世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、地球軌道上にある不要な人工物体、「宇宙ごみ」の問題の解決に向けた取り組みについてご紹介します。
未だ増え続ける1億3000万個もの宇宙ごみ
2024年9月、米国の一部人工衛星を対象に、宇宙空間のサステナビリティを目的とした「宇宙ごみ」対策の新ルールの適用が始まりました。宇宙ごみとは、人工衛星やロケットの打ち上げなどの活動により、宇宙空間に発生した廃棄物のこと。その数はなんと、1億3000万個にも及ぶそうです。
人類が宇宙開発を開始した1950年代から現在にいたるまで、さまざまな国や企業が携わっており、近年では、毎年1000個以上の人口物体が宇宙空間に打ち上げられているといわれています。それにともなって、宇宙ごみも増加の一途を辿っています。
宇宙ごみが増えると、どんな問題が起こる?
そもそもなぜ、宇宙ごみが問題視されているのか、その理由を見ていきましょう。
理由のひとつとして挙げられるのは、現在稼働している人工衛星などに宇宙ごみが衝突し、わたしたちの生活にも影響が及ぶ可能性があること。人工衛星は、スマホの位置情報や天気予報など、身近なところでも活用されています。人工衛星と宇宙ごみの衝突が起きると、そうしたサービスが正確に稼働しなくなる恐れがあるのです。
次に懸念されているのは、宇宙ごみが大気圏突入時に燃え尽きず、そのまま地球に落下する危険性です。すでに2024年3月にも、国際宇宙ステーションから落下した宇宙ごみが、米国の民家に直撃した事例が報告されています。
宇宙ごみの除去をリードする「アストロスケール」
わたしたちの生活に関わる問題となりつつある宇宙ごみですが、これらの課題を踏まえて、国内外問わず、解決をめざすための取り組みがおこなわれています。
そのひとつが「株式会社アストロスケール」の取り組み。宇宙ごみ除去に取り組む世界最大級の宇宙ベンチャー企業で、持続可能な宇宙環境をめざしています。すでに人工衛星の軌道上にある宇宙ごみを特定・除去する技術や、これから打ち上げる人工衛星に対して、宇宙ごみの発生を予防するための技術の開発をおこなっているそう。
その他にも、軌道上の状況を把握するシステムの開発や、本社がある日本以外でも、シンガポール、英国、米国、イスラエルにおける民間企業や行政との協働を通じて、グローバル規模で宇宙ごみ問題へアプローチしています。
世界初の「木造人工衛星」を開発!『宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)』
続いては、人工衛星の素材自体に着目し、宇宙ごみ問題へアプローチする「住友林業株式会社」の取り組み。その素材とは「木材」です。
従来の人工衛星の素材は金属で、宇宙空間から大気圏突入する段階で宇宙ごみとなった破片や部品が燃え尽きず、地球上に落下してしまうケースがありました。そこで、住友林業と京都大学の『宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)』は、世界初の木造人工衛星『LingoSat』を開発。環境への配慮に加え、宇宙空間における耐久性も追求しました。
日本の木材資源を活用しながら、宇宙ごみの発生を抑制するサーキュラーエコノミーな発想は、応援したくなる取り組みですね。
宇宙ごみを星座アートに昇華『Space Trash Signsプロジェクト』
宇宙ごみ対策は、先に取り上げたふたつの事例のように、直接的なアプローチだけではありません。『Space Trash Signsプロジェクト』は、米国の宇宙スタートアップ「Privateer」を中心とした共同チームが手がける、アートを通じて人々へ宇宙ごみの認知を広げ、興味をもってもらうことを目的とした取り組みです。
このプロジェクトでは、宇宙ごみを新たな星座と捉え、「宇宙ごみの星座」ひとつひとつに、宇宙ごみに関する問題をテーマにしたストーリーが設定されています。そのストーリーを追うことで、宇宙ごみが人々に与える問題を理解できる作りになっているのです。
古代から人類が親しんできた星座を入り口に、宇宙ごみ問題が広く知られ、身近な問題として考えるきっかけとなることに期待したいですね。
宇宙空間のサステナビリティにも目を向けてみよう
普段の生活では、なかなか意識しにくい、宇宙空間のサステナビリティ。しかし、衛星中継や天気予報から、カーナビ、漁業や農業などの一次産業まで、活用の幅が日々広がる人工衛星は、わたしたちの生活から切り離すことのできない存在です。
国境もなく、共通のルールを設けにくい宇宙空間上の問題は、世界で足並みをそろえて向き合わなければいけない課題でもあります。目には見えないものながら、日ごろから目を向けていきたいですね。
Text:kagari