「気になる10代名鑑」の746人目は、答島綾香さん(16)。プログラミングの知識を活用して、生物における数理的な研究をしています。医療の分野と情報科学の分野を融合させ、新たな発見を導くための研究を続けていきたいと語る答島さんに、活動をはじめたきっかけや将来の展望について、根ほり葉ほり聞いてみました。
答島綾香を知る5つの質問
Q1. いま、力を入れて取り組んでいることは?
「東京大学の研究室に通いながら、脳の計算論や計算論的神経科学と呼ばれる分野の研究をしています。数式や数理モデルを使って、脳の神経細胞がどのように働いているのかをシミュレーションしながら調べています。ずっと医学と情報科学が好きで、そのふたつが融合することで何かできないかなと思っていて、医学の進歩につなげたいという思いでやっています。
合成生物学の研究を通して社会の問題の解決に取り組む『iGEM Grand Tokyo』という高校生のチームにも参加していて、コンピューター上でシミュレーションなどを行うDryと、生物学的な実験を行うWet、両方で活動をしています」
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「高校1年生のときに、神経細胞の電気活動が、たった数行の数式で表せることを知ったんです。目に見えない脳の中身が、数式で見えてくることに衝撃を受けて、生物を数学的に解き明かす分野があるってことに出会ったのが、研究を始めたきっかけです。
小学生のころから、理科資料や図鑑を眺めるのが好きで、医学に関する本も読み始めていました。中学に入ってから、プログラミングに触れるようになり、気がついたら情報科学にも興味を持つようになっていました。
そこから、情報の技術を医学分野に応用したいと考えるようになって、いまは『計算論的神経科学』の研究に夢中です。寝ているとき以外、いや、寝ているときでさえも、頭の中は研究のことでいっぱいで。研究が生活の一部みたいになっています」
Q3. 活動するうえで、大切にしていることは?
「失敗を悲しむのではなく、成功のひとつだと思って研究を続けることです。『研究は進捗が負になることがあることがあるから好きじゃない』っていう人がいたんですけど、わたしはそうは思わなくて『研究がうまくいかないことも、正の進捗』だと思っています。できないということがわかった、この方法は違うという事実を見つけた、というのは前進なんです。
だからこそ、研究に関する試行錯誤のプロセスは奥が深いと感じています」
Q4. 活動していく中で、印象的だった出会いは?
「活動をしている『UTokyoGSC』で出会った先輩の田中翔大さんです。
バイオリンの奏法について数理的に研究をされている方で、バイオリンの研究をするために生まれてきたんじゃないかっていうくらい、四六時中バイオリンについて考えているような方でした。
わたしの考える天才は、高い目標や強い興味を持って、自分の軸で物事を評価できる人だと思っています。思考力、分析力、行動力、それと圧倒的な努力の量で夢を実現して、周りから『この人はこれをするために生まれてきたんだ』と思わせるような人、田中さんはまさにそういう人で……私の憧れの存在です。数理モデル研究という共通点もあって、すごく影響を受けました」
Q5. 将来の展望は?
「人の感情や脳のはたらきが解明されて、目に見えるような形で表現できたらいいなって考えています。精神疾患もそうなんですけど、脳機能はまだまだ曖昧なままで、わかっていないことだらけです。それを解明して導き出すために、研究者として研究を続けていきたいと思っています。
将来は、医学と情報科学、DryとWet、さまざまな研究のバックグラウンドを強みとした『医学研究者』になりたいです。 幅広い分野の知識で、 誰もみたことない新しい世界を見つけたいと考えています」
答島綾香のプロフィール
年齢:16歳
出身地:東京都
所属:UTokyoGSC、iGEM Grand Tokyo
趣味:音楽を聞くこと
大切にしている言葉:Today is the first day of the rest of your life.
Photo:Nanako Araie
Text:Serina Hirano