世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、インドネシアのジャワ島で取り組まれている、エビの養殖プロジェクトについてご紹介します。
エビを食べると、マングローブ林が失われる?
エビフライやお寿司など、日本人に愛されているエビ。2019年のデータによると、年間23万トンを超えるエビが国内で消費され、国民ひとりあたりの消費量としては、アメリカに次いで世界第2位となっています。
政府の統計によると、輸入されるエビのうち、約70%はベトナムやインドなど東南アジアや南アジア地域からの輸入によって支えられています。輸入エビの中でも天然ものと養殖ものがありますが、その養殖エビ生産のために、マングローブ林が失われているという事実があります。
マングローブ林は、海と陸の調整役であり、生態系の宝庫としても重要な役割を担っているので、マングローブ林の減少は、環境に大きな影響を与えます。日本人が日常的に食べているエビが、マングローブ林の減少に間接的に関わっていると考えると、なんとも複雑な気持ちになりますよね。
そんな中、こうした問題を解決していくための取り組みも始まっています。そのひとつが「ASC認証」です。
持続可能な養殖「ASC認証」とは
「ASC認証」とは、持続可能な養殖水産物の生産を促進することを目的に、養殖業者が一定の基準とガイドラインをクリアしていることを証明するための制度です。この認証を取得した漁業者だけが使用できる「ASCラベル」は、一般消費者がサステナブルな養殖水産物を見分けるための信頼できる目印となる指標となっています。
このような認証が登場した背景には、世界人口の増加や、水産物の需要増加などがあります。国連食糧農業機関によると、生物学的に持続不可能なレベルで漁獲されている魚種資源の割合は、1970年代後半以降、急速なスピードで増加しており、1974年の10%から2019年には35.4%に達しています。
その打開策として広まった養殖業ですが、あまりにも急激に広がったことから、水質汚染や労働問題などの問題を生んでいます。そこで「ASC認証」では、環境、社会、市場に対するサステナビリティのグローバル基準を設けて、取り組みを進めています。
インドネシア・ジャワ島におけるエビ養殖業がASC認証を取得
再びエビ養殖に目を向けると、エビ輸出大国のインドネシアでは、2018年から、マングローブ林の保護、養殖池の適切な管理、養殖生産者の待遇改善を目的に「インドネシア エビ(ブラックタイガー)養殖業改善プロジェクト」がスタートされました。
現地のエビ加工会社・MISAJA MITRA(ミサヤミトラ)社、日本生協連、WWFインドネシア、WWFジャパンの4団体の協働により進められたこのプロジェクト。「養殖池の生残率(池に入れた稚エビが大人まで育つ割合)の改善」、「養殖池の開発によって失われたマングローブの再生」、「自然環境、労働者や地域社会に配慮したエビ養殖業への転換」の3点に取り組み、ASC認証取得へとつながりました。
そのプロセスは容易ではなく、複数の団体の協力のもと、3年弱の月日を経て取得ができたのだそう。今後もASC認証を取得する業者が増えること、そしてそれを後押しする団体や行政システムが充実することが期待されます。
当たり前である食の豊かさの裏側を考えるきっかけに
エビに限らず、わたしたちは多くの輸入食材に頼って、いまの生活をしています。まだまだ「安さ」ばかりを重視する傾向が強い中、地球環境の豊かさや労働者の幸せにつながる未来をつくる責任を、消費者として考えなければいけないのかもしれません。
出典:
国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS
WWFJAPAN|インドネシア・スラウェシ島 エビ養殖業改善プロジェクト
WWFJAPAN|インドネシア ジャワ島のエビ養殖業がASC認証を取得!
国立研究開発法人 国立環境研究所|国立環境研究所マングローブと環境問題
IN YOU Journal | 日本人のエビ好きがもたらす環境破壊。切られたマングローブ、汚された水、破壊される海…知られざるエビの裏事情とは?
国連食糧農業機関|The State of World Fisheries and Aquaculture 2022
Text:kagari