Teen's Snapshots

「それは答えじゃない」と言われた小学生時代がきっかけ。研究のまち・つくばで教育企画を立ち上げた高校生【永井恵茉・16歳】

「それは答えじゃない」と言われた小学生時代がきっかけ。研究のまち・つくばで教育企画を立ち上げた高校生【永井恵茉・16歳】

「気になる10代名鑑」の1109人目は、永井恵茉さん(16)。教育の在り方に疑問を抱き、語彙学習アプリ「Zukerize」の開発や、感動体験から生まれる学びのプロジェクト「Emody」を立ち上げました。「自分で考えて、言葉にすること」を大切にしている永井さんに、活動の原点から将来の展望まで、じっくりとお話を聞いてみました。

永井恵茉を知る5つの質問

Q1. プロフィールを教えてください。

「中学3年生のときに、語彙を自分で登録・グルーピングできるアプリ『Zukerize』を開発しました。

ただ暗記するのではなく、自分で考えながら理解を深める学びをかたちにしたものです。実際に、通っているつくばの茗溪学園アカデミアクラスで、約80人にプロトタイプを使ってもらいました。

ほかにも、高校生になってからはつくばの資源に目を向け、研究所を舞台にした小学生向け学び企画『Emody(エモディ)』を立ち上げました。

Emodyは、Emotion(感情)とStudy(学び)を組み合わせた造語で、感動体験から生まれる、『わかった!』という納得の学びを届けることを目的にしていて。地質標本館で、小学生が研究者といっしょに地層を観察し、考察したことを発表するというイベントを開催しました。子どもたちの納得した表情や笑顔から、学びが感動体験へ変わる瞬間を感じることができて、やりがいを感じましたね。

この取り組みで、IBARAKIドリーム・パス2024で金賞を受賞することができて。現在は、大学受験に専念しながらも、登壇やトークイベントを通じて、学びの可能性を発信しています」

Q2. 活動を始めたきっかけは?

「小学生時代に感じた教育への違和感が、活動を始めるきっかけです。

学校の授業では、ドリルを繰り返して模範解答を覚えることが中心で、自分なりに考える時間があまりなくて……。読書が好きだったのですが、国語の時間に登場人物の心情を自分の視点で語ったり、別の本の引用を交えて発表することに対して、『それは答えじゃない』と言われてしまったことがありました。

そんなもやもやを抱えたまま中学校に進学したのですが、中学からは世界が変わって。例えば、『0は自然数なのか?』という問いから始まり、定義を掘り下げていく授業スタイルで。友人と議論する日々がとても楽しくて。そこで初めて、霧が晴れるように学ぶということの意味が見えた気がしました。そこから、『自分で考えて、言葉にして初めて本当の学びになる』ということが、自分の中に軸として根づいていったような気がします」

Q3. 活動にあたってのファーストアクションは?

「最初の一歩は、中学3年のときに応募した『茨城frogs』という人材育成プログラムです。学校で講演していた先輩メンターの話を聞き、やらない後悔より、やった後悔をしたいと思い切って応募しました。

プログラムの中では、初めてのアプリ開発やプレゼンに挑戦し、同世代や大人と本気で意見をぶつけ合う体験をしました。孫正義育英財団やクリエイター育成プログラムの未踏ジュニアの経験者といった、同年代でありながら圧倒的な知識と発想力を持つ仲間たちに出会って、新たな刺激を受けたのをいまでも覚えています。

『自分はまだまだだ……』と悔しさで涙が止まらなかった夜もありましたが、その経験が行動の原動力にもなりました」

Q4. 活動の中で、悩みがあれば教えてください。

「中学では勢いのまま突き進めたけれど、高校に入ってからは、活動と勉強の両立に苦労して……。

Emodyでは、活動資金をいただけた分、責任も大きくて。受験勉強を優先するか、プロジェクトを続けるか、悩んだのですが、最終的には『長く続けるために一度止まる』という決断をしました。

ほかにも、未踏ジュニアに2年連続で挑戦したこともありましたが、2度とも落選。面接まで進んで落ちたときは本当に悔しかったです。でも、その過程でメンターからもらったフィードバックが、自分の考えを整理するきっかけになりました。

失敗や中断も『自分で決めた選択』として受け止められるようになったことは、大きな成長だと思っています

Q5. 将来の展望は?

これから大学受験を控えているので、大学では、経営や教育の分野、ほかにも本が好きなので、文学を学んでいきたいと思っています。経営では、サービスを形にする力を、教育では人を育てる視点を、文学では言葉の力を。将来の選択肢を広げるために、横断的に学び続けたいです。

小学生のときに『マチルダは小さな大天才』という本を読みました。主人公の『自分で行動しないと何も始まらない』という姿勢を、とても尊敬していて、いまでも原動力にもなっています。

将来的には、再びEmodyを発展させて、地域の魅力と学びをかけ合わせた教育モデルをつくりたいです。小学生が『わかった!』と心から感じられる瞬間を増やすことが、いまのわたしの目指す未来です」

永井恵茉のプロフィール

年齢:16歳
出身地:茨城県つくば市
所属:茗溪学園中学校高等学校
趣味:読書、乃木坂46、体操競技、鬼滅の刃
特技:プレゼン、行動力、描画、三点倒立
大切にしている言葉:克己心

Photo:Nanako Araie
Text:Serina Hirano

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Serina Hirano

ライター/ディレクター

10代名鑑ディレクター兼ライターとして、2024年1月にSteenzへjoin。東京と伊豆の二拠点で活動中。インタビューを中心とした記事をはじめ、学生、スタートアップ企業、まちづくりの現場まで多方面で活躍。

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