
「気になる10代名鑑」の1118人目は、 錢谷美怜 さん(19)。多摩美術大学でグラフィックデザインを学びながら、「文化と教育」をテーマに作品制作に取り組んでいます。デザインを通して「自分の好き」と「社会への伝え方」のバランスを探り続ける錢谷さんに、創作の原点や今後の展望について聞いてみました。
錢谷美怜を知る5つの質問

Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「多摩美術大学で、グラフィックデザインを学んでいます。課題の量が多く、求められる質も高いので、毎日制作に追われる日々で。でも、その分、自分の興味を深く掘り下げられる環境です。
グラフィックデザインは、広告やポスターなど、社会にメッセージを伝えるための手段でもあります。だからこそ、『自分の好き』と『社会への伝え方』のバランスを探りながら、制作しています。
作品を作るときは、日本文化や教養、子どもの教育などをテーマにすることが多いです。実家が京都にあり、四季の行事や日本の風習を大切にする家庭で育ったこともあって、特に日本文化に惹かれるようになったんです」
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Q2. 活動にあたってのファーストアクションは?
「総合芸術高校の美術科を受験したことです。
3歳のときから『将来はファッションデザイナーになりたい』という夢があったので、1年次から専門的な分野を学べる学校に行きたくて。中学3年生から予備校に通って、デッサンの勉強をしました。予備校では驚くほどセンスの良いひとたちに出会って、最初は理想との差に落ち込むこともありました。でもその経験が、自分の成長を本気で考えるきっかけになったんです。
入学後、さまざまなデザインの分野に触れることができ、そこでグラフィックデザインの魅力にも気づくことができました。懐かしい思い出や、見逃しがちな日常の中でのときめきをかたちにするデザインに、強く惹かれるようになったんです」

Q3. どんなことをテーマに活動をおこなっていますか?
「テーマは『文化と教育』です。
母の出身が京都で、実家には掛け軸や雛人形、屏風などがあり、日本の文化がとても身近な存在でした。その影響で、自然と日本文化が好きになったんです。高校の卒業制作では、やまと絵や浮世絵をモチーフに制作をしました。最近は、子どもの内面や人格形成など、教育にも関心があります。
美術館に行くのが好きで、作品だけでなく、その背景や意図なども、美術館用のメモに記入しながら鑑賞します。版画のかすれや凹み、線の表情など、日本らしい味わいのある表現に心を惹かれますね」
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Q4. 活動をする中でつらかったことは?
「小さいころからずっとファッションデザイナーになるのが夢でした。3歳のときからずっとその道を目指していたのですが、高校1年生のときに初めて服を作ってみて、『自分には向いていない』と気づいたんです。手先が不器用で、立体物をつくるのが苦手で。
そのときは夢を失ったような感覚があり、本当にショックでした。高校ではデザインを専攻することを決めていたので、専攻を変えることも難しくて。
でも、逆にファッション以外のデザインの世界を知ることができたり、課題を通じてどのデザインと相性がいいか確かめられたりしたので、いまでは本当にデザイン専攻で良かったと思っています。焦らずに、じっくりいろいろと挑戦することの大切さを、あのとき痛感しました」

Q5. 将来の展望は?
「将来はアートディレクターとして活躍したいです。持ち前のリーダーシップや思考力、発想力を生かして、世の中にたくさんの作品を生み出していきたいと思っています。特に、広告など、目に見えるかたちにする仕事に興味があります。会社に入ったら、自分の興味分野だけでなく、幅広いテーマや表現に関わっていくと思いますが、それも含めて魅力的だと感じていて。
わたしにとってデザインは、主張しすぎず、けれど確かに人の暮らしを支える存在なんです。これからも、何気ない日常や過去の記憶、生活の中にある小さな美しさをすくい上げて、誰かの日々を彩るものを作り続けたいです」

錢谷美怜のプロフィール
年齢:19歳
所属:多摩美術大学美術学部 グラフィックデザイン学科
趣味:散歩、自然観賞、会話、読書、写真、美術鑑賞、史跡巡り、お笑い
特技:写真、計画力、造形力、発想力、勉強
大切にしている言葉:おもしろき こともなき世をおもしろく 住みなすものは 心なりけり
錢谷美怜のSNS
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高校の卒業制作💄
『ザ・クール・レイディーズ』
1800×728mm×3枚 b3×3枚メイクと時代についての作品です💅 pic.twitter.com/8I5ajJiACD
— ゼニガメ (@my___mz) December 12, 2024
Photo:Nanako Araie
Text:Mizuki Maeda






