
「気になる10代名鑑」の248人目は、モリアイさん(18)。武蔵野美術大学でアートを学びながら、自分のブランドでファッションショーを行うことを目標にしています。地方の小さなコミュニティで感じた生きづらさをパワーに変えて、ファッションで世の中にメッセージを発信しているというモリアイさんに、思い描く社会について熱く語ってもらいました。
モリアイの活動を知る5つの質問

Q1. いま力を入れていることは何ですか?
「ファッション画をとにかくたくさん描いて、Instagramにアップしています。合同展示やInstagram上で、人の目を引くために、背景の色味にこだわったり、原色を多く使って、ただのデザイン画というより、一枚のアートに仕上がるように心がけています。
私の作品のテーマは、少し大げさに言うと“時代へのアンチテーゼ”。ファッションの力で、いまの社会やカルチャーを変えたいんです。というのも、SNSや街中の人を見ても同じような格好をしている人ばかりで、それを窮屈に感じていて……。
だからもっと自己表現として、ヘンなものがあっていいと思って。作品では、左右非対称だったり、かわいらしいものと無骨なものの組み合わせだったり……そんな矛盾や違和感を感じるポイントを大切にしています」
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Q2. 活動を始めたきっかけは?
「大学は日本画学科を受験するつもりでいて、ファッションには特に強い興味はなかったんです。
でもある日、大好きなK-POPアイドルがGUCCIのアンバサダーになって、そのコーディネートを見たときに、その斬新さに衝撃を受けたんです。緑のギンガムチェックの半袖のシャツと短パンに、クラシックなレースの手袋を合わせていて。”矛盾”を表現しているような面白さに、惹き込まれました。そこからファッションの世界に強く関心を持って、デザイン画を描くようになりました。今でもそんな”矛盾”が、作品の核になっています。
本格的にファッションの道に進もうと決めたのは17歳のとき。日本画が本当にやりたいことなのかな……と疑問を持ち始めてから、スランプに陥ってしまったんです。それから1年間、何も作品がつくれなくて。そのときに自問自答を繰り返して、ファッションの道に進むことを決めました」

Q3. 何が活動の原動力になっていますか?
「岡山県で小中高校時代を過ごして、本当に自分が好きなファッションや髪型ができなくて、ずっとモヤモヤを抱えていました。地方っていうこともあって、コミュニティがすごく小さいから、少しでも目立ったことをすると、陰で何か言われたりするんです。
いまの美大生活は、地元のときとは違って、パジャマで登校しても、髪を左右非対称に切っても『かわいい! THE・モリアイだね!』って言ってもらえる。本当に自由で、初めて居心地がいいなと思えました。
ファッションや髪型を認め合える環境って、人間として多様性を認められる人が多いと感じていて。私自身、性自認がパンセクシュアルにあたるんですけど、美大だと自然と受け入れられている感覚があって。ストレスなくカミングアウトできる環境だと思うので、相手がどんなセクシュアリティであっても、ナチュラルに恋バナできます(笑)」
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Q4. 活動をするうえで印象的だった出会いは?
「美大の受験のために通っていた画塾の先生との出会いです。私の創作の世界を大きく広げてくれました。
突然スランプに陥って、何もアイディアが浮かばなくなってしまったとき、先生から『アイディアは自分の中からすべて生み出すのではなく、いろいろなものを吸収して作り出すもの』というアドバイスをもらいました。
それから、アート以外の世界にも目を向けるようになりました。社会や文化に今まで以上に関心をもって現実を知ったり、逆に文章を読んで自由に風景を想像したり。それがわかってから、常に新しい考えが湧き出ています。正直、手が追い付きません!」

Q5. 将来の展望は?
「自分のブランドを立ち上げて、ファッションショーをしたいです。自分がデザインで大切にしている”矛盾”や”違和感”といった要素をコンセプトに、ショーをやってみたい。若い世代がそういう奇妙なものを当たり前に身に着けるようになれば、息苦しい雰囲気に抵抗できると思っているので、そういうメッセージをファッションに込めて、たくさんの人に見てもらいたい。
いつか、東京だけじゃなく、地元の岡山でも、自分の好きなように表現できて、個性を出せる。それで『それがあなたの個性だよね』って、社会全体が認めてくれる……ファッションを通してそんな社会を実現させたいんです」
モリアイのプロフィール
年齢:18歳
出身地:岡山県
所属:武蔵野美術大学空間デザイン学科
趣味:なんでも表にすること
特技:人の名前を覚えること
大切にしている言葉:目を開けて夢を見よう
モリアイのSNS
大学の課題 ”QUEER NATION” をもとに
自分の性自認について作品を作りました pic.twitter.com/sfi863RiTf— モリアイ (@f0restlove) June 15, 2022
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Photo : Eri Miura
Text : Minori Abe