世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、マイクロプラスチックを吸収するスポンジについてご紹介します。
わたしたちも食べているかも…深刻なマイクロプラスチック問題
プラスチックは、海洋汚染の大きな原因のひとつ。その中で5mm以下のものは「マイクロプラスチック」と呼ばれ、プラスチックゴミの劣化や粉砕によって発生します。他にも、洗顔料や歯磨き粉のスクラブ材として使用されるマイクロビーズも、マイクロプラスチックに当てはまります。
毎年500万〜1,300万トンものプラスチックごみが海に流れ出ているといわれており、九州大学の研究では、海洋上層でのマイクロプラスチックの重量濃度は2016年と比べると、2030年までに2倍に、そして2060年までには約4倍になると予測されています。
こうしたマイクロプラスチックによる海洋汚染は、地球環境ののみならず、わたしたち人間の健康にも影響があります。マイクロプラスチックは表面に凹凸が多いため、有害な化学物質が吸着しやすいといわれています。化学物質のついたマイクロプラスチックを魚が食べ、その魚を人間が食べている可能性もあるのです。
2018年10月には、ウィーン医科大学とオーストリアの環境庁の調査で、日本人を含む世界8か国の8名から集めた便を調べたところ、全員の便から9種類のマイクロプラスチックが検出されたという結果が発表され、各国で話題になりました。マイクロプラスチックの影響は、海洋生物だけでなく、すでに人間にも及んでいるのです。
中国やベトナムがマイクロプラスチックを吸収するスポンジを開発
そんなマイクロプラスチック汚染問題の解決策のひとつとして注目されているのが、世界各国で研究が進む、吸着素材です。
中国の研究チームは、ゼラチンとコーンスターチの実験用スポンジを作成。海水や水道水などからマイクロプラスチックやナノプラスチック(1µm〜5 mmのプラスチック)の粒子を約90%除去することに成功したと発表しました。
ベトナムで研究が進められているのは、天然のヘチマを使ったスポンジです。ヘチマの表面にコーティングを施すことで凹凸ができ、この加工により水に溶けにくいスポンジをつくることができます。コーティングには蜜蝋やパームワックスなどが使われ、環境にやさしい仕様になっています。また、このスポンジはマイクロプラスチックだけでなく、油も吸収する特徴も持っており、水質汚染にも役立つと考えられています。
スポンジは水に浮かべるだけで効果があるので、導入するのも簡単です。いずれもまだ実験段階ではありますが、今後研究が進めば、世界中の海で使用されるようになるかもしれません。
マイクロプラスチック問題、どう解決していく?
マイクロプラスチックは目に見えるものの小さく、一度海に流れてしまうと、人の手で回収するのは困難です。マイクロプラスチックの発生源となるプラスチックの削減はもちろん、すでに海を漂うマイクロプラスチックをどのように回収するかについても考えることが大切でしょう。
Reference:
環境省「令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」
一般社団法人環境金融研究機構「日本人を含む8カ国の成人対象の食事調査で、全員からマイクロプラスチック検出。便10g当たり平均20個。健康影響は不明。大規模調査の必要性。オーストリア政府とウィーン医科大の共同研究(RIEF)」
Text:Tommy