「気になる10代名鑑」の575人目は、真輝さん(19)。東京藝術大学美術学部に所属し、仲間たちと一緒に短編アニメーションを作成しています。社会に向けてではなく、あくまで内面との真摯な向き合いから作品を生み出したいと語る真輝さんに、創作を始めようと思ったきっかけや、印象的だった出会いについて聞いてみました。
真輝を知る5つの質問
Q1. いま、力を入れている活動について教えてください。
「“生きることを諦めない”という感情を、誓いとして残したくて、10代の集大成となる作品をつくっています。具体的には、短編アニメーション作品を20人くらいでつくっていて、この作品に、いまの自分ができる最大限の表現を詰め込みたいと考えています。
こだわっているのは、ひとつの分野だけではできないことを、さまざまな分野の力を組み合わせて表現すること。声楽をやっている人や楽器をやっている人、美術をやっている人など、大学で出会った才能あふれるいろんな人たちに声をかけて、仲間を集めました」
Q2. 活動を始めた思ったきっかけについて教えてください。
「人を好きになる経験と、大切な人が亡くなってしまう経験をしたことです。人を好きになったことで、誰かを想って生きることの素晴らしさや楽しさを学ぶことができました。そして中学3年生の進路決めなどの将来の不安で悩み、そうした負担の大きい時期を乗り切った直後に、大切な人を亡くす経験もして……。
それまで、自分の感情を抑えられなかったり、コミュニケーションがうまく取れないことに悩んだりして、消えてしまいたいと思うことが多かったけど、身近な人が亡くなって、みんなが悲しみでいっぱいになっているのを見て、生きることを諦めたくないという感情が生まれました。
たくさんの苦しい感情を、どう表現していいか悩んでいるときに、『君の名は。』と『海獣の子供』というアニメーション作品に出会い、その表現の美しさに驚かされて。アニメーションは、大衆娯楽としての側面が強いと思うのですが、人が描いた絵や音楽など、さまざまな芸術的なポテンシャルをもっています。本格的にアニメに興味をもつようになり、芸術として昇華させられないかと考えるようになりました」
Q3. 印象的だった出会いについて教えてください。
「いま一緒に創作をしている仲間たちとの出会いです。僕が通っていた高校はいわゆる進学校で、藝大という存在や、創作するという概念にも、あまり触れる機会がなかったんです。大学に入って、目標を同じにする友人たちと出会うことができて、とてもうれしいです。
それに藝大には、自分よりも絵がうまい人や歌がうまい人、実技能力が高い人……そんな人がいっぱいいます。負けず嫌いな自分を刺激して、奮い立たせてくれる、強い芯をもった彼らと出会えて、本当によかったです」
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Q4. 活動を通じて、社会にアプローチしたいことはありますか?
「社会に対して違和感を抱いたり、変わってほしいところはあるけど、そのために作品をつくるというよりは、自分がやりたいことや感情に正直に創作を続けることで、自分のつくったものが誰かに影響を与えることがあるかもしれない、という気持ちで、活動に取り組んでいます。
自分も、消えてしまいたいと思ったときから、まわりの人と交流を続ける中で、少しずつ人生が楽しいと思えるようになりました。その経験から、世の中に愛情があることに気づくことができた人が、生きることを楽しいと思えるようになるんじゃないかと感じました。なので、自分の本心は貫きつつ、弱くても誰かを支えられて、誰かにとって希望になれるような、そして自分自身を鼓舞することができるような作品をつくりたいんです」
Q5. 将来の展望について教えてください
「自分の描く世界を、いま生きているこの世界につくり出すことです。どんな人にも、空想の世界だったり、理想の世界があると思います。そういった自分だけの世界を、イメージや声、音をもった、形のあるものとして表現したい。その方法のひとつが、アニメーションだと考えているので、将来、アニメーション監督になることが目標です。
また、大学に入学してから、チームラボの作品を知って、空間全体を創作することにも興味を持つようになりました。頭でっかちになってしまいがちな時代に生きているけど、自分の目で見たことを信じて、未知の世界に踏み出せる大人になりたいです」
真輝のプロフィール
年齢:19歳
趣味:ギター、ピアノ、演劇、ランニング
大切にしている言葉:バランスと、客観視
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みんな、いつもありがとうね
— U10 (@U10DP) November 14, 2023
★note
Photo:Eri Miura
Text:Kanon Yoshizumi