
「気になる10代名鑑」の1056人目は、朝井葵さん(18)。教育現場における性的少数者への認識やいじめ問題の解決に向けて、個人で活動をおこなっています。アクションを起こすにあたって過去の経験と向き合ってきたと話す朝井さんに、当時のエピソードや影響を受けた人物について詳しく聞いてみました。
朝井葵を知る5つの質問
Q1.プロフィールを教えてください。
「性的少数者の生徒、いじめに関わった生徒、不登校生徒の3視点から、教育現場の対応の見直しを目標に個人活動をしています。自分のせいではない理由で苦しみ、将来を制限される子供たちをゼロにするために、支援制度や教育現場そのものの改革に力を入れていきたくて。
高校2年生のときに、『群馬県高校生リバースメンター制度』という、知事に政策提言をおこなうプロジェクトに参加しました。男女別の校則の撤廃と、教員向けの性的少数者支援の講習会の内容の改定を求めたんです。
既存の講習会のマニュアルは、トランスジェンダーしか想定されていないものでした。でも、トランスジェンダー以外にも性的少数者は存在します。このギャップを解消するために、自身も性的少数者の当事者として講演会の内容を変えようと思ったんです。当時は予算がつかなかったのですが、大学生になったいま、改めて検討してもらえるように働きかけています」
Q2.活動をはじめたきっかけは?
「過去にいじめを受けていたのですが、同級生よりも、先生からの心無い言葉に傷付けられてきました。学校指定のスラックスを履いて登校したときに、当時の担任から『お前がいるから風紀が乱れる』、『ズボンを履きたいということは男になりたいのか』と言われて混乱してしまって。好きな恰好をしただけなのに、協調性が無いと見なされ、当時は辛い思いをしました。
活動を始めたきっかけは、高校の恩師がリバースメンター制度への参加を勧めてくれたことです。社会や学校に対する問題意識を山ほど抱きながらもアクションを起こせていなかったわたしですが、先生が『やってみたらどう?』と言ってくれたことで、一歩を踏み出すことができました」
Q3.影響を受けた人物は?
「中学時代のわたしを救ってくれた、TOKYO FMのラジオ番組『SCHOOL OF LOCK!』の坂田校長、こもり教頭です。リスナーの言葉にちゃんと耳を傾けて、いっしょに怒ったり、いっしょに泣いていたりしている姿に、こんなにも見ず知らずの学生に寄り添ってくれる大人っているんだと思って。
あるとき『どうやったらわたしは学校に行けるようになりますか?』とメッセージを送ったことがあって。放送で実際にお話しさせていただくことになりました。泣きそうになってる中学2年生の話を最後まで聞いてくれて、坂田校長から『自分ばっかり責めてるから、もっと周りを頼っていい』と言われたんです。当たり前の言葉かもしれないけど、当時の自分にはそう言ってくれるひとが周りにいなくて。だからこそ、おふたりの存在がいまの自分に繋がってると感じています」
Q4.活動の中で、悩みがあれば教えてください。
「ときどき、議論の土俵に上がってくれない大人に、一方的に意見を押し付けられることがあります。批判だけをしてどこを改善すればいいのか教えてくれないひとや、学生に支援をしているという肩書きのために出資を申し出てくるひともいるんです。『成果や経過発表はいらないから、とりあえず自分が出資してることだけ発信してほしい』とあからさまに言われたこともあって。
否定されること自体は嫌ではないのですが、よりよいものをつくるためにフィードバックをくれるようなひとと活動したいなと思っています」
Q5.将来の展望は?
「フィンランドのいじめ教育プログラムである、傍観者に焦点を当てた『KiVaプロジェクト』を日本で導入できるように働きかけたいです。莫大な資金と協力者が必要なので、まずはモデルケースになる地域を選び出して実験的におこないたいと考えています。ゆくゆくは全国の学校で実現させたいですね。
あと、創作活動も自分の意思表示ができる手段として大切にしていて。弾き語り、バンド、小説の執筆などで、自分の感情をかたちのあるものに昇華させることが好きなんです。いつかひとに見てもらえるように仕上げて、自分の作品で誰かを救えたら素敵だなと考えています」
朝井葵のプロフィール
年齢:18歳
出身地:群馬県
趣味:読書・一人旅・芸術創作
特技:ベース・ギター
大切にしている言葉:「自分の嫌いな自分には絶対にならない」
朝井葵のSNS
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Photo: Nanako Araie
Text: Yuzuki Nishikawa