
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、国内外で発生している外来植物の被害と、問題解決につながるケニアの取り組みについてご紹介します。
水辺に広がる外来植物が問題に
近年、国内外の水路やため池、河川などの水辺に外来種の植物が過剰に繁殖し、問題となっています。外来種とは、簡単に説明すると、本来であれば生息しない場所へ、人間が直接的あるいは間接的に持ち込んだ動物や植物などのことです。日本における外来植物としては、「ホテイアオイ」や「ナガエツルノゲイトウ」などがあります。
調査中に外来種の水草が4種まとまってあるのをみつけました。オオカナダモ、ブラジルチドメグサ、ホテイアオイ、オランダガラシ(クレソン)です。このうちブラジルチドメグサは外来生物法に基づく特定外来生物に指定されており、栽培や遺棄を行うと罰せられます。 pic.twitter.com/tS9CipDLIY
— 福岡県保健環境研究所 (@Fihes_Fukuoka) November 29, 2021
外来種の植物が過剰に繁殖すると、治水や利水、漁業に影響を与えたり、植物によっては花粉症を引き起こしたりします。その他にも、昔からその地に生息していた生き物が排除されてしまったり、在来種に寄生し病原になったりと、生態系の基盤を揺るがす危険性もあります。生態系が変化するということは、その地の景観も変わりかねません。外来種は、人や生態系にさまざまな影響を及ぼしているのです。
ホテイアオイによる国内の被害は?除去作業に1000万円かかった地域も
それでは、実際にどのような被害が出ているのでしょうか。例えば、先ほど名前を挙げた「ホテイアオイ」は、南米原産の植物。明治中期 に鑑賞用・家畜飼料用として輸入され、昭和初期には国内の自然環境下で野生化した、多年生の浮遊植物です。日本では北海道を除く46都府県に分布しており、国の「生態系被害防止外来種リスト」では、対策の必要性が高い「重点対策外来種 」にカテゴライズされています。生態系に多大なる被害を与えることから、「青い悪魔 」とも呼ばれているそうです。
2020年には、香川県高松市に位置する「春日川」で、ホテイアオイが大量に発生しました。当時、約2キロにわたり、川の水面を覆ったそうです。この状況に対し、香川県は悪臭や景観悪化などを懸念し、同年10月から4か月間にわたり撤去作業を実施しました。そのときにかかった費用は、 1000万円以上にのぼったとのこと。撤去の大変さがうかがえます。
ホテイアオイ被害はケニアでも
ホテイアオイの被害は、国内にとどまらず、海外でも発生しています。2024年、ケニア共和国(以下、ケニア)のナイロビ北西部に位置する「ナイバシャ湖」では、ホテイアオイが宇宙からも確認できるほど水面を覆いつくす状況が発生しました。ホテイアオイで日光が遮られたことにより、湖の水中酸素濃度が低下、魚の個体数減少を引き起こしました。現地の漁師も、以前は1日90キロ以上あった漁獲量が現在は10~15キロまで減少したと話しているそうです。
Sustainability grows on a circular economy. And this starts at grassroots.
Community engagement in environmental decisions holds much potential for impact in the 1.5° conversation & creation of green jobs 💚@unep_africa @UNEP @_nguthiru#Waste2Cash #greenjobsforyouth #go4sdgs pic.twitter.com/960u0wB56i— HyaPak (@HyapakEco) July 31, 2023
そのほかにも、ホテイアオイが船のエンジンに絡みつき、湖を船で進むのが難しい状態になっています。漁師の中には、湖に入ったはよいが動けなくなり、3日間閉じ込められてしまった人もいるようです。さらに、2020年10月に大雨が降り、湖の水位が上昇したときは、ホテイアオイが人々の居住地にまで流れ込み、玄関先に生い茂る事態に陥りました。
ホテイアオイをバイオプラスチックに変えるケニアの取り組み
そうしたホテイアオイの問題を、ケニアのスタートアップ企業である「HyaPak Ecotech Limited」は画期的なアイデアで解決しようとしています。その方法が、乾燥させたホテイアオイに結合剤や添加剤を混ぜ、バイオプラスチックを製造するというもの。ホテイアオイから生まれたプラスチックは、包装紙やストロー、使い捨て皿などになり、使用後は3か月〜12か月ほどで生分解(※)されます。
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また、ホテイアオイ由来のプラスチックを苗の包装材に使用すると、分解後に栄養分を放出し、植物の成長も促進できるそう。加えて、灌漑用水の削減にもつながるそうです。ちなみに原料となるホテイアオイの収穫と乾燥は、地元の漁師たちが担当し、同社に販売するスキームを構築しています。環境問題の解決に近づくだけでなく、漁師たちの新たな収入源も生み出しているのです。
※生分解:バクテリアや菌類などの微生物の働きで、有機化合物が水と二酸化炭素といった無機物に分解されること。
身近な場所に潜む外来種、処理の仕方にも気をつけて
さまざまな理由から、人為的に持ち込まれた外来種。在来種と共存できれば良いですが、そうはいかない外来種も多く、それらが日本も含めた世界各国でさまざまな問題を引き起こしています。
ケニアの事例のように、多方面に良い影響を与えながら問題解決を図れる取り組みは、今後さらに増えていくのではないでしょうか。また、今回注目したホテイアオイは水草としても販売されています。意外と、わたしたちの身近に存在しているのです。もしもご自身で栽培していたものが役目を終え、処理に困っている場合は、必ず可燃ゴミとして出しましょう。わたしたちの小さな配慮が、外来種被害の抑制につながります。
Reference:
Ⅰ外来植物対策の考え方|国土交通省
ホテイアオイ|国立環境研究所侵入生物DB
ミズヒマワリ|国立環境研究所侵入生物DB
水草を利用される皆さまへ|環境省
Text:Yuki Tsuruda