単独チケットが10分で完売するなど、お笑い界からも演劇界からも熱い視線を集める8人組ユニット「ダウ90000」。そのメンバーひとりずつに単独インタビューを行うスペシャル企画。インタビューの5回めは、飯原僚也さん(24)。ダウ90000の作品のなかでは、ミステリアスな役を演じることが多く、「謎多き男」というイメージも。そんな飯原さんに、パーソナリティや青春時代の話を、根掘り葉掘り聞いてみました。
全国大会で優勝するほどの空手少年が、演劇の道に進んだ理由とは?
ー今日はよろしくお願いします!
「こうやってインタビューされること、いままでそんなになかったんで、ちょっと緊張しますね」
ー飯原さんのパーソナルなことをいろいろ聞かせてください。さっそくですが、10代のとき、どんなふうに過ごしていたんですか?
「徳島の田舎で、東京にすごく憧れていました。地元にある干上がったダムとかで、誰がいちばん硬いところでバク転できるかを競い合ったり、いかに女の子と喋らないで学生生活を送るかを我慢くらべしたり(笑)。意味わかんないことばっかりやっていました。
あとは空手ですね。僕、もともとK-1のプロ選手になりたかったんです。ふたつ上の兄に影響されて、週に6日、毎日4時間とか5時間とか、ひたすら空手をしていました」
ー空手では全国大会で優勝もされていますよね。
「小学校5年生のときですね。でもそのときも『やったー』『嬉しい』っていう気持ちはなくて、やっとだなっていう気持ちが強くて。いや、むしろ時間かかっちゃったなぁ、くらい。こんなに毎日頑張っているのに、なかなか結果が出ないんだって思っていました。
それでも、プロの選手になって、とにかく東京に出たかった。だから、中学校3年生までは空手漬けで。最終的には怪我したので諦めたんですけど」
ー目標を突然失って、落ち込んだりしませんでしたか?
「それが、特になかったんです。落ち込むとかはなくて、次はなにを目指そうかなって思っていました。だって、お医者さんに『もう治らない』って言われたら、諦めるしかないじゃないですか。
起きてしまったことをずっと引きずっていてもしょうがないと思って、次に頑張るものを探していました」
ーそこで出会ったのが、演劇だったんですね。
「高校に入って、演劇部に入部したんです。映画が好きで、よく観ていたのもあって。徳島にいたときは、2時間かけて映画館に行っていたんですよ、自転車で。いまも休みがあったら、ひとりで映画を観に行くことが多いです。最近だと『仁義なき戦い』を全部観ました」
ー演劇部では、どんな活動をしていたんですか?
「それが、部員が僕ひとりだけで。入部したときは先輩がいたけど、すぐ引退しちゃって。だから顧問と僕だけ。でも戯曲とかは無限にあったので、それを読んだりとか、ひとりで公演をやったりしていました」
ー仲間がいなくて、続けるのは大変そう……。
「んー……とにかく、なにかをやりたかったんです。なんでもいいけど、なにかをやっていなきゃダメな人間だったので。そのとき、近くにあったのが演劇だった。それだけな気がします」
ー特に影響を受けた作品はありますか?
「行定勲さんが監督で、宮藤官九郎さんが脚本を書いた 『GO』ですね。窪塚洋介さんと柴咲コウさんが出ていて。この作品を見て、映画や芝居の仕事に憧れて、上京しました」
憧れの東京で4年間続けた演劇が、大学生活のすべてだった
ーその後、大学入学のために、憧れの東京に来たんですね。日芸の映画学科を選んだのは?
「徳島から東京に向かうにあたって、いちばんレベルの高い目標だったんです。簡単に入れる大学ではないこともわかっていました。だから、『落とすなら落としてくれよって神様』に思いながら、受験しました。
そもそも徳島から上京することが珍しいというか。みんな関西に行っちゃうんで。でも、とにかく上京したいからとか、演技の勉強がしたいからって、中途半端なところに行くよりも、日芸に行ったほうが絶対に幸せな人生を送れると思ったんです。採算がとれないのに続けることが、いちばん不幸になるかな、と」
ー実際に入学してみて、いかがでしたか?
「すげえ面白い人たちいるなって思いました。僕が入ったときには、蓮見さんと園田さんが、すでに活動していたんです。最初は、『この人たち、なんで映画学科なのに演劇をやっているの?』って思いました。しかも、コントもやっているし。
僕は演劇しかやったことがなかったから、蓮見さんが客席の反応を見たり、お客さんに向かって話しかけている姿がすごく新鮮で。
正直、たいして期待しないで観に行ったんですけど、めちゃめちゃ面白くて、それからすぐにサークルに入りました」
ー大学生だと、就活タイミングで演劇をやめる同級生もいる中、就活をせず、演劇を続けていこうと思ったのはなぜですか?
「やっぱり、みんなとやっていた演劇が、大学生活のすべてだったので。当時、学校内で公演をやっても、お客さんが4人とかしかいなかったんですよ。『観に来て』って呼べる友達がみんないなくて(笑)。
そんな、誰のためにやっているんだっていう状況でも、不思議なことにすごく楽しくて。そのとき、僕の幸せの最高値は、この人たちと一緒にお芝居をしていくことだと思ったんです。うまくいくかはわからないけど、最高値を出すならこのルートしかないって。
だから、まわりが就活を始めても、気になりませんでした。それに、親にも『好きなことをやってもいいけど、責任は自分で持てよ』って言われていたし」
この夏で、演技への興味や楽しさが10倍くらい跳ね上がった
ー最近は地上波での初の冠ドラマ『ダウ90000 深夜1時の内風呂で』など、役者としての仕事も増えています。実際にドラマに出てみていかがでしたか?
「まだなんの信用もない僕らを起用してくださるなんて、嬉しい話ですよね。本当にありがたいと思っています。
この間の作品では、勝村政信さんと共演させていただいたんですが、勝村さんの演技しているときの姿や、演技を始める前の行動……一挙手一投足すべてが、僕にとっては生きる教材で。
でも、あんなすごい人が、いっぱいいるわけじゃないですか、この業界には。それはめちゃくちゃ刺激的だし、もっともっと勉強したいなって思っています」
ーかなりタイトなスケジュールでの撮影だと聞きました。
「そうなんです。3日間で全部撮影しないといけないスケジュールで。正直、最近は休みが全然なくて、毎日セリフを覚えては忘れて、覚えては忘れての繰り返しで、ちょっと枯れそうだったんです。
だけどそれ以上に、演技や芝居への興味がグッと増しました。10倍くらい跳ね上がったと思います」
ーお笑いのほうは、いかがですか?
「僕の中で、お笑いと芝居って、あまり分けて考えていないんです。これはコントだから、笑わせるために芝居を変えて、とかはあまり考えていない。だって、僕がやったことあるコントは全部蓮見さんが書いたものだし。
舞台に立っている自分を俯瞰して見る必要があるかないかっていう、視点の違いはあるのかなって思うんですけど、根っこのところは一緒だと思っています」
ープライベートでなにかやってみたいことはありますか?
「なんですかね。僕、基本家にいるんですよ。土踏まずがなくて、立っているのがつらいから。テーマパークとか、絶対に行けないです。
あ、自分でやってみたいことではないんですけど、部屋を片付けてもらいたいですね、誰かに。部屋が汚いってメンバーからよくイジられているので。そういえば、誕生日プレゼントで園田さんからもらったロボットも、部屋の中で5回ぐらい踏んじゃって……。勝手に部屋を片づけてくれる人とか、いないですかね」
ー自分で片付けたほうがいいと思います!
「そうですよね(笑)」
飯原僚也 プロフィール
1998年6月2日生まれ。徳島県出身。日本大学芸術学部映画学科卒業。
★note
ダウ90000出演情報
Hulu ショートドラマ「今日、ドイツ村は光らない」
配信日時:2022年10月5日(水)0:00~
初回は5エピソード、2回目以降、毎週水曜0:00より2エピソードずつ配信。日本テレビでは毎週土曜14:50ごろからオンエア。
出演:小関裕太、ダウ90000(道上珠妃、吉原怜那、中島百依子、忽那文香、上原佑太、園田祥太、飯原僚也、蓮見翔)
新作演劇公演「いちおう捨てるけどとっておく」
2022年10月5日(水)~19日(水)
東京都 新宿シアタートップス
作・演出:蓮見翔
出演:園田祥太、飯原僚也、上原佑太、道上珠妃、中島百依子、忽那文香、吉原怜那、蓮見翔
前回のインタビューはこちら!
Photo:Masaharu Arisaka(STHU)
Text:Ayuka Moriya