
ユニークなスタンスをもつ10代が、独自のポジションで活躍している人生の先輩に会いに行って、聞きたいことを聞きにいくシリーズ、「10代なんでも相談室」。
先輩ゲストとして登場していただくのは、株式会社ニューピースの代表取締役CEO・高木新平さん。企業に向けて社会課題を起点としたビジョンの設計を提供し、自社でもさまざまなブランドやプロダクトを展開しています。
全3回のシリーズの最後となる今回の質問者は、サウンドクリエイターやラッパーとして活動している高校生、七転さんです。
高校生ラップ選手権に出場したラッパー・七転さんが抱える悩みとは?

今年7月に開催された「高校生ラップ選手権」に出場した実力をもつ、七転さん(17)。サウンドクリエイターとしても活動するなど、多彩な活躍をみせている七転さんですが、トレンドの移り変わりも激しい最近の音楽カルチャーに飛び込んでみると、自身の立ち位置に悩むことがあるそう。
そもそも音楽って、どんな存在?

七転:僕はラッパー、サウンドクリエイターとして活動しているんですが、最近、映像広告にラップ調の曲が採用されたり、ラッパー自体がオープンな場でコンテンツとして起用されていたりすることが増えたと感じています。
高木:たしかに。最近、多いよね。
七転:はい。そういう流れって、自分が出ているわけじゃないけど、なんか嬉しくて。僕自身、ラップをしたりや音楽をつくったりすることは楽しいし、ずっとやっていたい。でも楽しいだけだったら、自己満足にとどまってしまうんじゃないかな、と最近考えるようになりました。なぜかっていうと、アーティストの社会的影響力も増していると思うから。
高木:なるほど。
七転:でも、僕の中では、まだ音楽と社会をうまく結びつけられていなくて……。だから、まずは高木さんにとって、音楽がどんな存在なのかを伺いたいです。
高木:音楽って、いい意味で変幻自在だよね。僕にとっての音楽は、そのときの記憶を呼び戻す装置的な存在だと思う。
七転:記憶を呼び戻す装置、ですか。
高木:うん。そのときの自分を象徴する記憶を呼び戻してくれる。最初に買ったCDは今でも覚えていて。Hi-STANDARDっていうインディーズバンドのCD。
中学生のころ、インディーズバンドを知ってることが、なんかカッコよかったし、メインストリームに立ち向かっていく姿に惹かれて。彼らのそういった姿は、いまの僕の原点のひとつでもある気がする。
七転:ああ、すごくわかります。それがいまの高木さんの原点になっているんですね。
高木:人生の中で新しいカルチャーを取り入れられる時期って何回かあると思うんだけど、たぶんその時期って決まっている。どんな音楽でも、それにハマれたら、その時間を大切にしなきゃね。
市場ウケに翻弄されることもしばしば。ラッパーとしてのブランディング戦略を考えたい!

七転:ラッパーに限ったことではないと思うんですけど、アーティストが社会的影響力をもちはじめたことによって、よりブランディングがより大事だなと思うんです。そんな僕はいま、ラッパーとしてのブランディングの壁に直面していて……。
HIP-HOPだと、少しひねくれているほうがウケがよかったりもするけど、僕はそうじゃない表現をやりたいとも思ったり。
高木:もともとアンダーグラウンドのカルチャーだけど、SNSによってアンダーグラウンドなものが表に出やすくなったりしていて、難しいよね。
七転:はい。だから、高木さん自身の強みや、どこを売りにしているのかっていうことを、僕のブランディングを考えるうえで参考にさせていただけないでしょうか。
高木:僕はアーティストとして生きていたわけじゃないから、参考になるかな(笑)。
でも、僕が入社して1年半で博報堂を辞めて、シェアハウスに住んで、いまでこそ上場しているような同世代の起業家の相談にたくさんのったりしてきた。その経験からすると、これまでタブー視されてきたことや、手を入れられてこなかった領域にこそ、チャンスがあると思っていて。
七転:タブー視されてきた領域……ですか。
高木:うん。いわゆるメジャーな人たちが、「タブーだから」「儲からないから」という理由で手をつけていない領域を探したほうがいい。かつてのYouTuberもきっと、そうだったと思う。
七転:たしかに。
高木:僕の話をすると、新卒で入った博報堂を辞めるときに、退職ブログを書いたの。「博報堂やめました」っていう。当時、実名で退職ブログを書くカルチャーはひとつもなかったから、めっちゃバズった。たぶん100万PVぐらい見られていたんだけど。
七転:すごい……!
高木:僕の世代がちょうど、SNSを使いながら仕事をしていた世代で、その上の世代からすると、仕事のことをSNSであげる、ましてや退職についてのブログを実名で出すなんて、考えられなかったと思う。それって、会社の社会的な評価や信頼に繋がりかねないから。
七転:よく見ます。「個人の意見で、所属を代表するものではないです」っていうやつですよね。
高木:そうそう。でも、そういうタブーというか、誰も触っていない領域を見つけるのが、まだ何者でもない世代の役割な気もするんだよね。で、やっていくなかで勝手に期待されていくことが出てくるから、それに応え続ける。
そのうち、結果が出るものと出ないものが出てくるから、出ていくものが自分の得意なものとして磨かれていくのかなって。
七転:そっか、そうですね!
高木:すると、自然に自分のポジションが見つかる感覚があるはず。逆に、最初から自分らしさで勝負していこうとしても、ヒントがないじゃん。
七転:……ハッとしました。
高木:思想って個人じゃなくて、世代にあると僕は思っていて。だから上の世代ができなかったことを見つけることで、自分の立ち位置とか強みに意外と気づけると思う。
七転:独特の文化かもしれないんですけど、特に日本のラップバトルって、世代意識が強いんです。同世代とはすごく繋がりがあるし、高校生ラップ選手権に出てから、2004年生まれの僕は「04世代を代表している」と言われることもありますし、よく自分でもラップの中で言っています。
高木:そうそう。最初は上の世代に「何それ、怪しい」とか言われることもあるかもしれないけど、いずれは、それがスタンダードになるから、自信を持っていい。メディアやテクノロジーの進化でできることがかなり増えている時代だから。
いまはシェアハウスって当たり前に選択肢として存在しているけど、僕らがはじめたころは「怪しい」ってずっと言われていたから。
次のトレンドが生まれる「ホットスポット」を見極めるために、行動あるのみ!

高木:あとね、俺が七転さん世代に戻れるなら「ホットスポット」にいたいね。
七転:ホットスポットって何ですか?
高木:例えば、90年代の裏原宿とか、ちょっと前のYouTube界隈とか。異常に文化人がいる、みたいな場所。僕が一時期いたシェアハウスもそういう雰囲気があったけど、そこから何かが始まっていく、常に上昇気流が発生しているような場所。そういうところにいるって、めっちゃ大事。
七転:音楽の中でもホットスポットってありますか?
高木:あるある。
七転:でも、そういうホットスポットって、流行ってから行くのは遅いじゃないですか。世間に知られる前に見極めることが、重要なのかなと思うんですが……。
高木:秋元康さんが言っていた「みんなが行く野原には野イチゴはない」ってやつね。だから「本当に野イチゴを見つけたければ、誰も言っていない鬱蒼とした野原を駆け回るしかないんだ」って言っていて、本当にそういうことだと思う。
七転:深い……。
高木:意図的にホットスポットを見つけに行くというよりかは、エンカウンターするぐらいの感覚がたぶん正しいのかも。理屈で探すと絶対わかんない。なんか、やばいなっていう感覚。
カニエ・ウェストのNetflixのドキュメンタリーを観ていても、その時代を代表するような、やばい人の名前しか出てこないんだよ。
七転:すごい繋がっていますよね。やっぱり、アンテナは常に広く高く張っていたほうがいいんですね。
高木:もちろん! あとは行動しまくる。きっとホットスポットも、最初はタブーなのよ。でも、上の世代の人たちができなかったことをやりまくるしかないと思うんだ。そうやって歴史って塗り替えられていくものだから。
最近はテクノロジーとかすごい勢いで発達しているから、上の世代がついていけていないことも多い。みんなが使っているDiscordを知らない30代ばっかりだよ。
七転:ラッパーの間では主流ですよ。
高木:そう。だから、いまの若い人たちにはチャンスがあるなと思う。僕も置いていかれたくないから、いろいろ教えてよ!
3人のティーンの多種多様な質問に対して、自身の経験や、ときには名作や偉人の言葉などを交えながら、的確に答えてくれた高木新平さん。その引き出しの多さに、圧倒されることも。相談を終えたティーンは「モヤモヤしていたことがすっきりした!」と、晴れ晴れとした様子でした。
今後もいろんな分野で活躍する先輩に、ティーンが会いに行きます。お楽しみに!
高木新平さんプロフィール

1987年、富山県生まれ。早稲田大学卒業後、1年間の広告会社勤務を経て、 2014年に「誰もがビジョンを実践できる世界をつくる」をミッションとした 株式会社ニューピースを創業。従来のブランディングに対し、未来の価値観を波及していく「ビジョニング」を提唱し、数多くのスタートアップのビジョ ン開発や市場創出に携わる。また自社においてジェンダーやコミュニティといった、21世紀の主題を事業展開。3児のパパでもある。
今回登場してくれた10代
七転さん(17歳)
中学生のころから、ラッパー・サウンドクリエイターとして音楽活動に取り組む。数々の人気アーティストを輩出してきた『高校生RAP選手権』にも出場。
Photo:Goku Noguchi
Text:Ayuka Moriya
Edit:Takeshi Koh