
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、日本最大級のスタートアップ展示会『Startup JAPAN 2025』で見つけた、いま注目のスタートアップ企業やプロダクトについてご紹介します。
国内外のスタートアップ企業が集う大規模な展示会『Startup JAPAN』
国内トップクラスの規模で展開しているスタートアップ企業の展示会『Startup JAPAN』。2023年にスタートしたこのイベントが、今年も東京・江東区にある東京ビッグサイトでおこなわれました。今年は、5月8日(木)と9日(金)の2日間にわたって開催。主催企業の発表によれば、今回は日本や韓国、台湾などから過去最多の380社が出展したといいます。来場者もおよそ1万人に。いま、大きな注目を集めるスタートアップ関連のイベントです。
今回、そんな『Startup JAPAN 2025』を5月8日に取材したので、レポートを全2回の記事でお届けしたいと思います。同イベントでは、本当にたくさんの魅力的なスタートアップ企業やベンチャー企業と出会うことができました。前編となる本稿では、「これからの日本で多くの人や企業に求められるのでは?」と感じたZ世代発のスタートアップ企業をご紹介します。
Z世代の兄弟が起業!「AI×人」による動画翻訳サービス
まず取り上げたいのが、株式会社こんにちハローです。同社は、AIと人の力を掛け合わせ、安価ながらも高精度な動画翻訳サービス『こんにちハロー』を提供しています。このサービスの最大の特徴は、動画に登場する人物の声と唇の動きを他言語で再現できること。例えば、日本語で商品説明をおこなっている動画を中国語に翻訳した際、話し手がネイティブの中国語話者のように自然な中国語で商品について解説している動画を作成できます。
この投稿をInstagramで見る
筆者も展示会の出展ブースで、ある旅館のPR動画を翻訳した事例を見たのですが、最初の動画では女将さんが日本語で旅館の説明していたところ、次の動画では口の動きまで本当に自然な英語や中国語に切り替わっており、そのクオリティの高さに驚きました。
こうした動画翻訳の質を実現できるのは、翻訳や口の動きの再現にAIを活用するだけでなく、人の目によるチェックも挟むためです。ブースでCSOの早見泰星さんに話を聞いたところ、「動画を翻訳した際、言葉の流れや唇の動き、イントネーションなどをより自然なものに近づけるために、必ず人によるチェックと微調整を入れるようにしている」と教えてくれました。言葉のチェックをおこなう人材は、東京大学の学生などのネットワークを活用。37カ国語に対応できるほど、スタッフが集まっているといいます。
地元愛がサービス立ち上げの背景に
こうしたサービスを立ち上げた背景には、CSOの泰星さんと、彼の弟でこんにちハロー代表の早見星吾さんの地元愛、そして画期的な動画生成AIサービスとの偶然の出会いがありました。
<ご報告>
「こんにちハロー」は東京都中小企業振興公社の事業可能性評価事業で「事業可能性十分あり」と評価されました。■事業可能性評価事業とは
新たな事業の展開を目指す個人・企業の新規事業計画を、経営・財務・法律など各分野の専門家が総合的に評価し、事業化に向けて支援する事業です。… pic.twitter.com/Zo1ICyXFdP— こんにちハロー (@_konnichihello) April 18, 2025
2001年と2003年にこの世に生を受けた泰星さんと星吾さん。2人は築地で生まれ育ってきました。早見さん兄弟が大学に通っていた2023年のある日、弟の星吾さんが、台湾出身の知人で、現在は株式会社こんにちハローの社外取締役を務めるアレックスさんのアメリカ出張に、英語通訳も兼ねたインターン生として同行することとなりました。
その際、星吾さんは現地でアメリカ企業発の動画生成AI「HeyGen」と出会います。このサービスを見て、「人の手を加えれば、動画翻訳サービスが実現できるのではないか?」と考えた星吾さん。日本は昨今、かつてないインバウンド需要に沸いています。安価で、かつ高精度に動画の内容を他言語に翻訳できるサービスがあれば、地元・築地にある中小規模の飲食店の人たちも外国人観光客に対して積極的にサービス提供ができ、これまで存在していた言語の壁を取り払うことができるのではないかと、動画翻訳サービス『こんにちハロー』を立ち上げるに至ったのです。
こうした想いのもとにつくられたサービスのため、利用料は30秒までの動画で5,000円〜10,000円と、非常にリーズナブルです。2024年3月に起業し、同年5月よりサービスを開始したところ、わずか1年ほどで予想外に大手企業からも引き合いがあるほど急成長を遂げているといいます。「ホテルや飲食店、温泉、越境EC、アニメ、映画、ドラマ、化粧品……など、自分たちでも想像していなかった場所で活用されています。リピート企業も多く、サービス内容に満足していただけている結果だと思うので、今後も引き続き事業に力を注いでいきたいです」と、力強く語っていた泰星さんの姿が印象的でした。
次回は、「価値を持たせる仕組みづくり」で海洋ゴミ問題の解決に挑む企業をご紹介
『Startup JAPAN 2025』には、生成AIなどの最新テクノロジーを活用したスタートアップ企業だけでなく、環境問題の解決に挑戦するベンチャー企業や合同会社なども出展していました。次回は、そうした環境系の企業の中でも海洋ゴミ問題に取り組む企業をご紹介したいと思います。海洋ゴミを再資源化・再製品化するだけでなく、「価値を持たせる仕組みづくり」をおこなうことで、問題を持続的に解決できるようチャレンジしている会社で、非常に興味深い話をたくさん聞くことができました。
次回は5月27日に公開予定です。どうぞお楽しみに!
Text:Teruko Ichioka