
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、独自の細胞培養技術をもとに、水産資源の保全をめざすスタートアップ企業についてご紹介します。
暑い夏に食べたいウナギ。実は世界で絶滅の危機に
夏の風物詩のひとつといえば、土用の丑の日に食べるウナギ。ふっくらとした身に、パリッとした食感の皮。夏バテ気味でも自然と食欲がわき、もりもり食べたくなる食材です。
しかしウナギは、以前から絶滅の危険性が指摘されてきた生物。特に、日本で獲れるニホンウナギは、2013年に環境省が絶滅のおそれがある野生生物の状況をまとめた「レッドリスト」で絶滅危惧種に指定。翌年には国際自然保護連盟(IUCN)が絶滅危惧種に指定しました。
ニホンウナギに限らず、アメリカウナギやニュージーランドオオウナギが絶滅危惧種に、ヨーロッパウナギが近絶滅種に指定されるなど、世界各地に生息する別種のウナギも、同様に絶滅の危機に瀕しています。
ウナギ激減の原因とは?
実はウナギは、その生態の全体像が明らかになっていない、謎多き魚です。そのため、なぜ世界各地でウナギが絶滅の危機に陥っているのか、正確な原因がわかっていません。しかし現時点では、「人間による過剰な消費」と「気候変動による生育環境の悪化」の、大きくふたつの要因が指摘されています。
例えば、水産庁の資料『ウナギをめぐる状況と対策について(令和6年6月)』によれば、国内におけるウナギ供給量は2000年がピークで、当時は輸入品も含めて15万トンものウナギが市場に出回っていました。2023年時点でも、輸入量込みで5万トン超のウナギの供給があります。
国内だけでもそれほど大量の需要があるにもかかわらず、ウナギの生育環境は年々悪化。ニホンウナギは太平洋のマリアナ海溝付近で産卵し、海流に乗って日本の河川や河口域に住みつきますが、温暖化によって海水温が上昇し、海流が変化したことで、そもそも日本にたどり着けなくなっているといわれています。
また、国内河川の護岸工事が進んだことで、ウナギが食べていた小さな生き物も減少。ウナギの餌がなくなってしまったことも、ニホンウナギが激減する大きな要因となってしまいました。
ウナギというおいしい魚と食文化をこの先も守っていくためには、天然のウナギを獲ったり、稚魚を捕獲して養殖したりする従来のやり方ではない、まったく新しいアプローチを考えなければならないのです。
イスラエルのスタートアップ企業が挑戦する「培養ウナギ」
そんな中、今年1月、イスラエルの「Forsea Foods, Ltd.(フォーシーフーズ)」が、培養ウナギの開発に成功したと発表しました。
同社は、細胞培養の魚肉開発に挑むスタートアップ企業です。テクノロジーの力で、個体数が減少している魚介類を守り、海洋資源の保全につなげようと、2021年に設立されました。
同社の細胞培養技術は、さまざまな細胞に分化できる幹細胞の機能を用いて3次元の組織構造を作り出す「オルガノイド技術」を応用しています。生物が体の中でおこなっている細胞形成に近い形で培養をおこなうことで、食用に適した培養肉をつくれるそう。また独自の製法により、コストを抑えながら、より多くの培養肉を製造できる点を強みとしています。
こうした技術によって生み出された「Forsea Foods」の培養ウナギは、すでにイスラエルで6月に試食会が行われており、天然のニホンウナギと遜色ない味わいだと報じられています。
実用化はまだおこなわれていませんが、同社の発表によれば、2026年までには商業展開をめざしたいとのこと。ウナギは完全養殖が難しいことで知られており、「Forsea Foods」の培養ウナギが商品化されれば、天然ウナギに代わる新たな選択肢として、国内でも重宝されるのではないでしょうか。
日本企業からの出資も
そうした可能性に着目し、有機・無添加食品やミールキットの通信販売を手がける「オイシックス・ラ・大地」は、自社で保有するベンチャーキャピタルから「Forsea Foods」への出資を決定。今年1月に投資を実行したと、3月のプレスリリースで発表しています。
このように、絶滅の危機に瀕しているウナギを守りつつ、わたしたちの食文化を継承していくための新たな取り組みが始まっています。伝統と革新のバランスを取りながら、持続可能な形でウナギを楽しめる未来が訪れることを期待したいものです。
References:
環境省「第4次レッドリストの公表について(汽水・淡水魚類)(お知らせ)」
日本自然保護協会「ニホンウナギがIUCNレッドリストで絶滅危惧種に」
WWFジャパン「シリーズ:ウナギをめぐってウナギという魚の絶滅の危機」
水産庁「ウナギをめぐる状況と対策について」
MBL「オルガノイドとは」
日経ハイオテク「オルガイノドとは」
Text:Teruko Ichioka