
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、アフリカの刑務所の実態をお伝えします。
アフリカの刑務所はヨーロッパから輸入された
アフリカが19〜20世紀に欧米列強の植民地となる以前、この大陸には、現在のような刑の執行場所としての刑務所は存在しませんでした。当時、人々が犯した不正や犯罪行為に対しては、拘禁刑などの懲罰ではなく、賠償で罪を償う措置がとられていました。罰としての投獄は19世紀後半までアフリカにはありませんでしたが、植民地時代にヨーロッパの入植者が人を隔離・処罰するための場所として刑務所をつくりはじめました。
現在、アフリカのほとんどの地域では、罪を犯した人を収容する場所として刑務所制度が採用されています。しかし、村などでは、罪を犯した人に対して異なる措置をとるケースもあるようです。
南スーダン共和国に住む筆者の友人は「私の出身地の村では、罪を犯した人への措置は、現在も村長が決めている。措置には村のための農作業や賠償といった選択肢があり、賠償金を払えないときには、農作物の種を村民に分け与えることもできる。重犯罪者は、村から追放することも可能」と教えてくれました。
一方で、刑務所の実態は国や地域によって様々です。資金のある国では電気工事士や大工といった職業訓練と学習ができる刑務所もあるようですが、一般的にはほとんどの刑務所で重大な問題を抱えています。
アフリカの刑務所は地獄よりもひどい環境?
過密収容は、アフリカの刑務所で重大な問題のひとつです。例えば、アフリカ大陸南部に位置するザンビア共和国では、刑務所の収容率が303%に達しているというデータもあります(2018年時点)。
こうした過密収容は、受刑者の寝る場所や基本物資が不足するだけではなく、食事や医療提供の不足といった問題を引き起こしています。
先ほど例に挙げたザンビアで、具体的にどのような事態が起きているのかを見てみましょう。最新データが不明のため、2009年時点での状況となりますが、当時は15,300人の受刑者に対して、医師1人を含む14人の医療スタッフを雇用しただけであり、国内の86カ所の刑務所のうち、診療所や病棟があるのは15カ所のみでした。また、HIV罹患率も27%と非常に高いにも関わらず、適切な医療措置は全くとられていなかったようです。
また、コンゴ民主共和国最大のマカラ刑務所では2020年、受刑者が2ヶ月間にわたって食事をとれておらず、1週間で少なくとも17人が餓死したという報告もあります。同国では2024年9月、別の刑務所でも、定員の約10倍の人数を収容したことがきっかけで脱獄未遂事件が発生しています。
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このような劣悪な環境であるために、アフリカにおける一部の国の刑務所は「地獄よりもひどい」と言われることがあるのです。
なぜ過密収容が起こるのか
過密収容の原因として、アフリカでは、裁判の判決を待つ「未決囚」や、その他の法的措置を待つ人びとも刑務所に入れられるケースが多いことが挙げられます。警察の捜査が未完了であったり、被告人の代理人がいなかったりする場合、ときに違法であっても、裁判前に収監されてしまうのです。中には、有罪判決を受けるまで10年間も投獄されていたケースが報告されています。
実際、裁判前の被告人が刑務所にいる割合が世界で最も高いのは、アフリカ西部のリベリアです。2008年に発表されたWorld Prison Brief Online. Londonによると、同国では未決囚の割合が97.3%だそう。2位はマリで88.7%、3位はベナンで79.6%、4位はニジェールで76%という結果となっています。
人権を無視した待遇も大きな問題に
アフリカでは、子どもも大人と同じ刑務所に収監されることが多いです。刑務所に入れられた子どもたちは、女性受刑者から生まれたか、軽犯罪を犯した子どもですが、中には「ストリートチルドレンだから」「物乞いをしていたから」といった理由で不当に投獄されているケースもあります。大人と同じ刑務所にいる子どもたちは、常にレイプの危険にさらされています。
さらに、中絶が違法とされている国では、中絶をおこなった女性受刑者の多くが終身刑となります。同性間の性行為を禁止する国では、もしも同性間で性行為をした場合、殴打などの体罰を受けるとも報告されています。ほかにも、南スーダンでは不倫や駆け落ちによる婚姻などで投獄されているケースもあります。
アフリカ各地の刑務所で発生している、さまざまな人権侵害。こうした状況は現在、世界で問題視され、強く批判をする国際人権団体もあります。ただ、刑務所内の環境が劣悪である理由として、資金不足のほかにも、民衆が法的な規定を無視して罪人を制裁する「モブジャスティス」(私刑)の考えが広まっていることも挙げられると思います。筆者が住むウガンダでも「強盗を見たらすぐに周りの人がおさえこむ」といった状況を身近に見るからこそ、刑務所を人権に配慮するべき場として捉える世論は少数であると感じます。みなさんは刑務所のあり方や罪の償い方について、どう考えますか?
References:
Sur「PRISONS IN AFRICA」
Human Rights Watch「Unjust and Unhealthy」
BBC「DR Congo jail: Inmates starve to death in Makala Prison」
World Prison Brief Online. London: International Centre for Prison Studies, 2008 Available at: <http://www.kcl.ac.uk/depsta/law/research/icps/worldbrief/>. Last accessed on: 4 Oct. 2008.
Text:Hao Kanayama