
「気になる10代名鑑」の1046人目は、舟橋未葉さん(19)。名古屋大学教育学部に通いながら、ウェルビーイングの大切さを伝える活動に取り組んでいます。自閉症の友だちとの出会いが原点だと話す舟橋さんに、活動の中で印象的に残っている出来事や、目指す社会のありかたについて聞きました。
舟橋未葉を知る5つの質問
Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「教育を通してウェルビーイングという考え方を広める活動です。
ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的に満たされている状態といわれています。ですが、わたし自身が考えるウェルビーイングは『自分の意見を言えて、自分らしく居られる環境にあること』。現在は、ウェルビーイングを広めるためのワークショップの開催や、発達支援サークル『ちくさ日曜学校』での活動を行っています。
『ちくさ日曜学校』では、月に2回障がい者のかたを大学に招き、紙飛行機を作ったり、近くの動物園に出かけたりしています。ゆるやかに笑いあえる時間を重ねながら、自分らしく居られる場を育てている最中です。
また、今年2月にはアメリカ・オレゴン州の中学校でインターンを経験しました。13歳の生徒たちに向けて『自分が幸せを感じる瞬間』を考えるワークショップを実施するというものでした。でも、ウェルビーイングを自分ごととして捉えられていない子がアメリカにも多いとわかって。わたし自身の体験談を交えながら、言葉にしていく時間を持ちました」
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「小学生時代に、自閉症のクラスメイトと生活を共にしていたことがきっかけです。机を並べて、音楽や生活の授業をいっしょに受けていた時間が、いまでも思い出に残っていて。
ただ、その後は別々の中学校に進み、気づけば障害のあるひとと関わる機会がなくなっていきました。そんな中、高校の授業で出会った『共生社会』という言葉に、どこかモヤっとした違和感を覚えたんです。名ばかりの『共生』ではなく、本当にひととひとがつながれる場所をつくりたい。そう思って、大学進学後に『ちくさ日曜学校』に参加しました。
活動を通して、『誰かと関わりながら、自分らしくいられること』というウェルビーイングへも興味を持つようになりました。障害のあるひとと関われる居場所をつくりたいという気持ちと、ウェルビーイングという考えに出会えたことが、活動の軸となっています」
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Q3. 活動をしている中で、印象的だった出来事は?
「高校時代に所属していた弓道部で開いた、ウェルビーイングのワークショップが印象に残っています。
部活と勉強の両立でみんなが疲れていた時期で、『なんのために弓道をやっているのか』『どんなときに楽しいと思えるのか』をいっしょに考えました。最初は、戸惑っていた仲間も、終わるころには『やってよかった!』と笑顔になってくれて。
自分の気持ちを見つめ直すことで、部全体が少し前向きになったように感じて嬉しかったです」
Q4. 影響を受けた人物は?
「サステナブル系の活動団体『SB Japan Youth Community(nest)』の設立者であり、団体のサポートもしてくださっていた方です。ワークショップで、『大阪万博でできる環境対策を考えよう』というテーマのとき、わたしはゴミ箱を置くなどのシンプルなアイデアしか出ませんでした。
ですが、その方は『動くゴミ箱を設置してみてはどうだろう?』というアイデアをくださり、視点の柔軟さや、思考の深さに衝撃を受けたんです。
『わたしも社会をそんなふうに見てみたい』と思い、現在はSB Japan Youth Community(nest)へ参加しています」
Q5. 将来の展望は?
「将来は、ひとりひとりが自分なりのウェルビーイングを持ち、それを土台に自分の暮らしをつくっていける社会を作っていきたいです。
いまの時代、『なんとなくしんどい』『自分は何をしているんだろう』と感じるひとが多いと感じます。そんなときに自分の気持ちに目を向けて、『いまのわたしはこうだから、こうすればワクワクできるかも』と気づける力が大切だと思っています。
そのために、学校や地域の公民館、大学など、身近な場所でワークショップを開いて、自分の体験や気づきを誰かに届けていきたいです」
舟橋未葉のプロフィール
年齢:19歳
出身地:愛知県名古屋市
所属:名古屋大学 教育学部、ちくさ日曜学校
趣味:旅行、写真を撮ること、自然界隈
特技:弓道、食べること
大切にしている言葉:「努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのならば、それはまだ努力と呼べない」
舟橋未葉のSNS
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Photo:Nanako Araie
Text:Serina Hirano