聞きたいことや悩みごとは、SNSでも聞けるけど、やっぱり真剣な相談は、面と向かってしたほうが伝わるもの。「10代なんでも相談室」は、独自のスタンスで社会を生きる人生の先輩に、10代が聞きたいことを聞きにいくシリーズです。
今回迎えた先輩ゲストは、さまざまな企業に向けて社会課題を起点としたビジョンの設計を提供し、また自社でもさまざまなブランドやプロダクトを展開する、株式会社ニューピースの代表取締役CEO・高木新平さんです。
高木さんに質問をぶつけるのは、以前、Steenzに登場してくれた、安達晴野さん、NeNeさん、七転さんの3名。自身の活動に関することからプライベートな内容まで、いろいろな質問が飛び交いました。
校則問題と闘い続けてきた10代アクティビスト・安達晴野さんが、気になることを聞きます!
最初に質問をしたのは、高校時代から校則問題のあり方を考え続けている安達晴野さん(19)。早稲田大学に通いながら、事業として社会課題や政治課題などに取り組んでいます。大学の先輩でもある高木さんに、聞きたいことがたくさんあるそう。
理不尽な校則は、ずっと存在している?
安達:私は高校時代から理不尽な校則問題と闘ってきました。頭髪指導をはじめ、日本にはまだまだ理不尽な校則が多いと思います。高木さんの学生時代はいかがでしたか?
高木:高校のころ、僕は一回も自由を感じたことがなかったかな。地元・富山の進学校に通っていたんだけど、校則は嫌だったし、抗っていたと思う。髪を染めたりもしたし、一回、ちょっとやらかしちゃったこともあって。
別に法を犯したわけじゃないんだけどね。当時はまだ体罰みたいなのがギリギリ存在していた時代だったから、体育教師に「坊主にしろ」と言われたり。
安達:ええ!
高木:それで坊主にしたんだけど、ラインを入れていったんだよね。そしたら、なんやかんやで1週間、謹慎処分をくらったんだ。
安達:すごい反骨精神ですね。
高木:安達くんの学校はどんな感じだったの?
安達:僕は通っていた中学校が厳しかったので、高校は自由なところに行きたいと思って、「自由の北園」と呼ばれる都立北園高校に進学しました。でも入学してからしばらく経つと、校則のルールには明記されていないけど、先生たちの中で、暗黙のルールが存在していることに気づいて。
高木:例えば?
安達:髪を染めるのが禁止だったり、体育祭で女装するのが禁止されていたり。
僕は今でこそ金髪にしていますが、もともとは黒髪で。でも校則に記されていないのに、金髪がダメっていうのに、なんか違和感を覚えて。ましてや自らの意志で金髪にしたい人がいるなら、金髪にできて然るべきだと思い始めて、そこから声をあげ始めたんです。
高木:なるほど。
安達:金髪になって指導に引っかかれば、そこで先生と絶対に校則の話ができると思って、頭髪検査前日に染め直したこともあります(笑)。でも、先生が「こいつと関わるとやばい」と思ったのか、当日になって、頭髪検査が中止になって。一部の管理職の先生から「面倒な生徒だ」と思われていたかもしれません。
高木:面白いね。僕は、何かを始めるときって、衝動的でいいと思う。だって、物事を始めるときはうまく説明できないじゃん。なぜやりたいかもうまく説明できなくて、でもとりあえずやり始めちゃうし、それで良いと思うん。でも、でもまわりを変えようと思うなら、まわりがそれに乗ってくれないといけないから、難しいよね。
安達:本当におっしゃるとおりで、まわりを変えるのってすごく難しくて……。活動をしていると、自分の中で求めている「自由」ってなんだろう、そして自由と一緒に並べられる「責任」ってなんだろうって考えることがあるんです。
責任が取れないから、その人の権利や自由がなくていいっていうのはおかしい。「責任」という言葉で、自由を萎縮させてしまっている気がします。
高木:なるほど。僕は「自由と責任」という言葉が機能しているとも思っていなかった。
安達:それはどういうことでしょう?
高木:僕の私見だけど、そもそも日本には個人主義が根付いていないんじゃないかと思っている。夏目漱石の小説にも「世間が許さない」「世間というのはあなたじゃないか」っていうシーンがあるけど、つまり、日本には個人と社会があるんじゃなくて、個人と、“世間を気にする自分”だけがあるっていうような。これってつまり、世間主義なんだよね。
安達:たしかに。
高木:これまでずっと、画一的な社会で、みんなでなんとなく幸せになっていく経済モデルで戦後やってきたし。だから、自由による成功体験がある人は、ほぼいないと思う。
僕の高校生のころの話に戻すと、親父が地元でずっと高校の教師をやっていたの。で、さっき僕が謹慎処分を受けたときに、親父と学校に謝りに行ったんだよ。そしたら、僕らが謝る学年主任の先生が、親父の教え子だったっていう。そのときに、僕は初めて責任っていうものを感じた。親父が教え子に謝る姿を見て、本当に悪いことしたんだなって。髪の毛どうこうは悪いと思っていなかったんだけど、一線越えちゃったなって。
安達:謝るお父さんの姿を見て、責任を感じられたってことですよね。
高木:そう。それから受験勉強をがんばった。親父のプライドのためというか。親父本人はそんなに気にしていなかったみたいだけど、僕は気になってしまったから。親父の面子のために頑張ったところはあるよね。
安達:やっぱり自由とか責任って、誰かとの関係性で生まれるものだし、気づかされるものですよね。
高木:そうだと思う。だから安達さんも、その視点で闘い方を考えたほうがいいかもしれないね。
僕が頭髪指導の問題と闘うなら、生まれながらに黒髪じゃない人たちを集めるかな。自由の勝負じゃなくて、人権の勝負というか。ありのままの姿っていうものが許容されていない人たちの声を集めて、変えにいくかな。
髪の毛だけじゃなくても、人間って、誰しもどこかでマイノリティな要素をもっている。でも基本的には、それを押し殺して生活しているよね。だから、そこを「我慢しなくていいよ」って言われたら、すごいリラックスできるし、みんなが味方になってくれると思うんだ。
もっとフラットに政治の話をするためにできることとは?
安達:もうひとつ聞いてもいいですか? 私は政治にも興味があって、大学では政治学を学んでいます。校則問題について政治家の方と何回か懇談したり、この前の参議院議員選挙でも、街頭演説とか、選挙運動にも参加したりしていて。
高木:すごいね。
安達:今回の選挙では、SNSでも自分で選挙のことを積極的にシェアするようにしたり、友達と話したりして、声をあげれば政治や社会は変わると実感したんです。
高木:うんうん。
安達:でももっともっと、フラットに気軽に政治の話をできる環境があったらいいなと思っていて。どうすれば友達とカジュアルに、政治のことを話せるようになると思いますか?
高木:わかるなぁ。僕の会社でも、社員同士で政治のことを話す機会っていうのがないから。選挙のときはイベントとかあるけど。もっと話せたらいいよねって思っている。
それこそ、草の根活動的には、企業でやっている事業を切り口に、政治のことを考えるワークショップとかをやっているんだけど。それをやっていてもやっぱり、本当にハードルが高いなって思う。
といっても、日本にまったくそういう土壌がないかというと、そういうわけじゃない気がする。1969年ぐらいの学生運動のときは、日本でも政治を語るのがオシャレだったわけじゃん。
安達:喫茶店とかで、授業をサボって話していたみたいですね。
高木:でも今ってさ、政治のニュースになると、スキャンダルとかさ、宗教と政治とか……。
安達:汚い話ですよね。
高木:そう。だから、「政治がすげーかっこいい!」っていう瞬間は、ほぼ見たことがないと思うんだよね。
安達:たしかに。
高木:そりゃあ話題にしたくなくなるよね。僕も積極的に政治についてしゃべりたいかと言われたら、しゃべりたくないもん。
政治関連の仕事とかもやったりしているけど、世の中の人たちが普段から政治のことを話したいかというと、そうは思わない。それは政治=ダサいっていうイメージが染みついているからだと思う。
安達:どうやったらかっこよくなりますか?
高木:アイコンが必要だよね。新しいヒーローみたいな存在。「かっこいいなぁ、政治家」って思わせるような存在が必要だと思う。
いまって、イーロン・マスクとか、多少問題もあるけど、見ていてカッコいいじゃん。「こんな社会になっていくんだ!」っていうビジョンがある。でも、そういうのをいまの日本の政治家からは感じられないよね。
安達:たしかに、政治のダサいイメージは否めないです。まずは僕が政治運動に携わるときに、垢抜けるところから始めないと……(笑)。
高木:(笑)。進んでいることや革新に対して、なかなか「いいね!」の声が届きにくい世の中だけど、がんばって!
高木新平さんプロフィール
1987年、富山県生まれ。早稲田大学卒業後、1年間の広告会社勤務を経て、 2014年に「誰もがビジョンを実践できる世界をつくる」をミッションとした 株式会社ニューピースを創業。従来のブランディングに対し、未来の価値観を波及していく「ビジョニング」を提唱し、数多くのスタートアップのビジョ ン開発や市場創出に携わる。また自社においてジェンダーやコミュニティといった、21世紀の主題を事業展開。3児のパパでもある。
今回登場してくれた10代
安達晴野さん(19歳)
『自由の北園』と呼ばれる、校則のない都立北園高校の在学時より、校則と生活指導の問題に取り組みを行ってきた。現在は早稲田大学政治経済学部に進学し、政治学などを学んでいる。
Photo:Goku Noguchi
Text:Ayuka Moriya
Edit:Takeshi Koh