ユニークなスタンスをもつ10代が、独自のポジションで活躍している人生の先輩に会いに行って、聞きたいことを聞きにいく「10代なんでも相談室」。
今回のゲストは、企業に向けて社会課題を起点としたビジョンの設計を提供し、自社でもさまざまなブランドやプロダクトを展開する、株式会社ニューピースの代表取締役CEO・高木新平さんです。
マルチメディアセクシーアーティストのNeNeさんが、創作活動のモヤモヤをぶつけます!
そして質問者は、SFっぽい世界観で女の子のセクシーを表現する「マルチメディアセクシーアート」に取り組むアーティスト、NeNeさん(19)。秋からはイギリスの美大への留学が決まっていて、渡英前に、自身の創作活動のモヤモヤを解消したいそう。
「セクシー」と「フェミニズム」は両立できる?
NeNe:私は媒体を問わず、パンクでセクシーな女の子を題材にして「マルチメディアセクシーアーティスト」として活動しています。インターナショナルスクールに通っていたのですが、その卒業制作で、日本のユースカルチャーにインスパイアを受けた「ねね式プリ機」をつくりました。
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高木:なにこれ! かわいいし、面白い。中はどうなっているの?
NeNe:プリ機なので、つくりとしては大きな箱。中にはポスターがたくさん貼ってあります。昔、駅で貼られていたような校則のポスター、たとえば「スカートを短くしてはいていたら、痴漢に遭いますよ」っていうのとか……。
高木:ああ、あったよね。
NeNe:そういうポスターが存在していることって、インターナショナルスクールに通っていた私からすると、「何それ?」って思うんです。日本の校則、やばいなって。だから、そういうポスターを皮肉った作品をつくりたかったんです。
高木:面白いね。
NeNe:他にも、粘土で着れるワンピース、鎧みたいなものをつくったり。
高木:うちの会社で『IWAKAN』っていう雑誌をつくっているチームがあるんだけど、なんか世界線が近い気がする。紹介するよ。
NeNe:本当ですか? 嬉しいです。私はこんな感じで、普段から「セクシー」と「フェミニズム」をテーマに、創作活動をしています。だけど、セクシーとフェミニズムって、一般的には相反する概念だと捉えられがちで。でも、私は両立できると信じています。高木さんはどう思いますか?
高木:こんなことを言うのは良くないかもしれないけど、正直、触れるのがちょっと怖いトピックだよね。知らないのは良くないけど、知っているからこそ、簡単に言えなくなることもあるし。
ちなみに、NeNeさんが「セクシーとフェミニズムは相反する」と感じたのって、どういう瞬間?
NeNe:フェミニズムって、同じコミュニティ内で仲たがいしたり、排除しようとしたりする動きがあると思うんです。
高木:わかる。
NeNe:例えば、セックスワーカーについて、反対する人もいれば、賛成する人もいる。私自身もセクシーなものが好きだし、みんな自分が好きな格好をしていればいいじゃんと思うんですけど、人の格好を見て、さらけ出しすぎているよねって言われることもある。
高木:いわゆる「男性が求める女性的なもの」になっているんじゃない?っていう話になったりとかね。
NeNe:そうです。
高木:難しいよね。個人の中にも多様な面があっていいはずなんだけど、発信しているもののサンプルが少ないと、その一面が人間すべてを代表しているように見えてしまう。
だからNeNeさんの場合、他者が認識できる自分のサンプルを増やす、つまり、作品も含めてアウトプットをもっと増やすっていうのが、まずひとつできることかなと思った。
NeNe:サンプルを増やす……なるほど。
高木:うん。で、そのときのポイントは、主語を大きく語らないこと。「フェミニストは」とか大きい主語を使わないで、自分が好きだからっていう文脈で、作品を出していく。
NeNe:曖昧さがポイントなんですかね。
高木:そうそう。違う言葉で言うと、「exformation」。僕が好きなグラフィックデザイナーの原研也さんの言葉で、「information」の逆の意味の造語。日本語にすると「未知化」なんだけど、「進んでいるからこそわからなくなっている」という状態があるっていう考え方で。
作品が少ししかないと、「それでフェミニズム語るの?」って言われてしまうかもしれないけど、NeNeさんが作品をたくさんつくることで、セクシーとフェミニズムの二項対立っぽさは、グラデーション化されて薄まっていく。
NeNe:なるほど。
高木:「セクシー」と「フェミニズム」は、両立できないかもしれないし、できるかもしれない。そこらへんがぐちゃぐちゃしていて、でも言語でうまく説明できないから、アートで表現しているんです、でいいと思う。
みんな、すぐに答えを求めがちだけど、アートを通して問いを増やして、考えさせるっていうのが大事な気がする。うまく言語化できないし、無理にしない。それこそ、アートの良さだよね。
いまも昔も、フェミニズムって厄介な存在?
NeNe:作品づくりといえばそうなんですけど、私はいま、友達とZINEをつくっていて。アートや音楽、フェミニズムをテーマにして、アーティストにインタビューをしたいなと構想中なんです。
高木:めっちゃいいね。
NeNe:ありがとうございます。ベースのテーマは「フェミニズム」なんですけど、タイトルページに「私たちはフェミニストです」って書きたいかっていうと、そういうのをつくりたいわけじゃないと思っていて……。
高木:なるほど。
NeNe:やっぱりフェミニズムって、どこかタブー視されていると思うんです。きっと、自分たちをそういう思考に括りつけられたくないバンドとかミュージシャンもいるはず。
だから、もし高木さんがバンドやアーティストにインタビューするってなったときに、どんな感じにアプローチするのか、伺いたいです。
高木:え~。どうだろう。
NeNe:私は「ライオット・ガール」っていう、1990年代に起こったフェミニストによるアングラなパンクミュージックの流行とか、サブカルチャー運動とかを参考にしながら、どうやって女性アーティストは自由を築いてきたか、とかを聞いてみたいなと考えていたりもしたんですけど。
高木:そのZINEでは、フェミニズムってそもそも、言葉としてすごく大事なもの? めっちゃ意識したい?
NeNe:う~ん。バンドやアーティストに「フェミニズムって、どう思いますか?」を問いたいわけではないです。
高木:なんか、NeNeさんの中に、フェミニズムに関心があるところと、違和感があるところがあるんだと思う。その正直なところを、出発点にしてもいいのかなと思う。
NeNe:たしかに、自分でも「フェミニズムを語られることが面倒だ」って思われている、そのこと自体を面白がっている部分はあります。
高木:その出発点は正直でいいと思うよ。共感されそう。これがアカデミアの第一人者みたいな人の前だったらそんなことは言えないけど、でも背負っているものがあるわけでもないと思うから。
NeNe:そうですね。
高木:だからアーティストに対しても、正直に「あなたたちにはオルタナティブな香りを感じたから、取材しました」って伝えて、聞いてみる。自分の言葉で語れることがなによりも大事だから。
NeNe:フェミニズムって言っておけばわかりやすいし、やりたいことが相手に伝わりやすいかなと思っていた部分がありました。
高木:フェミニズムっていう言葉を使うことで、たしかにパッケージとしては機能するかもしれないけど、「フェミニズム(仮)」ぐらいでもいいのかも。
NeNe:たしかに!
高木:ちなみに、これからはどうするの?
NeNe:9月から、LGBTQIA+にフレンドリーなイギリスのブライトンにある美大に留学します。そこでファインアートを学ぶ予定です。
高木:いいな〜。僕も50歳ぐらいになったら本格的にアートを学んで、アーティストとして生きてみたいなぁ。
高木新平さんプロフィール
1987年、富山県生まれ。早稲田大学卒業後、1年間の広告会社勤務を経て、 2014年に「誰もがビジョンを実践できる世界をつくる」をミッションとした 株式会社ニューピースを創業。従来のブランディングに対し、未来の価値観を波及していく「ビジョニング」を提唱し、数多くのスタートアップのビジョ ン開発や市場創出に携わる。また自社においてジェンダーやコミュニティといった、21世紀の主題を事業展開。3児のパパでもある。
今回登場してくれた10代
NeNeさん(19歳)
SFのような世界観で女の子のセクシーを表現する、「マルチメディアセクシーアート」を創作するアーティスト。今秋からイギリスの美大に留学予定。
Photo:Goku Noguchi
Text:Ayuka Moriya
Edit:Takeshi Koh