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カップ返却でお金が戻ってくる。デンマークの環境にやさしいデポジットシステムとは?【Steenz Breaking News】

カップ返却でお金が戻ってくる。デンマークの環境にやさしいデポジットシステムとは?【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、使い捨て容器のリサイクルを促すためにヨーロッパでおこなわれている「デポジットシステム」についてご紹介します。

使い捨てカップがお金に!?新システムがヨーロッパに拡大中

環境配慮への意識が、世界規模で高まっている昨今。リサイクル可能な製品の利用を呼びかける声も大きくなっている中、ヨーロッパでは現在、画期的な仕組みが導入され始めています。

その仕組みとは、ドリンクを入れる紙製カップや食事を入れる使い捨て容器などの「デポジット制度」のこと。製品を入れた容器や包装材の回収と再利用を促すために設けられたシステムで、商品を購入した際に消費者が預り金を支払い、使用後に容器や包装材を指定の場所に返却すると預り金が戻ってきます。

ヨーロッパでは、2024年8月16日時点で16の国々がデポジットシステムを導入しているそう。多くの導入都市でカップの回収率やリサイクル率が大幅に向上しているといいます。

 

デンマークのオーフス市が2024年1月から試験プロジェクトを開始

デンマーク東部にあるオーフス市では、2024年1月から、使い捨てコーヒーカップの削減を目的とした3年間の試験プロジェクトを開始しました。

実はオーフス市では、廃棄物の45%がテイクアウト容器で占められているそう。使い捨て容器のゴミが路上に山積みになるなどの問題が発生していたことから、容器をただゴミとして捨てるのではなく、デポジットマシンに入れてリサイクルにつなげてもらえるよう、試験的な運用体制を構築したのだそうです。

今回の試験運用では、専用の使い捨てカップをデポジットマシンに投入後、クレジットカードを提示すると、5デンマーククローネ(約104円)が口座に返金されるというシステムが導入されました。

また返却されたカップは、リサイクル会社「TOMRA」が運営する清掃施設によって回収されます。施設では、洗浄や損傷がないかの確認がおこなわれているとのこと。市内のバーやカフェなど40以上の店舗が専用カップで飲み物を提供しており、段々とリサイクルの輪が広がっているようです。

運用開始から1年。手ごたえはあったのか?

そんなデンマーク オーフス市でのプロジェクト。成功のためには、カップの返却率を82%にする必要がありましたが、プロジェクトが開始した最初の数週間は、返却率が25%と低迷したそうです。しかし、この状況に転機が訪れます。9月に開催された市のイベントで、1週間にわたってデポジット専用のカップを使用した飲み物を販売したのです。その結果、約10万個のカップが返却され、これを機に多くの市民が新しいリサイクルシステムの存在を知ることとなりました。

そうした紆余曲折を経て、現在のオーフス市では、カップの回収率も88%にまで到達。初年度の目標であった50万個を上回り、73万5000個のカップが回収されました。二酸化炭素の排出量も、14トン分削減されているそう。ちなみにオーフス市は、2025年度は150万個のカップの回収を目標に掲げています。

あなたの街のデポジットマシンもチェック

デポジットマシンを用いた改善策は、ヨーロッパだけでなく、今後世界各国へと広がっていくことでしょう。日本ではまだ導入事例が少なく、イベント会場などに限られているようです。これから先、国内でもデンマークのように自治体などを主導とした取り組みが進んでいくといいですね。

Reference:
People are paid to return coffee cups in this Danish city – does it work?|euronews
Danish city tackles single-use coffee cup trash with unique deposit scheme|euronews
Deposit Refund Scheme|WWF
Detailed overview and results of the current deposit return scheme implementations in Europe|SENSONEO

Text:Yuki Tsuruda

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Yuki Tsuruda

ライター

鹿児島県在住のフリーライター。販売職や事務職を経験後、2020年5月からフリーランスのライターへ。執筆ジャンルは、ものづくりやSDGsなど。

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