
「気になる10代名鑑」の1020人目は、織田悠斗さん(19)。祭りの担い手不足に悩む地域と、大学生や社会人などの若者をつなぐ学生団体「まつりいろ」を立ち上げて活動しています。「自分の町の祭りがなくなるかもしれない」という危機感が、活動のきっかけとなったと話す織田さんに、忘れられない一言や今後のヴィジョンについて聞いてみました。
織田悠斗を知る5つの質問
Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「自分が住んでいる町の祭りが消える悲しさを、誰にも味わってほしくない。そんな思いで、学生団体『まつりいろ』を立ち上げました。
まつりいろのおもな活動は、祭りの担い手不足に悩む地域と、大学生や社会人などの若者をつなげることです。具体的には、祭りに飛び込むきっかけとなるワークショップやツアーの企画・運営を中心におこなっています。
祭りの背景や歴史を学びながら、地域のひとと関わることができるアイスブレイクもおこない、実際に祭りに参加できる仕組みを整えているところです。
こうして祭りの関係人口を増やしていくことで、祭りに関わるひとの『ふたつめのふるさと』を生み出せたらいいなと思っています」
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「地元の近くの地区で、長い歴史を持つ祭りが担い手不足を理由に終わってしまって……。山車も解体され、諦めた様子のひとたちを見たときに、すごく悲しい気持ちになりました。
ぼくにとって祭りは、子どものころから当たり前にあるもので、お囃子の練習や、参加しているひとたちとの時間は何にも代えがたいものでした。そんな祭りが『自分の町からもなくなってしまうかもしれない』と考えたとき、危機感を覚えて……。『何かやるしかない』と心が動き、『まつりたび』というプログラムの構想を考えはじめました。
ぼく自身、『どんなやり方でもかたちに残す』ということを大切にしています。昔から、祭りの様子を写真に残すことが好きだったんですが、この活動もかたちに残るもののひとつになれれば嬉しいです」
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Q3. 活動の中で、悩みがあれば教えてください。
「祭りと関わるなかで、『この感動をどうやって伝えればいいんだろう』と、言葉にできないもどかしさを感じることがあります。
祭りには、音や匂い、笑い声や汗が混ざり合う瞬間といった、その場にいるからこそ感じられる熱気や高揚感があります。でも、それを言葉にしようとすると、どうしても薄っぺらいものになってしまう気がして。
だからこそ、まずは祭りに参加してもらうことが一番だと考えています。いっしょに山車を引いたり、神輿を担いだり、お囃子の音に包まれたり。その中で自然に感じる楽しさや感動を、言葉にしなくとも心で感じてもらうことで、記憶に残してもらえたら嬉しいです」
Q4. 活動をしている中で、印象的だった出来事は?
「愛媛県西条市の祭りに参加したときに言ってもらえた一言がいまでも忘れられません。
初めての土地で、初対面のひとといっしょに山車を担いだのですが、そのとき、町の総代の方から『法被を着たら家族だからね』と声をかけられたことがありました。そこの地域に住んだこともない自分にとって、すごく胸が熱くなる一言でした。
ほかにも、おでんの差し入れをもらったり、見ず知らずの自分に気軽に声をかけてくれたり。外から来たひとを受け入れるあたたかさと、守るべき伝統を大切にする意識が共存している祭りの姿に、強く心を打たれました。
祭りは、町のひとだけのものじゃない。町の外のひとも関わりながら、いっしょに守り続けられる場所であってほしい。そんな理想が、このお祭りでの経験でより鮮明になった気がします」
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Q5. 将来の展望は?
「全国で『祭りといえば織田』と呼ばれる存在になりたいです。
たとえば、『今年の祭り、担い手が集まらなくてどうしよう』『初めての企画をしたいけど、進め方がわからない』。そんな目の前の困りごとがあったときに、真っ先に思い出してもらえるような、祭りに関する駆け込み寺のような存在になりたいと思っています。
まずは、地元である静岡県西部・遠州の祭りをモデルケースに、『祭りを残す仕組み』を作りたい。そして、そこから全国の祭りへ展開し、支援の輪を広げていきたいと考えています。
祭りが続く町は、安心できる町だと思うんです。みんなが声を掛け合えて、困ったときには助け合える。祭りがそういう場所をつくってきたからこそ、これからも守り続けたいです」
織田悠斗のプロフィール
年齢:19歳
出身地:静岡県袋井市
所属:静岡大学情報学部、まつりいろ
趣味:祭りに行くこと、旅行に行くこと、写真を取ること
特技:特一本調子というかなり大きな篠笛(竹の横笛)を吹けます
大切にしている言葉:「人は奪い合えば足りないが、分け合うと余る」
織田悠斗のSNS
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Photo:Nanako Araie
Text:Serina Hirano