
「気になる10代名鑑」の1017人目は、さりらさん(19)。地元の広島で、平和活動とビジネスを組み合わせた活動を構想中の大学生です。中学生の頃から、被爆3世として平和を訴える活動を続けてきたさりらさんに、印象的だったパレスチナ人との出会いや将来の夢について聞いてみました。
さりらを知る5つの質問
Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「中学生のころから、被爆者協議会や平和団体への聞き取りや広島平和都市記念碑の碑文研究など平和活動をしてきました。
特に、平和団体の財政に興味があって。2023年に開催されたG7広島サミットジュニア会議では、総理大臣に提出する嘆願書に、財政難を抱える平和団体への金銭的支援を求める文言を盛りこみました。
他にも、いまは平和活動とビジネスをかけ合わせた新しいアプローチができないか模索中です」
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「わたし自身、祖父母が被爆した『被爆3世』です。地元広島で、幼いころから被爆者の体験談などを聞く機会が多くありました。
平和団体の財政に興味を持ったのは、財政難を伝えるニュースを見て衝撃を受けたことがきっかけです。『アルバイトが平和を伝える』という見出しのニュースで、平和記念公園のガイドのボランティアが集まらず有償制度にしたという内容でした。
これをきっかけに平和団体への聞き取りをおこなうと、平和団体が寄付を呼びかけたり資金を募ったりすることが、タブー視されている現実を目の当たりにして。それで、資金調達をしながらどう運営していくのかという『マネタイズ』の分野に興味を持ちました」
Q3. 活動する中で、印象的だった出会いは?
「高校2年生のときに平和記念公園でガイドのボランティアをしていたときに出会った、パレスチナ人の青年の言葉です。
平和記念公園に『安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから』という碑文があります。『この碑文の表現に怒りを感じないのか』と彼に聞かれたときに、碑文の解釈を何も答えられない自分に気づきました。それで、これから平和活動をするうえで、碑文の解釈を自分で持っておくのは必要だなと思ったんです」
Q4. 活動をする中でつらかったことは?
「高校1年生のときのコロナによるロックダウンです。離島の全寮制の高校に通っていたこともあり、コロナの期間は本当に何もできなくて。だからこそ、限られた条件のなかで、できる限り学びをもぎ取ってやろうという気持ちで、いろんなことに挑戦できました。
例えば、アメリカの大学の社会ビジネスやマネタイズについて学べる講座を受講したのですが、そこでの学びから、平和をテーマにしたアート作品をネット上で売ってその収益を平和活動団体の活動資金にするというビジネスモデルを構想しました。
コロナの時期にいろんなことに挑戦したことが、いまの活動につながっていると感じています」
Q5. 将来の展望は?
「平和活動をしながら、それぞれが地元にある負の遺産に向き合い、それをオープンに語り合える社会を実現させたいです。
自分の興味関心のあることと平和活動を組み合わせることができたら、もっと多くのひとが平和について考えるようになるのかもしれません。
わたしの場合は『クリエイティブ』なことが好きでひとと被ることが嫌なので、誰も考えていないような社会ビジネスと平和活動をかけ合わせた取り組みを考えていきたいです」
さりらのプロフィール
年齢:19歳
出身地:広島県広島市
所属:Advanced Community
趣味:芸術鑑賞、旅行、スポーツ観戦、キャンパスビジット
特技:ピアノ
大切にしている言葉:「『辛』いという文字がある。もう少しで『幸』せになりそうである。」(星野富弘)
Photo:Nanako Araie
Text:Haru Ninagawa