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ミミズや魚を模したロボットが活躍中!生物の進化に着目した技術「生物模倣」って?【Steenz Breaking News】

ミミズや魚を模したロボットが活躍中!生物の進化に着目した技術「生物模倣」って?【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、生物の行動や機能を真似て、研究に活用する技術「生物模倣(バイオミメティクス)」についてご紹介します。

多様な可能性を秘めた「生物模倣」という技術

生物模倣せいぶつもほう」とは、別名「バイオミメティクス(biomimetics)」と呼ばれ、太古から進化を続けてきた生物の体型や機能、行動などを模倣して、研究や生活に活用する技術のこと。例えば「ヤモリの足裏」から着想を得た粘着テープなど、身近なものをはじめ、「鳥の翼」を模した人力飛行機や、「蚊の吸血針」をヒントとした注射針といった、幅広い研究開発がおこなわれています。

そして現在、こうした技術を活用した「生物模倣ロボット」が、さまざまな分野で活躍をしています。

ミミズの動きで配管を自在に移動するロボット『Sooha』

例えば、中央大学発のベンチャー企業「株式会社ソラリス」は、「株式会社CAST」と共同で、ミミズのぜん動運動を模倣したロボット『Sooha』を開発しました。これまでは工業用の内視鏡を使っても困難とされてきた、細くて複雑な上下水道や、配管などのメンテナンスに役立つとされています。

配管内をミミズのように自在に移動できるのが特徴で、細い配管内の走行をはじめ、配管内の可視化、管内からの正確な管厚測定などが可能なのだとか。

スイスの学生が開発した魚型ロボット『Eve』

さらに世界に目を向けると、スイスの学生が開発した、とある生物の模倣ロボットに注目が集まっています。スイスのチューリッヒ工科大学の学生が開発した、魚型の生物模倣ロボット『Eve』です。

シリコン製の尾びれを器用に動かし、水中を滑らかに移動する姿は、まるで生きた魚のよう。カメラとソナー技術を搭載しているため、自律的に動いて、障害物も回避できます。また、ほぼ無音で移動するため、水中の生物たちを驚かす心配もありません。

さらに、『Eve』の特徴のひとつとして、埋め込まれた特殊なフィルターを使って、「環境DNA」を採取できる点が挙げられます。「環境DNA」とは、地球上の水中や土壌中、空気中など、あらゆる場所に存在する、生物由来のDNAです。

『Eve』によって収集された、生物が放出したDNAを研究室で分析することによって、どのような生物が生息しているのかなど生態系に関する情報を得ることができます。それによって、水中の環境に作用したり、生物を脅かしたりすることなく、詳細な情報を収集できるようになり、海洋生物の保護や海洋研究の前進に貢献できるのだそうです。

「生物模倣」で海洋の謎の解明に迫る

地球の約70%を占め、陸地の2.5倍の広さをもつ海。わたしたち人間は、古来から海産物や海洋資源などを活用し、その恩恵を受けてきました。そんな、暮らしに欠かせない存在である海ですが、深海生物の生態や海底の地形など、実は未だに解明されていない部分が多いことも事実です。

『Eve』をはじめとする「生物模倣ロボット」の開発がさらに進めば、深海の水圧に耐えられる設備や通信手段などの課題を乗り越え、これまで謎に包まれていた海の秘密も解き明かせるかもしれません。そんな未来が訪れることを楽しみに、これからも「生物模倣」の進歩に注目していきたいですね。

Reference:
海の深さと広さ|公益財団法人 日本海事広報協会
Engineering Students Develop Robotic Fish “Eve” to Revolutionize Ocean Research|Fishery News
Eve the DNA-Collecting Robot Fish :A New Ocean-Exploration and Biodiversity Monitoring|COLOMBO TIMES

Text:Yuki Tsuruda

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Yuki Tsuruda

ライター

鹿児島県在住のフリーライター。販売職や事務職を経験後、2020年5月からフリーランスのライターへ。執筆ジャンルは、ものづくりやSDGsなど。

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