
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、カナダ・バンクーバーの学生たちが、繊維廃棄物の削減を目指しおこなっているファッションショーについてご紹介します。
世界で毎年9,200万トンの繊維廃棄物が発生している
短期間で、多様なファッションアイテムが続々と登場する現代。衣服の生産量は、2000年~2015年の間に2倍に増加しています。しかしその裏では、繊維廃棄物の問題が起きていることをご存じでしょうか。衣服の生産量が増えた一方で、使用期間は短縮化。国連環境計画(UNEP)によれば、世界で衣服の使用期間は36%短くなっていることが報告されています。また、UNEPのデータによると、世界では毎年、9,200万トンもの繊維廃棄物が発生しているのだそう。
こうした状況が発生する理由のひとつとして、「アパレル業界の構造」が挙げられます。わたしたち消費者の手元に届くまでに、衣服は製造を担うメーカーから卸売業者、小売店など、さまざまな企業を経由します。その間に各企業で在庫が発生、それが販売に適した時期を過ぎてしまうと、廃棄処分を検討せざるを得ないこともあるようです。また、衣類の低価格化が進んだことで使い捨て傾向が強まったこと、流行の移り変わり、持ち主の体型の変化なども繊維廃棄物の問題に影響を与えています。
日本などの先進国で捨てられた衣服の多くは、発展途上国へと輸出されます。しかし、現地でニーズが合わない場合は、廃棄物になってしまうことも少なくありません。また、現地の廃棄物管理のインフラが整っていないケースも多く、環境に配慮しないまま焼却処分や不法投棄がおこなわれています。たとえ埋立地に送られ、埋め立て処分ができたとしても、衣服が土の中で分解されるまでには何十年もの時間がかかる上に、有害な温室効果ガスを放出してしまうため、問題視されているのです。
バンクーバーの学生デザイナーたちが『Patchwork: The VSB Climate Fashion Show』を開催
そうした繊維廃棄物の問題を解決しようと、現在、カナダ・バンクーバーの学生たちがユニークな取り組みをおこなっています。それが、『Patchwork: The VSB Climate Fashion Show』です。ファッションが環境に与える影響や、どのようにして環境システムをより良い方向へ変えていくかについて、考えるために開催しています。
運営元である「Patchwork」は、バンクーバーの11校の中学校から参加した160人のボランティアと協力し、活動しています。ファッションショー用の衣装には、寄付された素材とリサイクル素材を使用しているため、学生たちは廃棄物削減の方法を実践的に学べるのです。
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最近の活動としては、2025年4月25日にバンクーバーの中学校「Kitsilano Secondary School 」にて、17人の学生デザイナーが制作した15のコレクションを披露しました。Instagramに当日の様子が投稿されていますが、衣装も素敵で、言われないとリサイクル素材で作られたとは気づかないのではないでしょうか。ちなみに、ファッションショーのチケット販売で得た収益は、学校の被服・アートプログラム、サステナブルファッションの支援団体に寄付されるそうです。
過去には『The Vancouver Kids Fashion Week』にも出展
さらに「Patchwork」は、2025年4月13日に開催された『The Vancouver Kids Fashion Week(以下、VKFW)』にも参加しました。VKFWとは、子どもたちのファッションと独創性に注目した2日間開催されるファッションイベントのこと。地元の若手デザイナーの才能を、国際的な舞台で披露するという目的もあります。
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参加した学生たちは、プラスチック製の買い物袋から防水アウターを作ったり、ビーチクリーンで回収した漁網を衣装に取り入れたり、役目を終えたシーツをゆったりとしたデザインのドレスに生まれ変わらせたりしました。どの衣装も、創造性豊かで個性が光るものばかりです。ランウェイを歩く姿も自信に満ち溢れている、と感じます。「Patchwork」の今後の活動にも、注目していきたいですね。
購入するか迷ったら「長く愛用できるか」も考えてみよう
世界的に問題になっている繊維廃棄物。多くの人に関心をもってもらうためにも、「Patchwork」の取り組みはよいアイデアだと思います。ショーに感化され、繊維廃棄物の削減を目指し行動する人が増えるかもしれません。私たちも、できることから始めてみませんか?例えば衣服を購入するとき、流行りやデザインだけではなく、「長く愛用できるか」も選択肢のひとつとして考えてみましょう。
Reference:
衣類におけるライフサイクルアセスメントの現状と課題|廃棄物資源循環学会誌,Vol. 21, No. 3, pp. 148 -156, 2010
About|Patchwork: The VSB Climate Fashion Show
Designers|Patchwork: VSB Climate Fashion Show
Patchwork: VSB Climate Fashion Show
第5章 カナダの教育課程|国際協力機構
Patchwork|Vankidsfashionweek
Text:Yuki Tsuruda