られて傷ついて、涙を流している自分を誇りに思ってほしい。いつか傷つくことが怖くなって、恋愛から遠ざかる日が来たっていい。そんな時は全力で恋をしていた自分をぎゅうっと抱きしめて、恋をおやすみしたらいいよ。
わたしはミステリアスな男に何度も恋をして、傷ついて、泣いて、立ち直るたびにほんの少し強くなれた。もちろんそんな男子には気をつけて欲しいけれど、どんな恋にも学びがあるから、一つの恋が終わるたびに自分を労わって、レベルアップしていったらいいと思うのです。
Edit: Himari Amakata