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選挙カーってこんな世界!? ノリで乗ってみたら謎アイテムに遭遇した話【政治POPS. #4 】

選挙カーってこんな世界!? ノリで乗ってみたら謎アイテムに遭遇した話【政治POPS. #4 】

誰かが、「日本は平和だから、若者が、政治に興味を持たずにすむ」とか⾔っていたらしい。でも、政治は未来の国を良くするためにあるのなら、きっとホントは僕らのもの。なんでもいいから、興味を持とう。政治の話はそれからだ。

政治をポップに発信していく新企画「政治POPS.」。フリーライターの中村眞大がナビゲーターとなり、10代の皆さんを楽しくわかりやすい政治の世界へと誘います。今回は、東京都議会議員選挙の現場をゆるっとレポート!普通に生きてたら、選挙カーに乗る日なんて来ない。そんな“非日常”に、まさかの飛び込み体験してきました!

暑い初夏にアツい選挙区を見に行った!

暑さが顔をのぞかせた6月18日、僕は気温が下がる夕方になるのを待って、東京都議会議員選挙を見に出かけた。「わざわざ選挙を見に行くの?」と驚かれるかもしれないけど、実は街に貼られたポスターやユーチューブにアップされた候補者の動画を観るより、生で観たほうが何倍も面白い。スポーツもテレビで観るより、生で観たほうが面白いのと同じだ。

僕が向かったのは、町田市選挙区。東京でも一二を争う「激戦区」で、4人の枠に8人が立候補していて、専門家や記者の間でも「誰が通るか全く読めない」と言われていた地域だ。僕が町田を選んだ理由はもう一つある。知り合いの議員が2人も立候補していたからだ。どちらも僕が取り組んでいる校則問題に理解のある人たちで、ぜひ応援したかった。

激戦区・町田市選挙区

録音小池知事?空中スピーカーとの追いかけっこ

町田駅のロータリーに出ると、すぐにどこかから演説が聞こえてきた。

「町田市の皆さん、小池百合子です。今回の選挙…」

でも、さっき僕の住んでいる東京の真ん中らへんでたまたま“本物”の小池百合子東京都知事を見たばかり。きっと録音を流してるんだろう。でも気になるなあと思って、音の鳴る方に走っていくと、いつの間にか音は遠のいている。あれ?と思って引き返すと、いつの間にか通り過ぎてしまっているようだった。これではまるで、タヌキのお囃子に化かされた昔話のようだ。2周くらいしかけたとき、ようやく音の出所がわかった。駅前ロータリーの上にある連絡通路。まさかの“頭上”だった。

ちょっとわかりにくいけど、こんな感じ

選挙を巡っているジャーナリストですごい人になると、車を運転しながら遠くから微かに聞こえてくる選挙カーの声から候補者を特定して追いかける人もいる。まるで山でクマを追うマタギだ。それに比べると、僕はまだまだだなと思った。

階段をあがると、会いたかった候補者の一人、藤井晃さんが通行人にビラ配りをしている真っ最中だった。その横に置かれたスピーカーから、小池知事の応援ボイスがリピートされていた。通行中のおばちゃんが『がんばって』と声をかけ、候補者もしっかり握手。選挙ビラは無視されることも多いから、こういう場面に出くわすとこちらまで胸が熱くなる。

チラシを配る藤井さん

流れで選挙カー初乗車!? 車内で見つけた謎アイテム

次に向かったのは、町田駅の北側。演説を終えて選挙カーに乗り込もうとしていたのは、池川友一さん。僕が会いたかった、もう一人の候補者だ。町田に突然現れた僕を見て、彼はめちゃくちゃ驚いていた。
そして彼はこう言った。
「え、乗ってく?」

ノリ軽!! 実は僕はまだ選挙カーに乗ったことがなかった。普通に生きていて選挙カーに乗る機会なんてないだろうし、実は前から“いつか一度は乗ってみたい”と思っていたので、お言葉に甘えてワンボックスの選挙カーに乗り込んだ。

一番後ろの座席に乗り込んで車内を見渡すと、面白いものがいっぱい。困惑するボランティアの人たちに軽く自己紹介をしてから、僕はまるで憧れの消防車に乗せてもらった子どものようにキョロキョロと観察した。

「日本共産党の池川友一、池川友一」
僕が車内を観察しているあいだにも、選挙カーは町田の道を走っていく。

僕が乗った選挙カー

真っ先に目に入ってきたのは、僕の真ん前に垂れ下がっていた一番後ろの座席と運転席とをつなぐ謎のホースのようなもの。エアコンの風を送るためのものかと思いきや、どうやら違った。マイクを使ったアナウンスの音で、最後部から運転席へ話しかけるのはかなり難しい。そんなときに、後部座席から運転席へ指示を出すための言わば糸電話的なものらしい。「どのエリアをどのルートで回るかが勝敗を左右する――そんな選挙ならではのアイテムだ。

運転席へ繋がる謎のホース

真ん中の列の座席では、「ウグイス」と呼ばれるアナウンス担当のスタッフが、原稿に添って、一言一句正確にゆっくりと読み上げていた。原稿のすぐ右横にはのど飴が。そして左下の台の上にものど飴が…。ウグイスってやっぱり大変なんだろうな…。

のど飴は必需品だ

“手振り100”をカウント!?プロの観察力

選挙カーで一番すごかったのは、車内から道行く人を観察する候補者やボランティアの能力である。まず、沿道の人が「頑張ってください!」と手を振り返そうものなら、誰かがすぐに見つけて「お手振り!」とウグイスに共有、すかさず「手を振ってのご声援、ありがとうございます」と返すのだ。この手を振り返してもらった回数もしっかりカウントしていて、一日の終わりになると共有される。ちなみにこの日は15時から20時までのあいだで「100手振り」だった。
選挙カーが選挙事務所に帰ると、バックで駐車させていく。後ろを見ると、いつの間にか降りていた候補者が「オーライ!オーライ!」と、自ら誘導していたのには驚いた。「いや、こんなことまで候補者がやるんかい」とツッコミそうになってしまったが、それにしてもものすごい体力と気遣いだ。

選挙カーを誘導する池川さん

たった数時間だけだったが、激戦区の空気を感じ取って、僕は町田を後にした。この記事が出るころにはちょうど参議院議員選挙が始まっているだろう。都議選は東京都代表を決める選挙だが、参院選は日本代表を決める選挙で、日本全国の都道府県ごとにアツい戦いが繰り広げられる。
暑さが予測される夏だが、夕方からでもこんなふうに選挙は十分楽しめる(もちろん選挙カーに乗れたのはレア中のレアだけど)。政治って怖いとか堅苦しいなんてイメージがあるけど、そんなことはない。ぜひ観光地を巡る感覚で選挙を巡って、候補者たちの違いや現場の空気感を見比べてみてほしい。

「政治POPS.」はまだまだ続きます!お楽しみに~!

〈東京都議会議員選挙2025 町田市選挙区開票結果〉
🌸都民 藤井晃 39,739票
🌸自民 星大輔 27,849票
🌸立憲 東友美 25,582票
🌸公明 村松俊孝 23,285票
国民 広田悠大 21,091票
共産 池川友一 18,224票
再生 滝口昭彦 6,950票
再生 浅井直之 6,244票

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Masahiro Nakamura

ライター

2002年生まれ。小学校低学年の頃、校門横にあった選挙掲示板のポスターをきっかけに政治に興味を持つ。小学校5年生で友達と架空政党「政治改革党」を結党するも程なくして消滅。中2のとき、突然思い立って生徒会長選挙に立候補、思いがけず当選。高校3年次に校則問題をテーマにしたドキュメンタリー映画『北園現代史』を制作し、大学入学後から本格的に取材・発信活動を始める。趣味は一人旅。編著『わたしたちの世界を変える方法 アクティビズム入門』。

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