
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、日本や世界の識字能力についてご紹介します。
毎年9月8日は「国際識字デー」
毎年9月8日は、UNESCO(以下、ユネスコ)が定めた「国際識字デー」です。識字とは、文字の読み書きができることを意味します。公正かつ平和で持続可能な社会をつくるために、識字の重要性を広めることを目的に制定されました。
毎年テーマが決められており、2024年は「“”Promoting multilingual education: Literacy for mutual understanding and peace”(多言語教育の推進:相互理解と平和のための識字)」。そして今年は、「“Promoting literacy in the digital era”(デジタル時代における識字の推進)」となっています。
世界の識字能力の現状とは
ユネスコによると、2022年時点で15歳以上の7人に1人(7億6500万人)が、基本的な識字能力を身につけていないのだそう。理由としては、戦争や紛争の影響、貧困、特定の地域に残る「女の子に教育は不要」という考え方、自宅から学校が遠くて通えない、などが挙げられます。また、そのような理由から6歳から18歳までの約2億5000万人が学校に通えていないそうです。
現代において読み書きの能力は、身につけていないと困ることがたくさんあります。例えば、就きたい職業の勉強をするときに、テキストが読めないと学ぶハードルが高くなります。それを理由に、諦めてしまう人もいるでしょう。さらには、過酷な労働条件で給料の低い仕事を選ばざるを得ない状況になる可能性もあります。職業選択の幅を狭める原因になってしまうのです。
ほかにも、契約書などの内容を理解することが難しくなり、騙されたり搾取されたりする危険性も高まります。自分の身を守るためにも、識字能力は大切なのです。
日本の識字率はほぼ100%と言われているけれど……
現在、日本の識字率はほぼ100%。世界経済フォーラムが発表した『グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書2025(The Global Gender Gap Report 2025)』においても、教育分野の識字率は148カ国中1位と報告されています。日本には義務教育制度があるため、この結果に驚く方は少ないかもしれません。
しかし、2020年に実施された国勢調査によると、小学校を卒業していない人は9万4455 人、最終学歴が「小学校卒業」の人は80万4293人に上るとのこと。調査には外国人(※1)も含まれており、就学義務がないことに加え、経済的な問題や言葉の壁などを理由に就学せず、働きながら生活する人が少なくありません。また、年齢別で見ると80代が最も多く、戦争による教育制度の変化などが背景にあるようです。日本では現在、対策として、夜間中学校の整備などが進められてます。
また近年は、文字は読めるけれど内容の理解までは難しい「機能的非識字」という言葉も耳にします。文部科学省・国立教育政策研究所が公表した「学習到達度調査2018年調査(PISA2018)」によると、読解力を要する「テキストから情報を探し出す問題」や「テキストの質と信憑性を評価する問題」などの正答率が低かったそうです。一方で、読書が趣味と話す生徒ほど、読解力が必要な問題の得点が高かったとも分析されています。
※1:日本に3ヶ月以上住んでいる、あるいは住むことになっている外国籍の人。
改めて識字能力について考えてみよう
文字の読み書きができることを意味する「識字能力」。義務教育制度のある日本では教わることが当たり前のため、海外の状況に驚いた方もいるのではないでしょうか。しかしその一方で、国内では「機能的非識字」という新たな課題も浮上しています。このように、ひと括りに識字能力の問題と言っても、国によって内容が異なります。それぞれが原因を正確に把握し、適切な対応がとられることを願いたいですね。
Reference:
ユネスコスクール公式ウェブサイト
「義務教育未修了者」とは誰か― 2020 年国勢調査における最終卒業学校調査結果の分析を中心に ―|江口怜
OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント|文部科学省・国立教育政策研究所
The Global Gender Gap Report 2025|WORLD ECONOMIC FORUM
Text:Yuki Tsuruda