世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、モンペリエで行われている、公共交通機関の無料化による変化についてご紹介します。
対象は全住民50万人。モンペリエが2023年12月に公共交通機関の無料提供を開始
フランスで8番目に大きい都市、モンペリエ。過去に長い宗教争いが起きたこの街は、現在、法学と医学で名を馳せる「モンペリエ大学」を擁する学園都市として知られています。そんなモンペリエ市は、2023年12月21日から、地元住民50万人を対象に、公共交通機関の無料提供を開始しました。
この取り組みは、二酸化炭素排出量の削減や空気の汚染軽減、アクセスの改善、ゼロカーボンモビリティ推進などを目的としています。ちなみに、訪問者や観光客は対象外で、1回あたり1.60ユーロ(約253円)を支払います。
当然、交通機関の運営にはお金がかかりますが、11人以上の従業員を抱える企業に課される税金や、不要になったチケット販売機の撤去などによる節約、モンペリエの住民以外の人々が購入した交通チケットの売上金などから賄われているそうです。
無料化を実施してから半年以上が経過。都市や住民に起こった変化とは
この公共交通機関の無料提供は、現モンペリエ市長であるマイケル・デラフォッセ氏が、2020年の選挙で公約として掲げたものです。2020年から週末の無料化を始め、その翌年には18歳未満や65歳以上と対象を決め、平日にも拡大していきました。
そして完全無料となった昨年12月から半年以上経過した現在、モンペリエ市ではさまざまな変化が起きています。
まず、従来は混雑していなかった時間帯での乗車率が上昇。この結果から、通勤以外に、レジャーや社交目的での利用者増加も考えられます。確かに、自家用車を使えば、ガソリン代などもかかるため、無料であれば公共交通機関を利用したほうがお得かもしれません。
そしてもうひとつは、公共交通機関を利用して移動する人が、以前より20%も増加。特に2024年の1~3月は、利用者数が2019年の同時期より23.7%も増えしました。
ただ、この数字は大まかなものであり、正確なものではありません。モンペリエ市も、取り組み開始から1年となる2024年12月までは、正式な数字を発表しないと宣言しているそう。12月まで残り4か月ほど、公共交通機関の無料化によりどれほどの変化が起きたのか、発表されるのが待ち遠しいですね。
モンペリエでは自転車の利用や車の相乗りも増えている
ゼロカーボンモビリティを推進するモンペリエ市では、235kmの自転車レーンを建設したり、電動自転車の購入を支援したりするなど、アクティブモビリティに1億5000万ユーロ(約236億9294万円)もの投資しています。その結果、1日の自転車利用者数は、平均で17.2%も増加したそうです。
さらに、自動車の相乗り推進もおこなっており、モンペリエ市は相乗り旅行がフランス国内でパリ以外に最も多い都市だと言われています。相乗りアプリ「BlaBlaCar」の登録ユーザー数も、2022年には5,000人であったのに対して、3年ほどで3万6000人に到達するなど、取り組みの成果も出てきています。ちなみに、2024年の2月には3万1652回も相乗りされました。市の後押しもあり相乗りの需要は拡大しているため、今後もさらなる増加が考えられるでしょう。
車に依存した社会を変えられるか。モンペリエの今後に注目
公共交通機関の無料提供によって、人々の移動に関する意識が変わっていくかもしれません。日本でもエコドライブの推進など、自家用車によるCO2排出量の削減する取り組みはおこなわれていますが、世界のさまざまなアプローチには、注目していきたいですね。
Reference:
モンペリエ|フランス留学センター
French city of Montpellier makes public transport free for all residents|Guardian News
Free public transport in Montpellier has led to 20 per cent more journeys|euro.news.
Text:Yuki Tsuruda