
若手俳優の発掘・育成プロジェクト『私の卒業』。誰もが経験する「卒業」をテーマに、仲間との別れ、未来への希望を胸に抱くドラマを、オリジナルの映画として制作してきました。
その第6期となる『80年後のあなたへ』が公開。今回も、1300名以上の応募者の中から選ばれたキャストに、『Steenz』が単独インタビューを実施。第1弾は、向井怜衣さんをフィーチャーします。
今作『80年後のあなたへ』で、メインキャストのひとりであり、暗い過去を抱えた女子高生、富田依子役を演じた向井怜衣さん。今回がはじめての長編映画出演となった向井さんに、撮影での思い出や作品にかける想い、今後の目標について詳しく伺いました。
プレッシャーを感じながらも、努力を重ねていった
―メインキャストである依子役に選ばれたときの気持ちを教えてください
「プロデューサーの高石さんが、口頭でさらっと発表されたんです。『依子役、向井怜衣』って。心の準備ができていなくて、待って待って、みたいな(笑)。そのあともどんどん名前が呼ばれていくけれど、全然頭に入ってこなくって。
すごく嬉しかったんですけど、依子役はやりたい子が多かったので、そのぶんプレッシャーも感じましたね。
演技経験が少なかったので、自分が依子役になったことを高石さんや監督、そして見てくださる人に後悔させないように、向井怜衣が依子で良かったって思ってもらえるようなお芝居をしないとっていう責任感も生まれました」
―そんなプレッシャーもあるなか、辛い経験を抱えて塞ぎ込むという難しい役どころを演じるために意識したことはありますか?
「依子の過去はかなり重くて、いままでの自分の経験からはなかなか想像できなかったです。感情移入するためにイメージトレーニングをたくさんしたのですが、はじめのほうはその感情がすっと出てくるまで自分を落とし込めなくって。
演技をやろうとしてる感が出てるよって言われたりもしました。だから、自然に感情を引き出せるように、寝る前に依子のことを考えるようにしていましたね。寝る前って気持ちが落ち込みやすいじゃないですか。依子はこういうことを考えて生きてるんだなっていう辛さをいっぱい想像して、撮影に挑みました。
最終的に、自分の気持ちを打ち明けるシーンの撮影では、本当に苦しいものを抱えている気分で入れたんです。ずっと辛かった、みたいな気分でいられて、それをはじめて他の人に伝えるという緊張も自然と出てきました。だから、常日頃から役の気持ちを考えたことはよかったなと思います」
―自分自身と役柄を重ねたことはありましたか?
「そうですね。彼女ほど重い過去がないから塞ぎ込んでいないだけで、結構似ている部分もあって。依子はもともとは明るい子で、テンションも高い子なんです。
わたしも小学生のときは、フレンドリーだよねとか、誰とでも仲良くできるよねとか、結構言われてきたんですけど、年齢が上がるにつれてどんどん落ち着いてきたというか。昔は明るかったけど、いまは結構暗い子だよねって言われがちなので、やっぱり似てるものがあるんじゃないかなと思います。
でも、そこまで辛い過去がないというか、塞ぎ込みすぎてないっていう部分では違うので、近いものがあるといえど、ちゃんと想像しないと依子にはなれないなって考えていました」
妥協しないやり取りを通じて絆が生まれた
―難しかったシーンはありますか?
「たくさん想像したからこそ、気持ちを打ち明けるシーンはやりやすかったですが、普通に会話しているシーンが難しかったです。
根は明るい子だから、喋ってる時にだんだん明るい部分も出しちゃっていいよ、みたいに言われて。あれ、暗いのに明るい?って混乱しちゃって。そこは大変でした。
あとは、目線についても撮影中にたくさん言われて。瞬きをしすぎると気持ちが途切れてるように見えるから、正面を向いているときにやるんじゃなくて、下を向いた瞬間にパッとやったりとか。セリフが短いぶん、それ以外のところで気持ちを表現しようと頑張りました」
―ロケ地である名古屋は、どんな場所でしたか?
「現地の人たちがすごく温かったです。電車に乗り込むシーンでは、一般のお客さんも乗っていて普通に運行していたんですけど、わたしのためにドアの閉めるタイミングを少し遅らせてくれたりして。できる範囲の協力を皆さんがしてくれて、寒いですよねって気遣ってくださったりもして、すごく好きになりました。
矢場とんで、隆彦がカツに味噌をかけるシーンがあって。練習のために、現地のスタッフさんがずっと手伝ってくれたんです。本当なら、その技術を習得するのに何ヶ月もかかるけれど、数時間で覚えないといけなくって。そのために2時間ぐらい付きっきりで教えてくれているのを見て、こちらも頑張らないとなって感じたと同時に、すごくあったかい街で、魅力的だなと思いました」
―共演者との印象的なエピソードはありますか?
「ワークショップのときから、前島優里役の滝口芽里衣ちゃんと仲が良かったです。『ワークショップではじめて喋った子が怜衣で、緊張していたから嬉しかった』って言われてわたしも嬉しくなって。
お芝居に関して話すことがすごく多かったんですけど、はじめはお互いに依子役を希望していたんです。だからある意味ライバルでもあって。でも、優里役が途中で追加されて、芽里衣ちゃんは実際のオーディションでは依子を志望しなかったんです。先にわたしの依子役が決まったとき、『おめでとう、優里と依子がふたりきりで話すシーンを絶対に怜衣ちゃんとしたいから、わたしも頑張るね』って言ってくれて。もちろん役を掴み取りたいという純粋な気持ちもあったと思うんですけど、わたしと一緒にやりたいって言ってくれて、それが叶ったふたりだけのシーンはすごく印象に残っています」
―このプロジェクトを通じて、刺激を受けましたか?
「スタッフさんもキャストメンバーも、容赦なく指摘してくれるし、アドバイスもくれるし、空き時間や練習してるときでもすごく見てくれて。お世辞は一切なかったです。だから頻繁に、ここどうしたらいいと思う?とか、ちょっとお芝居見てくれない?とお願いしていました。
わたしは経験が少ないから、下手なりに自分から教えてくださいって言った方がいいと思って。本当は強がりなんですけど、ここはもう殻を破るしかないって考えて、みんなにいっぱい聞いて、情報を自分のものにしようと頑張りましたね。ライバルのはずだし、わたしが依子役に受かったことで悔しい思いをしているひともいるのに、ここはいいねとか、こうした方が、もっと良さが出る気がするとか、たくさんのアドバイスももらって、すごくいいメンバーだなって思いました。本当にわたしのことを想ってくれているからこそ、応えたいって思える関係性がすごくありがたかったです。プロジェクトを通して、お芝居がめちゃくちゃ大好きになりました!」
新しいキャラクターにも挑戦していきたい
―ここからは、向井さんご自身について質問させてください。この世界に入ったきっかけは何ですか?
「趣味であげていたTikTokをきっかけに、事務所の方に声をかけられたことです。芸能人ってキラキラしてるし、楽しそうだなとかいいなという興味はあったけれど、女優がしたいとか有名になりたいみたいな気持ちはそこまでなくて。
だけど、高校生になってたくさんのお仕事をいただいて、経験をしていくたびに、お仕事が楽しくなってきて。主にモデルの仕事をしていたんですけど、新しいことに挑戦したくなって、女優さんになりたいっていう気持ちが芽生えました」
―どうして、このプロジェクトに応募されたんですか?
「前回の5期でこの『私の卒業』プロジェクトを知ったんです。事務所の先輩方が出演されていて、その繋がりで知って。オーディションのyoutubeをずっと見ていました。
高石さんはすごく怖そうだったし、このひとの前でお芝居するとかすごいなって思っていたんですけど(笑)、そのときから、来年にチャンスがあるならわたしも参加したいなって考えていました」
―今後の目標を教えてください
「直近では、地上波の学園ドラマに出たいです! 遠い先の夢は、有名になること。憧れの女優さんは八木莉可子さんで、彼女のような女優になりたいし、30歳、40歳になっても仕事をしていたい。バラエティにも出演して、誰もが名前を知っている芸能人になりたいです」
―最後に、この作品を誰に観てほしいですか?
「わたしは広島県出身なんです。だから、学校でもたくさん平和学習をしてきました。原爆で残ったものの場所に行ったりとか、平和資料館に行ったりもしたんですけど、そこまで平和学習をしていても、名古屋大空襲のこととかは全然知らなくって。あまり注目されてないけど、すごく大規模だった、悲惨な出来事だったよっていうことのを伝えたいのかなと、今回の作品から感じました。戦後80年の節目に、平和について考えるきっかけにするためにも、多くの人に観ていただきたいです。
もちろん、今まで支えてくれた、事務所の方、ファンのみんな、家族にも観てもらいたいですね。この作品には恩返しという気持ちも込めています!」
―ありがとうございました!
私の卒業-第6期-『80年後のあなたへ』概要
■公開日
2025年5月16日(金)全国ロードショー
■あらすじ
平和の日が制定できたが、果たしてこれで終わりで良いのだろうか? と考えを巡らせる生徒会長の女の子。
その彼女に想いを抱き、代々続く有松絞りの実家の跡を継ぐ決意をした男の子。
戦争時は疎開先として、戦争の被害にあっていない街、犬山市。
その犬山市に住み、訳あって心を閉ざしている女の子と、矢場とんが大好きな陽気な元野球部員との恋物語。お婆ちゃんからもらった大切なメガネをかけた女の子が、イメチェンをはかる成長物語。
夢を語れずにラジオ局でアルバイトしている大学生の女の子とディレクターの恋。
そんな7人の人物を軸に、戦後80年という節目に、この先の未来に残したいものは何か、という問いに向き合っていき、それぞれが一歩前に踏み出していく青春群像劇。
■予告編
■作品情報
私の卒業 -第6期- 『80年後のあなたへ 』
【私の卒業プロジェクト第6期 出演者】
渡邉このみ 中川翼 向井怜衣 岩崎碧 滝口芽里衣 皆瀬翔 村上なずな 寺島季咲 沢田京海 平田風果 千葉青八 鈴木夢 國分瑠真 瀧澤僚太 櫻井亜蓮 内山優花 野崎珠愛 Hitomi 山本藍 平川丈 川口飛雄我 斎藤さらら 松岡拳紀介
脚本・プロデュース:髙石明彦 音楽:平野真奈
監督:北川瞳 プロデューサー:宮﨑和明
主題歌:乃紫 「透明の楽譜」 (MR8/MIJ Quality Records)
製作:深川辰巳 浦出高史 飯田義典 服部徹
撮影:小野貴宏 映像:佐藤隆彦 照明:後藤史兆 録音:金子徹 美術:小林大輔 編集:伊豆光沙 選曲:泉清二
スタイリスト:上田摩耶 ヘアメイク:駒水友紀 磯﨑智香 音響効果:荒川翔太郎 制作担当:松橋典生
協賛:矢場とん コロナワールド 菅公学生服
企画・制作・配給:THE ICON ◎私の卒業第6期製作委員会2025
公式ホームページ https://watasotsu.com/
公式X https://x.com/sotsupro
公式Instagram https://www.instagram.com/sotsupro/
公式TikTok https://www.tiktok.com/@watasotsu
向井怜衣のプロフィール
名前:むかいれい
年齢:17歳
誕生日:2007年6月25日
出身地:広島県
特技:ダンスと剣道、身体を動かすこと
Photo:Kaori Someya
Text:Yuzuki Nishikawa