
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、世界的に注目されているウガンダのレスリングについてご紹介します。
ウガンダの田舎町でいま、プロレスがアツい!
東アフリカにあるウガンダの首都・カンパラから1時間ほどで着く、ムコノ地区のチランギラという小さな村。農村が広がる田舎に突如、熱狂的な試合が繰り広げられるレスリング会場が姿を現します。ここは、SGW。レスリングファンのウガンダ人、ダニエル・ブンバ(以下ブンバ氏)によって2023年に設立されたレスリングアカデミーです。
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SGWは、Soft Ground Wrestingの略。設立当初はレスリング場を購入する余裕がなく、泥の上で戦っていたことからこの名前がつきました。創設者のブンバ氏は、幼少期から世界のプロレスに魅せられたそう。大学卒業後は、WWE(アメリカのプロレス団体)の試合を、コメンテーターを真似しながら地元のルガンダ語に翻訳して解説する活動をしていました。そうした活動を経て、新型コロナウイルスのパンデミックが終わった後、自分のプロレス団体をつくろうと動き始めたといいます。
何もないところから始まったSGW。世界に届くスポーツへ
SGWは設立当初、レスラーを目指す2人の若者を訓練するところからはじまりました。当時はジム用具や医薬品、リングなど、必要な設備がほとんど何もない状態です。しかし、泥の上で戦う試合をオンラインで発信し始めると、WWEや世界中のプロレスラーからすぐに反響がありました。その反響を受け、SGWはいま、ウガンダから世界にレスリングを発信しています。
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SGWはこの2年でクラウドファンディングに加え、歴史的なタイトルを保持するアメリカ人プロレスラーのコーディ・ローズや、過去には新日本プロレスに所属していたこともあるイギリス人プロレスラーのウィル・オスプレイなどからの支援を受け、本物のレスリング場やその他の設備が整いました。
レスリングは村人の希望に。
チランギラでは、村人はスポーツに飢えていました。また、インフラがほぼ整っていないこの村で、レスリングは人生を変える機会になる可能性を秘めており、地元のファンが瞬く間に増えました。現在は、30人以上の女性を含む200人以上の若者が選手を目指して訓練を受けています。
訓練生の中には孤児や学校を中退した人もおり、レスリングで生計を立てることは、地域の若者の希望となっています。
木登りマッチに棺桶マッチ!?
筆者は実際に試合を見に行きましたが、本当に刺激的な時間でした。チケットは日本円にして約200円で、レスラーが飛んでくることもあるVIP席は約400円です。当日はなんと満席で、会場には人が溢れ出し、外からスタンディングで見ている人もいるほどでした。
レスリング場は四方から観客に囲まれ、子供はチケットを購入しなくても見える設置になっていたのが優しい配慮だと思いました。
試合が始まると、1対1のシングルマッチや3対3のトリプルマッチといったごく普通の試合もありましたが、「3人のレスラーが同じ女性に恋に落ち、その女性を巡って戦う」といったシナリオもありました。レスラーのパフォーマンスから試合が始まると、観客の盛り上がりも一層に増していました。
それだけでなく、ユニークな試合は過去にもたくさんおこなわれています。レスラーがユーカリの木にぶら下がったチャンピオンシップをとるために、木に登らないといけない「ジャングルマッチ」では、木登りとレスリングが混ざって一種の新しいスポーツが生まれているかのようです。
ウガンダの民族衣装であるゴメシを女性が着た状態で戦う「ゴメシマッチ」では、民族衣装とレスリングという組み合わせに観客も驚いています。
ひとつのレスリング会場で30人のレスラーが戦う「バトルロイヤルマッチ」では、何が起きているのかわからないほどカオスな試合で迫力があります。
レスラーが負けたら棺桶に入れられる棺桶マッチや、救急車に運ばれる救急車マッチなども。
こういったユニークなパフォーマンスが世界で話題になり、すべてのソーシャルメディアでの動画再生回数は合計5億回を超えています(2025年7月9日時点)。
ウガンダのSGWに注目!
レスリングには、怪我をせずに地面に着地するなど多くのテクニックも必要ですが、ウガンダの若者たちは世界を目指して厳しいトレーニングを乗り越えています。そして何より、ウガンダの村がレスリングによって活気的になり、新たな職と娯楽が生まれています。世界中にファンがいるレスリング。ウガンダではローカルさを増して、新たな魅力が生まれています。より面白さが詰まったSGWを、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
References:
SGW「Home」
MONITOR「PHOTOS: Uganda’s sensational soft ground wrestling gets internet attention」
Text:Hao Kanayama