「気になる10代名鑑」202人目は、坂本亮さん(19)。ファッション分野が抱える人権問題の解決を目指した学生団体「やさしいせいふく」の立ち上げに携わるなど、多くの人が生きやすい社会を目指して、さまざまなアクションを起こしています。そんな坂本さんに、活動に対する思いやルーツを聞いてみました。
坂本亮を知るための5つの質問
Q1.力を注いでる活動について聞かせてください。
「人や自然を痛めつけることで成り立ってしまっているファッション業界を変革していくため、『やさしいせいふく』という学生団体を立ち上げました。この団体は、制服という身近な存在をきっかけに、中高生の目線で大量生産や大量消費、あるいは児童労働といった社会問題を広めることを目的として活動しています。
他にも、悩みを抱える人の『周囲の人のあり方』に焦点を当てた映像プロジェクト『Validationプロジェクト』に参加し、ショートフィルム制作に携わったり、『一般社団法人パートナーシップ協会』で、ジェンダー平等を目指して、広告や商品に使われるジェンダーに関する表現のガイドラインを作成しています。
これらの活動を通して、『みんなが生きやすい世界ってどんな世界だろう』とか、『この世界で生きている人々ってそもそも誰のこと?』といった、社会や人間の不思議を自分なりに探求中しています』
Q2. どうしてそのテーマで活動を始めたんですか?
ハッキリとした経験や体験はないのですが、強いて言えば、『人』にすごく興味があるから……ですかね。
昔から他人の言葉に触れて、『この人から世界はどう見えているんだろう』『なぜそう見えるのか』『なぜそう見たがっているのか』とかを考えるのが好きなんです。
なるべく人と深い会話することを意識してきたからか、友達から性被害についてのことや、トランスジェンダーであることを打ち明けられることも多くて。そうしたことがきっかけになって、『どうすればこの世界で生きる人々が生きやすくなるんだろう』と考えるようになりました。それを模索するためにも、さまざまな活動を続けています」
Q3.活動する上で大切にしているポイントやこだわりはありますか?
「『遊び』を大切にすることです。ここでの『遊び』には3つの意味があって。
まずはそのままの意味の『遊び』です。僕は何事も遊び心を持って、楽しんでやらないと続かなくて。だから常に『学ある遊び上手』を目指して行動しています。
それから、ゆとりや余裕といった意味の『遊び』です。わからないものをわからないままにしておけずに、意味あるもので埋めようとしてしまったり、黙り込むことを我慢できなかったり……。キャパオーバーになってしまう部分があるので、余裕を持つことを意識しています。
そして、よく『溺れている人は遊んでいる人と見分けがつきにくい』っていうじゃないですか。この混沌とした世の中の荒波にもまれていると、僕自身、溺れそうになることがあるんです。でも、それは別の人から見れば遊んでいるようにみえるかもしれない。だから、『自分は溺れているんじゃなくて荒波で遊んでやってるんだ』と思うと気が楽になるんです。そういった意味でも遊びを大事にしています」
Q4. 社会について「こうあってほしい」と思うビジョンがあれば、教えてください。
「『誰にも見られていない』『見捨てられた』というような孤独に陥る人々が存在しない、あたたかい世の中になってほしいです。
僕は『社会』とか『人』とかって、実体がそこにあるわけじゃなく、その対象に向かう認知の集合として、『社会』とか『人』という像が浮かび上がるのだと考えています。逆に言えば、現状、人々に認知されなければ存在しないも同然の世の中だと思うんです。
だからこそ『社会』や『人』を変えることで問題の解決を目指すことよりも、『社会』や『人』を見つめる認知を変えることで、問題を解決することが大事だと思うんです。根本的に違う人間同士だけど、違うなかにも通じ合うものを見出して、時間や食べ物、喜びや悲しみなどを分かち合えたら、ひとりじゃないと思えるのではないでしょうか」
Q5. 将来の展望/夢は何ですか?
「僕自身、何事にもあまりこだわりがない性格なので、明確な理想像は今のところなくて……。でもこんな性格だからこそ、どんなフィールドでも柔軟に対応できるという点で、強みになってくるんじゃないかと思っています。
たとえば政治やビジネス、あるいは福祉やカルチャーというように、いろんな分野に片足を突っ込んで、その境界線をにじませていきたい。そして、そこから得た経験や知識で社会の『遊び』の部分を担って、いろんなアプローチで、個人や社会がもつ既存の物事の見方を変えて、より多くの人が生きやすい社会を実現させたいと思います」
坂本亮のプロフィール
年齢:19歳出身地:東京都所属:国際基督教大学、やさしいせいふく、Validationプロジェクト、M&P株式会社アート事業部、一般社団法人パートナーシップ協会趣味:NHKのドキュメンタリーをみること、他人の言葉に触れること
坂本亮のSNS
ニュースとかで代名詞として性別を使う必要ってある?「ナミビアから入国の男性」って「ナミビアから入国の人間」でも別に問題ないよね。
— さかもと (@ryo_sakamot0) December 1, 2021
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Photo:Eri MiuraText:Yui KatoEdit:Takeshi Koh