Steenz Breaking News

捨てられるはずの牡蠣殻がアップサイクルで蘇る!除菌剤からスーツの素材まで、その用途はさまざま【Steenz Breaking News】

捨てられるはずの牡蠣殻がアップサイクルで蘇る!除菌剤からスーツの素材まで、その用途はさまざま【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、牡蠣殻の社会問題や解決に向けたアップサイクルの事例についてご紹介します。

牡蠣の「殻」が社会問題に

オイスターバーや牡蠣小屋などで親しまれている牡蠣。大ぶりな岩牡蠣の旬をまさに迎えたところです。

農林水産省によると、2021年時点で日本の牡蠣の生産量は188千トンと、世界で4番目を誇ります。また、消費国としても世界トップクラスの水準であり、同じく消費量の多い中国と合わせると、その規模は世界の消費量の半分以上を占める結果となっています。

そんな牡蠣ですが、おいしくいただいたあとの「殻」の行方はどうなっているのでしょうか。例えば、国内で養殖牡蠣の生産量第一位の広島県ではこれまで、ミネラルが豊富であるという特性を生かして、養殖の牡蠣殻を家畜の餌や肥料として利用してきました。しかし、肥料価格の高騰や鳥インフルエンザの流行などの要因が重なったことから需要が落ち込み、集積場で行き場をなくしつつあるそう。そうすると、廃棄するよりほかになく、焼却処分するにしても膨大なコストと環境負荷が気になります。

牡蠣殻のアップサイクル事例

そんな、行き場をなくして、廃棄せざるを得なかった牡蠣殻を、新たな形で活用する動きが広まっています。そのひとつが、加熱処理した牡蠣殻の抗菌作用に着目し、除菌剤として開発された「kakirara~カキララ~」です。

 

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カキララは、広島の牡蠣殻をアップサイクルして開発されました。一般的な除菌剤に広く用いられている塩素は、使用方法によっては、皮膚への悪影響や有毒ガスの発生が懸念されるなどのリスクがあります。しかし、カキララの原料は牡蠣殻と水のみであることから、調理器具や野菜、ベビー用品などへ安心して使用できることが特徴です。

牡蠣殻からスーツが生まれる

紳士服最大手の『青山商事』から展開されたのは、牡蠣殻とペットボトルをリサイクルしたポリエステル繊維「SEA WOOL」。牡蠣殻をナノサイズの粒子に加工しポリエステル繊維に付着させることで、まるでウールのような手触りを実現した素材です。

2024年春には、このSEA WOOLを採用したレディーススーツが発売されました。サステナビリティを重視しながらも機能性を追求したスーツは、これからのスタンダードとなりそうな予感です。

牡蠣との付き合い方を考えるきっかけに

このように、殻の廃棄の問題に直面している牡蠣ですが、実は環境によい、海をきれいにする作用ももっているのです。二枚貝類である牡蠣は、餌となるプランクトンなどを吸収・消化する過程において、海水をろ過しており、1日約400リットルもの海水が、1個の牡蠣によって浄水されています。牡蠣は、海のエコシステムに貢献しているのです。

日本や中国だけでなく、新興国における世界的な海産物の生産や消費量は伸び続けており、これからますます、牡蠣の消費も増えると予想されています。牡蠣殻も、ただのゴミにしてしまって捨てるのではなく、サステナブルな活用を入り口に、海産物や食料の未来を見つめてみてはいかがでしょうか。

References:
農林水産省「カキの世界の総生産量(百万トン)の推移」
水産庁「漁業活動による環境保全活動」

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Kagari

ライター/エシカル・コンシェルジュ

フリーのライター/エシカル・コンシェルジュ。学生時代、100本以上のドキュメンタリー映画を通して、世界各国の社会問題を知る。事務職を経て独立後、ソーシャルグッドに関連する記事を執筆。都会暮らしからはじめるエシカルな暮らしを実践中。 Twitter:@ka_ga_r_i Instagram:@kagari_ethicallifejapan

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