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チョコレートはもはや高級品?相次ぐ値上げの背景を解説【Steenz Breaking News】

チョコレートはもはや高級品?相次ぐ値上げの背景を解説【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、チョコレートにまつわる情勢をご紹介します。

値上げに悲鳴!おやつにチョコが食べられない…

国際的な原材料価格の上昇や、円安による海外からの輸入コストの増加といった原因から、たびたび報道されている、食品の値上げ。中でもチョコレートは、値上げの常連商品になっていて、おやつに気軽に食べられる値段でなくなるか、内容量の減少かといった悲しい状況になっています。

なぜこんなに値上げが続いているのか、チョコレートの原料であるカカオをめぐる情勢を見ていきましょう。

輸入品であるために避けられない宿命

チョコレートの原材料となるカカオは、赤道を挟んだ北緯20度から南緯20度の、いわゆる「カカオベルト」と呼ばれる、高温多湿の熱帯でしか生育しません。そのため、チョコレートの製造においては、為替レートや輸送コストの影響を受けざるを得ません。

毎日のようにニュースで報じられている歴史的な円安や、コロナ禍での世界の輸送網の混乱はひと段落しましたが、上がる一方の人件費や世界情勢の不安感から、値上がりが続いているのが現状です。

メイン産地のガーナとコートジボワールで不作が続く

またカカオは農作物なので、当然、年によって豊作だったり、不作だったりします。そんな中、2023年、コートジボワールやガーナなど世界のカカオの6割を生産するエリアで、天候不順や病害により、生産が減少しました。

これは、気候変動の影響ともいわれており、一過性のものではなく、今後さらに加速すると予測されています。一般的に植物は、気温が上昇すれば病虫害は発生しやすくなります。気候が安定しない中でも生産できるような品種が誕生すれば、改善するかもしれません。

また通常、カカオは先物市場で取引されます。先物取引とは、収穫前に金額を決定する方法です。それだけ聞くと契約栽培のようですが、そうではありません。ごく簡単にいうと、その売買の権利だけを投資目的に売買するシステムになっています。そのため、その権利自体は市場価格として、日々変動が起こるのです。

また、カカオは需要が高まっており、取引価格がどんどん上昇しています。2023年10月には1トン当たり3,400ドル程度でしたが、2024年頭には2倍超に急騰し、その後も過去最高値を更新し続け、3月末には1万ドルになっているほどです。

これにはもちろん、価格が上がり続けているために、いま、買っておけば、2、3か月後には、購入権を高額で販売できるという狙いが大きくなっています。いつか下がる可能性もありますが、そもそも現在カカオは不作であるため、上昇の傾向がしばらくは続くと考えられています。

サステナブルなカカオ栽培への移行

一方で、高級ブランドではビーントゥバー(カカオ豆からチョコレートバーになるまで、一貫して製造をおこなうこと)として、契約農園からサステナブルなカカオを扱うところが増えています。

また、カカオ生産が児童労働によって支えられているということが大きく報道されて以降、SDGsに敏感な国内企業では、サステナブル、エシカルなカカオ栽培へとシフトチェンジが行われています。

例えばロッテは、持続可能なカカオ産業の実現に貢献するため、カカオ豆の調達ガイドラインを策定しています。その中で、特に児童労働を監視して改善するためのシステムを導入し、産地の労働条件改善を支援したフェアカカオを導入することに決めました。2028年度までにすべての調達先から調達するカカオ豆のうちフェアカカオの割合を100%にすることを目標としています。

また明治製菓でも、持続可能なカカオ豆生産に貢献するため、カカオ農家支援を実施した地域で生産された「明治サステナブルカカオ豆」の調達比率を上げる努力をしてきました。当初目標では2026年度中の達成でしたが、2024年度中に100%の達成となる見通しだそう。児童労働だけでなく、森林破壊、栽培技術の周知不足などの問題をクリアしたカカオが使われることになります。

しかしながら、こうした企業の取り組みも当然ながらコストが増えてしまうため、売価に転嫁せざるを得ないのが事実。というよりも、児童労働や無秩序な森林破壊によって、これまで安価なカカオの供給が支えられていたという見方もできそうです。

大切に食べよう、チョコレート

かつては王族や上流階級だけが食べていたチョコレート。これまでよりも少しカジュアルさは減少しますが、適正な価格だと思えば、受け入れざるを得ないですし、背景を理解したぶん、ありがたみが増して、おいしく食べられるかもしれませんね。「高い!」と不満をいう前に、カカオの辿って来た道を考えてみるのもよさそうです。

References:
JETROビジネス短信「ミッドクロップのカカオ豆出荷が開始、生産者価格を50%引き上げ」」
ロッテ「持続可能な調達」
明治ホールディングス「カカオ産地への支援」

TextItsuki Tanaka

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Itsuki Tanaka

ライター

フリーランスのライター。食、農、環境領域 /博物館好き/コーヒー、アイス、チョコも好き。

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