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世界最大の緑化計画が進むアフリカ。 サハラ砂漠を横断する「緑の壁」は世界をどう変える?【Steenz Breaking News】

世界最大の緑化計画が進むアフリカ。 サハラ砂漠を横断する「緑の壁」は世界をどう変える?【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、アフリカで進められている、大規模な緑化計画について紹介します。

世界最大の緑の壁をアフリカに

2007年、アフリカ55の国・地域が加盟する世界最大級の地域機関、アフリカ連合(AU)によって承認された『グレート・グリーン・ウォール』という国際的イニシアティブ。

サハラ砂漠の南縁部に位置するサヘル地域の緑化を進める壮大なプロジェクトで、アフリカ大陸を東西に横断するかたちで展開。その規模はなんと、全長およそ8,000kmにも及びます。

 

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プロジェクトには、ブルキナファソ、ニジェール、ナイジェリアなどサヘル地域に属する11か国が参加。2030年までに、サハラおよびサヘル地域の荒廃した土壌を再生し、砂漠化の進行を遅らせて、森林再生を通じて生態系を復活させることを大きなゴールとしています。すでに、世界銀行などからおよそ140億ドルの資金を調達しました。

この巨大プロジェクトが始動した背景には、環境問題の影響を受ける人々と、失われていく生活があります。同地域は気候変動の影響が著しく、砂漠化が進む地域では、いまも多くの人が干ばつや食糧難、水不足などに見舞われています。

さらにサヘル地域では、人口のおよそ80%が、変わりゆく自然に依存する農業や牧畜、漁業に頼って生計を立てています。そのため、環境悪化の影響を受けやすく、たとえばサヘル地域に含まれるニジェール共和国では、深刻な干ばつのため、2020年に22万人もの人が強制移住を余儀なくされました。砂漠化が進む限り、この人数はさらに増えていくと想像されます。

ローカルのためにグローバルな支援を

そんな環境の悪化に対する一手となる『グレート・グリーン・ウォール』。世界規模のプロジェクトでありながら、ローカルに密着した方法で失われた土地の復元をおこなっています。

参加国では、森林再生のために、植林ではなく、地域ごとに消費され、安定して販売もできる農作物の栽培が進められています。栽培方法も、革新的なものではなく、土着の技術が採用されており、例えばブルキナファソやニジェールでは「ハーフムーン」と呼ばれる半月のユニークな池を使用した栽培がおこなわれています。この手法を用いると、乾燥した土地でも雨水を保持しやすいというメリットがあり、コストがかからずに効率よく栽培できるのです。

 

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さらに『グレート・グリーン・ウォール』には、緑化だけでなく、若者への雇用増加や、食糧供給で飢餓を減らすといった目標も含まれています。自然に依存して生計を立てている人が多く暮らす地域で、安定した収穫や仕事は大きく暮らしに影響します。

実際にカメルーンのミナワオ難民キャンプでは、難民が「緑の壁をつくる一員」として参加し、あらゆる供給が不足している難民キャンプで食糧と雇用、収入を生んでいます。

2030年に設定したゴールに間に合うのか

プロジェクトは、2030年までの目標達成をめざしています。2007年の始動から15年が経った2022年、コートジボワールで開催された国連サミットでは、「プロジェクトは30%が完了した」と発表されました。

日本の国土面積を超える規模の森林再生が進み、評価されている一方で、「2030年までに1億ヘクタールの土地を復元する」というゴールにはなかなか間に合いそうになく、進行が遅れているともいわれています。

この背景には、サハラおよびサヘル地域の政治的な不安定さや、水不足が関係していると考えられます。特にサヘル地域では、国際的なテロ組織や過激派組織とつながりのあるテロリストグループの活動が活発です。

加えて、もともと降水量の少ない地域では、雨水を貯蔵する必要があります。そのための井戸の開発など、「そもそも植林を始める環境を整える」ことから必要なのです。

地域ならではの課題に直面していながらも、グレートグリーンウォールは「ローカルとグローバル」の両方にメリットがある、大変期待されている取り組みです。アフリカ大陸を横断する「緑の壁」が実現すれば、世界が直面している環境問題への解決の成功として、世界に影響と希望を与えるでしょう。今後も、グレートグリーンウォールの進行に注目したいです。

References:
United Nations「Great Green Wall Initiative」
United Nations「Desertification」
FAO「SUB-SAHARAN AFRICA」
EARTH ORG「The Great Green Wall: A Wall of Hope or a Mirage?」
United Nations「New observatory to track progress of Africa’s Great Green Wall」
United Nations「THE GREAT GREEN WALL IMPLEMENTATION STATUS AND WAY AHEAD TO 2030」

Text:Hao Kanayama

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Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

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