「気になる10代名鑑」の697人目は市川颯人さん(19)。地元である愛知の芸術高校から上京し、武蔵野美術大学で油絵や彫刻などの表現活動にチャレンジしています。意味づけしてコンセプトを置くことで浮かび上がる存在をテーマに創作をしていきたいと話す市川さんに、活動のテーマや今後の目標について詳しく聞いてみました。
市川颯人を知る5つの質問
Q1. いま、力を入れている活動は?
「武蔵野美術大学で油絵を専攻して、絵を描いています。高校のときから美術系の学校に通っていて、とくに油絵が好きなんです。地元の大阪府ではグループ展もやっていました。
最近だと、必修でとっている彫刻の授業も楽しくて。自分の手でつくり出したものって、やっぱり愛着が湧くし、それがただのモノではなく、“れっきとした存在である”と実感する瞬間があるんです。そこには魂が宿る、一種のアニミズムのようなものを感じて。
いまは、そこにあるだけでアートとして意味づけされ成り立ってしまう“存在”について、思いをめぐらせています」
Q2. 創作をするときに大切にしていることはありますか?
「何気なく作った作品について、アートのあり方としていいか悪いかを問い直したいというよりかは、『それでも成り立ってしまう、その現象自体が面白くない?』と提起するような作品を見せていきたいと思っています。
けっこうよく忘れ物をしてしまうのですが、絵を描く道具を忘れてしまったときは、取りに帰るのが面倒なので、そこらへんに落ちている画材で間に合わせたり、道具もないしと割り切って、気持ちの赴くままに筆を運ばせたりするんです。でもうそうすると結果的に、無造作な作品ができあがって、それを見た人が『良い作品だね、面白いね』と評価してくれたりもする。
何もなかった空間や風景に、何らかの意味を見出して、そう見せた瞬間、そこに人の意識が向く。それが作品として成立したり、何か別の存在を感じさせて、気持ちを動かしたりするんです。これって、日本の『神道』にも通じるところがあると感じていて。もっと学んでみたいと思っています」
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Q3. 活動を始めたきっかけはなんですか?
「小さいころから絵を描くのが好きでした。親戚の中でも、絵が得意な子どもがめずらしかったみたいで、描くと褒められるのが、嬉しかったんだと思います。そこから、特技として模写をしたり、イラストを描くようになりました。
高校の進学先を決める時期になったときに、勉強があまり好きではなかったので、地元の芸術高校に進むことにしました。高校では日本画や油絵など、いろんな分野に触れることができて。中でも、描き心地がよく、自分の思いのままに筆を運べる油絵が気に入って、『これだ!』と思ったんです。それで、大学でも油絵を専攻しました」
Q4. 最近、興味をもっていることは?
「服を見る時間が好きです。ブランドにはこだわらず、自分がいいなと感じたものをセレクトして、自分のものにできればなって。絵や表現活動にのめり込みすぎると、自分とそれらの境界線がわからなくなってしまうことがあって。でも服を見ていると、その状態から一歩俯瞰して、息抜きをすることができるんです。
今日着ている白のロングシャツは、服飾の道に進んだ友達がつくったものを買い取りました。自分でも服を作ってみようと考えたこともあるのですが、一度始めると、作り手としての自我というか、負けず嫌いさが出てしまって。競争心にかられてしまい、純粋に服を楽しめなくなってしまうんです。なのでファッションに関しては、ひたすらに作品を楽しむようにしています」
Q5. これからの目標は?
「何気ない日常の中から、新しい意味づけした作品を届ける、“市川颯人”らしい創作を続けていきたいと思っています。そのためには、もっともっと自分を知って、自己を確立させながら表現するアーティストになるのが目標です。彫刻や映像作品など、いろいろなことに興味があるので、油絵の手法のみにとどまらず、模索していきたいです。
以前、アーティストとしても活動している高校の友人から、『お前は人間として生きていない』と言われたことがあって。なんとなく流れるように表現している自分を、見透かされている気がしました。でも、衝動として強く思うものが見つからないまま、なお表現し続けているのが、いまの自分の正直な気持ちだし、自分の本質なんだろうなって思っています」
市川 颯人のプロフィール
年齢:19歳
出身:大阪府
所属:武蔵野美術大学 造形学部 油絵学科
特技:忘れること
市川 颯人のSNS
— 市川 (@Hayato1kawa) April 25, 2024
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Photo:Eri Miura
Text:Chihiro Bandome