世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、タイのスラム発ブランド「|FEEMUE《フィームー》」についてご紹介します。
タイ最大のスラムでうまれたブランド
タイの首都・バンコクにある、国内最大のスラムと呼ばれる「クロントイ・スラム」。ここには、タイの貧困層が約10万人住んでいるとされます。
こうした人たちの暮らしを支援しようと、日本人デザイナーが、スラムをテーマにしたライフスタイルブランド「FEEMUE」を立ち上げました。スラムの素材をモチーフにしたバッグなど、現地の在タイ日本人を中心に注目を集めています。
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「FEEMUE」は、日本人デザイナー、FUJI TATEPさんが、クロントイ・スラムに2か月間滞在しながら、デザインを考案しました。スラムで用いられるタープシートを使ったクリアバッグや、東南アジアの民族・モン族の刺しゅうを施したピアスなどを販売しています。2017年度にはグッドデザイン賞を受賞しました。
売り上げは、このスラムを長年支援しているNGO団体「シーカー・アジア財団」の運営費になります。こちらの団体は、FEEMUEの工房も運営しており、スラムの女性たちの雇用にもつながっています。
トレンドなクリアバッグがかわいい
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「FEEMUE」のアイテムは、トレンドに敏感な現地の日本人女性の間で人気を博していて、購入した人からは「クリアバッグは涼しげに見えるので、ビーチでも使える」「支援したい気持ちで買ったけど、デザインが想像以上にかわいかった」といったコメントが寄せられています。商品は、オンラインを通じて日本でも購入が可能です。
このタープシートは、スラムの多くの住居で使われているもの。プレハブのもろい作りになっているので、雨除けや日除けのために、タープシートが重宝されているのです。
バンコクの人口の約3割がスラムで暮らしている
そもそもスラムには、どんな人たちが住んでいるのでしょうか。住民の主な職業は、建設労働者や港湾作業員、清掃員などで、低賃金ながらも、生活に必要不可欠なインフラを支えています。
一方で、その環境はいいものではありません。小さな小道に並んだプレハブ小屋の近くにはゴミ山があり、排水溝にもたくさんのゴミが浮かんでいます。生活環境は決して衛生的とはいえません。さらに、新型コロナウイルスの影響による景気の悪化で、仕事を失った住民も多くいます。生活苦から、子どもを学校に行かせずに働かせるケースも少なくありません。
タイでは近年、経済発展が続き、人々の生活が豊かになってきたと同時に、貧富の差が大きく拡大しています。バンコク都庁の統計によると、バンコクのスラムと住民の数は、1985年に943か所、96万5,000人だったのが、2006年には1,774カ所、180万6,000人と年々増加傾向にあります。数字だけで見ると、バンコクの人口の約3割が、スラムで暮らしている計算となります。
さらにタイでは、少子高齢化によって労働者が不足しており、ミャンマーやカンボジアなど、隣国からの出稼ぎ労働者も以前より増加し、クロントイ・スラムにやってくるようになりました。
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クロントイ・スラムを現地で長年支援している、シャンティ国際ボランティア会の八木澤克昌・常務理事は、「タイに暮らす日本人も、無意識のうちにスラムの住民が建設に関わったショッピングセンター、コンドミニアムやホテルを利用している。FEEMUEを通じて、クロントイ・スラムの現実を知ってほしい」と呼び掛けています。
Photo:Risako Hata、シーカー・アジア財団
Text:Risako Hata